ナザリックと私   作:梨樹
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ユグドラシルと私

 るし★ふぁーという男がいた。

 彼はギルド内の問題児で、度々いたずらをしてギルドメンバーを驚かせている姿はゴーレムクラフターと言うよりトラブルメイカーと呼んだ方が似合っていた。

 しかも彼のいたずらの内容は、恐怖公というNPCを作ったときに、女性メンバーに転移の罠を踏ませて黒棺(ブラック・カプセル)に落としてみたり、こっそりメンバーのメイン武器をゴーレムの一部として取り出し不可能にしたりと、かなりえげつない。それは基本的に穏やかで誰とでも仲良くなるギルド長のモモンガでさえも、彼には苦手意識を持っていたほどに。

 

 ある日、そんな彼はいつになく深刻な顔をして現れたが、モモンガはその時、心の準備が出来ていなかった。全く予想していなかったのだ。だから、ただいつもみたいに、何かしてくるんじゃないかと普通にいたずらを警戒していた。

 あの時彼の口から出てきた言葉を理解するのに、どれくらい時間がかかっただろう。

「俺、次いつログインできるかわかんねーわ」という言葉を。

 唐突過ぎて動揺したし、とても慌てた。彼はいたずらをするために嘘をつくが、いたずらとして嘘をつくことはなかったのだ。それに、理由となった事情も説明されてしまったのだから、疑うことも出来なかった。

 その後、自分は何といったのだろうか。よく覚えてないが、いつでも帰ってきてください。とでも言った気がする。そして、最終ログインが一週間になり、一ヶ月になり、一年になった。

 

 ユグドラシルの最終日。淡い期待を込めて送ったメールに応えてくれたのは何人だっただろうか――

 

「なーに黄昏ちゃってんの☆ モモンガさん!」

「うわっ!? る、るし★ふぁーさん! 来てくれたんですか!」

 

 背後から視界一杯に現れたるし★ふぁーにモモンガは心の底から叫んだ。円卓の間(ラウンド・テーブル)の席に座りながらギルメンを待ち、誰も来ないままに数時間を経過していたので完全に油断していた。それに、るし★ふぁーへももちろんメールは送ったが、今日まで返事は無かったのだ。そんな人がまさか一番乗りで来てくれるとは思っていなかった。

 モモンガは年甲斐もなくはしゃいでしまう自分を恥ずかしいと思う反面、今日くらいは良いだろうと思う。

 

「0時まではいれないんだけど、何とか来れたんだよね」

「そうですか……」モモンガの声は一瞬だけ影を落としたが、笑顔のアイコンを送る。「でも、るし★ふぁーさんとまた会えてうれしいです」

「俺もですよ! しかも、二人しかいないなら、今まで我慢してきた事も出来ますしね」

 

 ニヤリと笑うるし★ふぁーの顔に嫌な予感がする。この顔は面白いいたずらを考えている時の顔と一緒なのだ。

 モモンガが警戒して身構えた瞬間、るし★ふぁーは目の前で手を合わせ、深々と頭を下げる。

 

「モモンガさんの世界級(ワールド)アイテム持たせて!」

「…………え?」

「だってそれモモンガさん専用のアイテムだから俺使えないし、見た目格好良いのにモモンガさんのお腹の中にずっと入ってるじゃん! 俺もどんな感じか見てみたかったのにー!」

 

 最初は予想外すぎて唖然としてしまったが、理由を聞いてるうちに思い出した。モモンガだって誰にも見せ無かったわけではない。ギルメンの中の見たがっていた人には見せていたが、その最中に「ゴーレムに入れてみたら強そう!」とか言い出したので指一本触らせなかったのだ。

 

「――まあ、そうですね。最終日ですし別に良いですよ。けど、お願いするならもっと怖いことかと思っちゃいましたよ」

 

 モモンガは肋骨の奥、心臓にしてはやや下過ぎる位置にあるそれを装備解除する。るし★ふぁーの手に乗せられると、途端に力を失ったように赤黒い光が消えた。それを面白そうに眺めていたるし★ふぁーは鑑定魔法をかけたり投げてみたりしている。

 

「やっぱり世界級(ワールド)アイテムって強かったですよね! うちのギルドに侵入してきた奴ら全滅させましたし」 

「あれは皆さんとヴィクティム。あとナザリックの力があったからですよ。まあそれが要因になったのも事実ですけど」

「まーね☆ けどこれの情報は結局wikiにも載らなかったって破格すぎだよほんと」

 

 その時は、アインズ・ウール・ゴウンの全盛期でメンバーもほぼ全員が参加していた、一番楽しかった時とも言える。またみんなで集まれたら、どれだけ嬉しかったか。

 

「まーた落ち込んじゃって……」るし★ふぁーはその手に持つアイテムをこっそりと自分のストレージにしまい、別のアイテムを取り出す。「モモンガさん!」

「はい?」

 

「『()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!』」

 

 るし★ふぁーの持っていたアイテムはモモンガの全く知らない物。それは短杖(ワンド)の先にいたずらに笑うるし★ふぁーのアバター、その頭が取り付けられており、自作のように見えた。頭から迸る光がモモンガのアバターを包み込み、一瞬《閃光(フラッシュ)》を受けたように視界がホワイトアウトする。

 

「えーーーーーっ!?」

「やべっwwwwwwwほとんど変わらねえwww」

 

 心なしか骨格が変わった死の支配者(オーバーロード)を見てるし★ふぁーは爆笑している。

 

「もー、なんなんですか? これ」若干起こり気味のモモンガがるし★ふぁーに詰め寄る。

「え? 俺専用の世界級(ワールド)アイテム☆」

「うっそ……」

「嘘じゃないって☆ ログイン出来なくなる少し前に運営から貰ったんだよね。一応これ、運営お願い系としても使えたんだよ?」

「なんでこんな、取得条件は? るし★ふぁーさん何かしてましたか!?」最終日だと言うのに興味深々なモモンガに、だかるし★ふぁーは何ともないように。

「ん? いたずら☆」と、さも楽しそうに言った。

 

 

 

 

「じゃあモモンガさん。今日は楽しかったです。――今までありがとうございました」

 

 最後まで残ってくれたヘロヘロもログアウトしてしまい、残されたのはまたモモンガだけになった。

 何となく円卓の間でサービス終了まで待つのは味気ないと思い、NPCを連れて玉座の間へと移動する。

 合計で三人しか来てくれなかったものの、とても楽しい時間を過ごせた。二人が来るなりるし★ふぁーはニヤニヤと説明をし、モモンガの姿を見せては自分が笑っていた。けれどみんなも釣られて笑ってしまい、しんみりと終わることは無かった。

 それを見て、彼の目的は……とも思ったが、そうでは無かったようだ。

 モモンガは手元に映る、一件のメールを眺める。そこには、『やっぱり、女性アバターでも良かったんじゃない?』とだけ短く書いてあった。

 

「あはは。そんなこと言うためだけに世界級(ワールド)アイテム使うなんて、勿体ないことするなあ。()だって隠してたわけじゃ無かったんだし」

 

 ただ、ギルドメンバー――特に男性陣はほとんど気づいていなかった。鈴木悟のリアルの姿が、女性であることに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――あれ?」

 

 強制ログアウトが始まる時間になっても、電子音が聞こえない。恐る恐る目を開くと、目に映るのは煌びやかなナザリックの景色だ。

 

「終了が延期になった?」

 

 よく分からないままにコンソールを開こうとして、出ない。いや、カーソルも、ゲージも、時間も。何も映っていなかった。

 

 代わりに映ったのは、動かすアバター。そのローブから出る、―――生身の肉体だった。

 

 

 

「………………え?」

 




 ここまでご覧になって下さった方には感謝を。

 

 モモンガ様、女体化ものです。
 処女作を書いている途中に浮かんだネタを書き殴ってしまった物なので、お見苦しい箇所があったかもしれません。(作者は感想をいただけたら泣いて喜ぶかもしれません。喜ぶだろう。喜ぶに違いない。喜びます)

とりあえず、申し訳ございませんが続けるか分かりません。気持ち的には続けたいと思っているのですが、既に書いている最中のものもありまして(´・ω・`)
 それを書き終えたら、カルネ村からまたのんびり続けたいなーっと思っています(`・ω・´)
 







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