私は、このたび自由民主党総裁選挙への立候補を決意致しました。
立候補のご挨拶に先立ち、まず、心からのお詫びを申し上げます。
 現在、我が国は再び厳しい経済状況の下にあります。これは、私
が内閣総理大臣の地位にありました時に、日本経済の実態を十分に
把握しないまま、国の財政の健全化を急ぐあまり、財政再建のタイ
ミングを早まったことが原点にあることを、率直に認めます。現在
の不況の中で倒産やリストラで職を失い、あるいは重い住宅ローン
にあえいでおられる多くの国民の皆様がいることを承知しています。
誠に申し訳ないと思っています。

 その私が、総裁選挙に再度立候補することについて、多くのご意
見ご批判があることを、私は重く受けとめております。
 しかし、日本経済はバブル崩壊後の負の遺産に伴う経済混迷を未
だに脱出できずにおり、私は先の苦い経験と教訓に学び、三十七年
にわたる政治家としての生命をかけて、必ずや閉塞状態にある我が
国の改革に向けて全力をつくし、日本の明るい将来像を築くことで、
「責任」を全うして参りたいと考えました。
 なにとぞ、新世紀・日本の創造と日本経済再生のために、いま一
度挑戦できるチャンスを与えて頂きますことを、心からお願い申し
上げます。
 今、日本には、やらなければならないことが山積しております。
とりわけバブル経済の清算が完了せず、多くの企業・金融機関が膨
大な過剰債務・不良債権にあえいでおります。そして、過剰債務を
抱えているがゆえに、企業間の信頼が揺らぎ、積極的な経済活動が
できず、経済の停滞をひきおこしております。私は、この過剰債務
・不良債権問題の加速的かつ最終的な処理に果敢に取り組み、この
経済停滞の状況から一刻も早く抜け出すことができるようにしたい
と考えております。
 もちろん、不良債権の処理には、雇用問題をはじめとする大きな
「痛み」が伴うことも深く認識しております。この「痛み」を少し
でも和らげるために、雇用保険の拡充、職業訓練機会の増大、新た
な雇用機会の創出などありとあらゆる対策を講じます。
 そして、再び、誰もが自分の夢を実現するためにチャレンジする
ことができる、そういう日本をとり戻してまいりたいと考えており
ます。
 一方で、財政構造改革への志を捨てたわけではありません。二十
一世紀の我が国が持続的な経済発展を続けるとともに、高齢化社会
において誰もが豊かに暮らすことができる社会保障体制の再構築の
ためにも、財政再建に向けて最適なタイミングで舵を切り替えてま
いります。この不良債権問題が峠を越し、我が国経済が自律的な安
定成長軌道に乗ったことをしかと確かめてから、従来以上に大胆な
財政構造改革を行ってまいります。また、それまでの間に、当然の
前提として、本年の中央省庁再編・内閣機能強化を皮切りに、公務
員制度・特殊法人などの抜本的見直し等を通じて、新しい時代にふ
さわしい効率的な行政府を創り上げ、財政構造改革に向けた努力を
続けてまいります。

 今、日本は、このまま沈んでいくか、再び立ち上がることができ
るかの瀬戸際にあります。
 今や議論は出つくしていると思います。今必要なことは、真に政
治のリーダーシップを発揮してこれらの政策を実行していくことで
あると考えております。
 又、私は、政治に対する不信を解消していく為に謙虚に国民の皆
様の声に耳を傾け、政治腐敗の根絶、若手の人材発掘と登用等を断
行してまいります。
 党員・党友、党所属の国会議員の皆様、与党、そして国民の皆様
のご協力を得て、新世紀を切り開き、私の責任を果たしていきたい。
その一心で、このたびの自由民主党総裁選挙に立候補することを決
意いたしました。
 なにとぞ、全国の党員・党友の皆様、都道府県連の皆様、そして
党所属の国会議員の皆様の御理解と御賛同を賜りますようお願い申
し上げます。


     平成13年4月吉日

                               橋本 龍太郎