9月4日に神戸市付近へ上陸した台風21号による高潮で、神戸港の集積場(ヤード)にあった輸出用中古車が数千台規模で被害を受けていることが、神戸新聞社の取材で分かった。神戸市も全容は把握できておらず、5千~7千台との観測が出ている。ほぼ全てが廃車にせざるを得ない状態だが、荷主の資金繰りや保険の審査待ちなどで現地から移動できず、放置状態に。新たな中古車の搬入なども進まず、輸出業務が停滞している。
阪神・淡路大震災で貨物の取扱量が激減した神戸港を復活させようと、神戸市が新たな輸出貨物として目を付けたのが中古車だった。神戸税関によると、中古車の輸出量は2005年の約6万5千台から、昨年は約12万台まで伸びている。名古屋、横浜、堺に続く4番目の取扱量で、全国的な拠点の一つだ。
震災後に大阪へ移転する倉庫業者が相次いだため、神戸市はポートアイランドや六甲アイランド(六アイ)などにヤード用地を確保し、輸出業者やオークション業者などを積極的に誘致した。現在、神戸港には西日本最大のものをはじめオークション会場が約10会場あり、さらに集積、売買、輸出が神戸港で完結できるようになっている。
海外25カ国への中古車輸出を手がける「ワールドナビ」も、市の勧誘で06年に大阪から六アイに輸出拠点を移した。澤田好史社長(44)によると、同社も台風21号による高潮で約250台と事務所などが被災したが、保険に加入していたという。ただ、澤田社長は「ヤードへの集荷と輸出が、船の寄港につながっている。ヤードが立ちゆかなくなれば、関連業者が共倒れしかねない」と危機感を募らせ、経済的な支援の必要性を指摘する。
また神戸港では、中古車以外にもコンテナ40個以上が海へ流出するなど、高潮による記録的な被害が発生した。荷役作業の性質上、防潮堤がないエリアで被害が拡大しており、新たな対策が求められている。(鈴木雅之)