九州電力は10月13日、太陽光発電の出力制御(出力抑制)を実施した。離島を除くと、国内初。いずれは不可避と言われてきた出力抑制が、ついに現実のものとなった。
実施の前々日に当たる10月11日夕刻、九電は「13日に出力制御の可能性あり」と発表。前日12日の17時頃に実施を決め、制御対象となる太陽光発電事業者に通知した。
九電は同日夜に報道関係者向けに説明会を開催。送配電カンパニー電力輸送本部の和仁寛・系統運用部長は、「明日は涼しく、九州一円が晴天の見通しで太陽光の発電量が伸びる。色々な対策を行う予定だが、どうしても供給力が需要を上回る状況を回避できない」と出力制御に踏み切る理由を説明した。
九電の見通しでは、10月13日の昼間の最大需要は828万kW。「体育の日の三連休までは残暑で900万~1000万kWの需要があったが、今週後半から涼しくなり、800万台半ばまで需要が減る見通しだ」(九電・和仁部長)。
一方、最近の実績を踏まえ、太陽光発電の出力は594万kWと想定した。「10月3日に585万kWを記録しており、594万kWは十分にありえる数字だ」(九電)。
優先給電ルールに則り、揚水発電や一部の蓄電池を活用して余剰電力を貯め、域内の全火力発電の出力を抑制し、関門連系線で域外へ流してもなお余ってしまう43万kWを、太陽光の出力制御によって抑える。
電力需要は、春と秋の空調を使わない時期や、年末年始や大型連休など工場が止まる時期に小さくなる。九州エリアは全国でも突出して太陽光発電の導入が進んでいる。需要が少ない秋の週末が晴天になると、太陽光発電の出力が伸び、需要に対して供給が多くなってしまう。需給バランスが崩れると、大規模な停電を引き起こす可能性があるため、太陽光による発電を一時的に止める「出力抑制」が選択肢に入ってくる。
真っ先に太陽光発電を止めるわけではなく、国が定める優先給電ルールに則り、(1)から順に、発電所の種類ごとに供給量を抑えていく。
(2)揚水運転による再エネの余剰電力の吸収
(3)火力発電所の出力制御(混焼バイオマス含む)
(4)長周期広域周波数調整(連系線を活用した広域的な系統運用)
(5)バイオマス(専焼、地域資源型)の出力制御
(6)太陽光・風力の出力制御
(7)長期固定電源の出力制御(原子力、揚水を除く水力、地熱)
九電は(1)から(4)までを既に実施済み。(4)の長周期広域周波数調整とは、需給バランスの調整力が不足すると予想される場合に、電力広域的運営推進機関が他の一般送配電事業者に打診して、連系線を使って他の電力会社に電力を引き取ってもらうことを言う。10月1日に九電の要請で、広域機関が初めて実施した。
(5)のバイオマス専焼については、「今回初めてご協力をお願いした。ただ、自治体のごみ発電は稼働させないとゴミ処理の問題が発生してしまうため、対象外とした。今回は太陽光に出力制御をお願いするが、風力は含んでいない」(九電)という。
太陽光より優先されるのは、制度上は「長期固定電源」と呼ばれる原子力や揚水を除く水力、地熱のみ。10月13日の長期固定電源は493万kW の見通しだ。九電エリアでは、原子力発電所が4基再稼働している。合計出力は414万kW。接続可能量算定などシミュレーションでは、原子力の出力を8割で想定しているが、「現在はフル稼働しているので、414万kW そのまま積んでいる」(九電)。残りが水力や地熱になる。
9月末に定期点検のため停止していた川内原発2号機が再稼働したことで、長期固定電源が増え、太陽光の増分の調整が難しくなった面もある。
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