安倍晋三首相が来年十月からの消費税引き上げを表明し、大がかりな景気対策を指示した。しかし、増税する以上は徹底した無駄の排除、将来不安の払拭(ふっしょく)に努めなければ、国民の理解は得られまい。
二度も消費税増税を先送りしたため、国民の間では三度目もあり得るのではと半信半疑だっただろう。実施まで一年を切っての表明は遅すぎたぐらいだ。
計四年間も先延ばししたうえ、増税分の使途も財政再建に充てる分を幼児教育・保育の無償化に流用する。つまり消費税増税の根拠だった与野党の三党合意に基づく社会保障と税の一体改革は反古(ほご)にされてしまった。
だが、国民に増税をたのむ以上は、政府は最低限国民に約束すべきものがある。第一に無駄遣いを徹底的になくすことだ。
安倍政権は財政規律を失い、政府予算を膨張させてきた。典型的なのは二〇二〇年東京五輪・パラリンピックの開催費用だ。国費は千五百億円のはずが、すでに八千億円が計上されたと会計検査院が指摘した。
五輪関連と銘打てば予算化が広く認められたためで、同じようなことが成長戦略をつくるたびに繰り返された。無駄の温床のようないいかげんな予算の使い方である。これでは国民は到底納得できるものではない。
次に税制のあり方である。消費税は景気に左右されず税収が安定的という利点がある。だが、豊かでない人の方がより負担が重くなるという決定的な欠点がある。
税の原則は、公平・中立・簡素である。公平という観点から、消費税に問題があることは言をまたない。
富裕層の課税を強化しなければとても公平な税制とはいえず、それには所得税の最高税率を上げたり金融所得への課税を強化すべきだ。金持ち優遇のまま、取りやすい消費税の増税では国民多数の不信を買うばかりである。
最後に、将来の見通しである。消費税10%から先ということだ。
国民が知りたいのは、一体どこまで税率が引き上げられるのか、どこまで引き上げれば持続可能な財政、社会保障制度となるのかだ。
そのためには与野党であらためて協議体をつくり、広く合意を得ながら社会保障と税の一体改革を進めるべきだ。いったん合意したら政局にしないことだ。
公平公正な進め方でなければ国民の得心はいかないのである。
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