シャルティアが精神支配されたので星に願ったら、うぇぶ版シャルティアになったでござる   作:須達龍也
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本人を交えての、ナザリック対策会議の始まり始まり。


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「虎の尾を踏まない。できるだけ虎の怒りを買わないようにするしかないな」

 

 

 

 そう言いながら、俺は何のアドバイスをしているのだろうという変なモヤモヤを抱えていた。

 

「モモンさんの言う虎って言うと、墳墓の主ってことになるよな。主が怒ることか」

「無断侵入はどうしようもないかなあ」

「さすがに呼び鈴はないと思われる」

「できることと言えば、盗掘しないことくらいでしょうか」

 自分のアドバイスに従って、相談を始めたアルシェ達のチームをなんだかおかしなことになったなと見つめる。

「まあ、勝手に入ってきた上に、泥棒までされていたら、怒るのは間違いないだろうなあ」

 なんでこんな他人事のように、自分のことを話しているのか。

「依頼人の意図とは異なるでしょうが、一応の依頼内容は墳墓の調査です。盗ってくる必要はないでしょうね」

「うわー、すごいお宝が眠っていたら、かなりおあずけ感があるわねえ」

「でも、命は大事」

「そうだな、アルシェがこう言うんだ。とりあえずは手を付けないようにしようぜ」

 

「あー、一応再度言っておくが、あくまでも勘でしかないぞ」

 

 勘ではなく間違いない事実ではあるのだが、なんかカンニングをされているようで、そう釘を刺しておく。

「その辺は大丈夫ですよ。モモンさんの言葉を参考にして、あくまでも俺たちが決めた事です。これで損をしたとかモモンさんを恨むつもりはありません」

「問題は、盗掘をしていなくても、怒りが解けない場合」

「全員で全裸で土下座でもするか?」

「なんで全裸よ」

「誠意をもって、謝罪するしかないでしょうね」

「それしかないと思う」

 

 なんか、そこまで気を遣ってもらって、許さないのは器が小さい気がするなあ。

 

「すいません、このことを他のチームにも伝えてもいいでしょうか?」

「ん…んん…も、もちろん、構わないとも。だが、強要はできないと思うぞ」

 駄目とは言えない。言えないが、もし全チームにそうされると計画が大きく狂ってしまう。

「まあ、さすがに、他のチームの決定にまで口は出しませんが、なんかあったときに言ってたか言ってなかったかで、俺たちの気分的にねえ」

「天武は間違いなく、鼻で笑うだけでしょうねえ」

「すごく馬鹿にされる気がする」

「まあ、だからと言って、天武だけには伝えないというわけにはいかないでしょう」

「打ち合わせの時に、全チームに伝えればいいんじゃね」

「がんばってね、リーダー」

「じゃんけんだ、じゃんけん!」

 

 

 とりあえず、地上の施設にちょっとした財宝を置いておいて、それを盗むかどうかで選別するかな…と計画の微修正をした。

 

 

 

 

 

「…ヘッケランが私の代わりに会議に出るべきだったと思う」

「気にするなよ。他のチームリーダーも出てなかっただろ? 適材適所ってやつだな、うん」

 ウィンクをしたヘッケランに大きなため息を吐く。

「…とりあえず、夜になったら全チームで行動を開始する。四方から侵入し、中央の巨大な霊廟に集合」

「むしろ、明るいうちに堂々と侵入したほうが、コソコソするよりは印象がいいようには思いますが」

「残念ながら、他のチームには受け入れられなかったんだ。ここでそれを行うのは独断専行すぎる」

 あの後、モモンさんからの助言という形で、他チームのリーダー達にヘッケランから伝えられたのだが、残念ながら理解は得られなかったようだった。

「老公とグリンガムは、チームに持ち帰って相談してみるって話だったんだが、そういう作戦になったってことは、通らなかったんだろうな」

「モモンさんから直接聞いた俺たちと、伝聞で聞いた連中とは真剣度が違うのはしょうがないのかもしれないな」

「そもそもがさ、言ってみれば盗掘に来たのに、盗むのはやめようぜっていうのは何しに来たのってなるのも、わかるのよねえ」

「イミーナは反対か?」

「話だけ聞いたら何それって思うところだけど…あの真剣なモモンさんの様子を見るとね、こりゃヤバイかもって思ったもの」

 そのイミーナの言葉が、私たちの共通認識と言っていい。

 正直言って、この中で一番財宝を望んでいた私でさえ、命には代えられないと真剣に思っているのだ。

「何も起こらないといいのだけれど」

 自分で言ってて、そんなことになるはずがないと確信している。

 長年未発見な墳墓のはずなのに、何者かに綺麗に掃き清められているのは間違いなかった。そのことが、モモンさんの勘の信憑性を更に上げていた。

 

 荘厳と言ってもいい巨大な霊廟が、非常に不気味に見えた。

 

 

 …まるで、死神が腕を開いて待ち受けているような幻が見えるようだ…

 

 

 夜でなく、昼に侵入するという意味では、あの最悪男の強行突入案も、そう悪くなかったかもとすら思えてきた。

「なら、俺たちの番まで宿泊地に帰ってのんびり待つか」

 ヘッケランの言葉にうなずく。

 鬼が出るか蛇が出るか、それはわからないが、もう私たちに出来ることはあまりなかった。

 

 思わず知らず、もう一度つぶやいていた。

 

 

 

「何も起こらないといいのだけれど」




フォーサイトのみならず、他のチームにも生存の可能性が出てきました。
ただエルヤー、てめぇはダメだ!

エルヤーさんは、好きですよ、いいキャラだという意味で。






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