田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)
もし、2019年10月に消費税率10%への引き上げが実施されれば、どのような影響を及ぼすだろうか。初めに明言しておくが、筆者の立場は消費増税に反対である。なぜなら、日本経済は1990年代初めから2012年の後半まで陥っていたデフレを伴う長期停滞から、ようやく脱出しかけている段階だからだ。この勢いをわざわざ止める政策を実行するのは「特上の下策」である。
だが、問題は、19年の消費増税で日本経済がどの程度マイナスの影響を受けるかだ。そんな中で、インターネットを中心にして「消費増税ハルマゲドン」とでもいうべき極端な発言を目にすることがある。来年の消費増税によって日本経済もアベノミクスも、そしてその中心であるリフレ政策(日本銀行のインフレ目標付き金融緩和)もすべて終了というシナリオである。
政治的にアベノミクスをやめる可能性は常にあるだろう。もちろん、それはどんな政権であれ愚かなことである。だが、日本経済が終焉(しゅうえん)することはない。終焉しているのであれば、2014年4月の引き上げで、すでに日本経済は崩壊していただろう。
要するに、ネットでよく見受けられる無知と悪意ゆえの極端なお騒がせ程度の話だ。消費増税ハルマゲドンは群集心理のヒステリーに似ている。つまり、経済政策を議論する上で、確実に障害にしかならないのである。
ただし、消費増税は、せっかくの経済の好転を阻害することは間違いない。そしてその停滞は無視できない社会的損失を短期的・長期的にもたらすだろう。アベノミクスの中心であるリフレ政策にも大きなマイナスの影響をもたらすことは疑いない。
安倍晋三首相は15日の臨時閣議で消費増税の実施を表明した。引き上げは来年10月1日からであり、実施まで1年近く先なのに早い話である。来年の増税はすでに法律に実施を明記されており、去年の衆院選でその使途を教育無償化に回すとも表明している。今回の「表明」による首相の意図は、1年かけての消費税対策を関係省庁に指示するということだろう。
いずれにせよ、この「表明」で、消費税増税実施は政治的には確定事項としてさらに拍車がかかっていくことになる。ただ、菅義偉(よしひで)官房長官は同日、まだ首相はまだ最終決定をしていないとも説明している。さらにリーマンショック級の出来事があれば延期はありうるという発言も再三繰り返した。
14年4月の8%への引き上げでは、表明が13年10月1日でちょうど半年前だった。そして、前回の駆け込み需要は年明けから本格化し、14年の4月に急激な反動減が襲った。前回に比べて今回は引き上げ幅が小さいことは当然に考慮にいれなければいけない。前回に比すると今回はだいたい7割近くの上げ幅になる。