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ただいま表示中:2015年4月8日(水)観光にビッグデータ!? ~外国人呼びこむ新戦略~P1/P1
No.36372015年4月8日(水)放送
観光にビッグデータ!? ~外国人呼びこむ新戦略~

観光にビッグデータ!? ~外国人呼びこむ新戦略~

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“爆花見”に“爆買い”! 激増する外国人観光客

桜が7分咲きとなった、先月(3月)下旬の上野公園です。
今年(2015年)の花見客には外国人の姿が目立ちます。




フランスからの観光客
「けさ着いてすぐに来たわ。
桜のベストシーズンに合わせたのよ。」



駐車場に入りきれないバスが路上にあふれ出し、大渋滞を引き起こしていました。




観光バスの運転手
「もう大変です、交通事情が。
そこ何とかしてほしいです。」



宿泊施設の受け入れ態勢も、ひっ迫しています。
宿泊客の7割以上を外国人が占めるというこのホテル。
去年11月から、客室の稼働率は毎月90%を超えています。



ホテル支配人
「えって感じですよね。
確かに多いんですけど、ここまでいくとは思っていなかった。」



去年、外国人が旅行中に消費した金額は2兆円を突破。
経済効果は絶大です。

ビッグデータでつかめ 外国人客の行動パターン

国は、この外国人の観光を成長戦略と位置づけ、さらに1.5倍の2,000万人にまで増やす目標を掲げています。
そのためには、外国人観光客の6割を占める個人客のニーズをつかむことが重要ですが、これまで詳細なデータがありませんでした。

そこで試験的に始まったのが、スマートフォンを使った個人客の行動調査です。
調査には、空港などでダウンロードを呼びかけた無料の乗り換え案内のアプリを活用します。
同意を得た外国人観光客から位置情報を入手。
いつ、どこから、どこへ移動したのか、ルートや滞在場所が詳細に分かる仕組みです。

乗り換え案内のアプリを開発した企業です。
去年11月から、数千人分のデータを試験的に収集しました。




まず、外国人が長く滞在した場所を地図上に重ねると、意外な事実が見えてきました。
東京で最も人が集中していた地点は、有名な神社仏閣でも遊園地でもありませんでした。


なんとそこは都会のど真ん中、渋谷・ハチ公前のスクランブル交差点です。
特に週末になると、交差点で記念撮影をする外国人がひっきりなしに訪れます。
目当ては、最大で3,000人が行き交うすさまじい雑踏の様子なのです。

オーストラリアからの観光客
「とてもにぎやかで、とてもカラフルね。」




スイスからの観光客
「スイスでは人が少なくてもうまく渡れず、ぶつかり合いになりますよ。」



なぜ、渋谷の交差点が世界的な観光地になったのか。
団体ツアーを利用しない個人客は、インターネットなどでみずから日本の情報を調べ、行き先を決めています。
海外のサイトやガイドブックでは、この交差点が東京で必見のスポットとして大きく取り上げられているのです。

ガイドブックの著者は、こうした場所にこそ個人観光客を呼び込むヒントがあると指摘します。




旅行ガイドブック著者 ティム・ホーニャックさん
「例えば観光名所として作られたスカイツリーはすばらしいですが、私は渋谷ほどおもしろいと思いません。
なぜなら、渋谷の交差点は日常の中で自然に生まれたからです。
外国人にとっては、観光客向けに作られた施設では味わえない、本物でユニークな経験をすることが大事なのです。」

さらにビッグデータからは、日本各地を売り込んできた従来のプロモーションがあまり効果を上げていないことも明らかになりました。
全国規模で見てみると、外国人観光客の訪問先に大きな偏りがあることが分かったのです。
集中していたのは東京と大阪を結ぶ区間。
いわゆる「ゴールデンルート」と呼ばれ、富士山や京都などを巡る日本観光の定番コースです。
そのほかの地方への移動は、スキー場が多い北海道や原爆ドームがある広島など、世界的に有名な観光地に限られていました。

観光庁 観光地域振興課 御手洗哲郎さん
「(外国人観光客が)地方に行っていないということが明らかになったことで、これから取り組んでいく余地が大きいと感じさせる結果になっております。」

意外な魅力に反応? 外国人客のデータ分析

観光ビッグデータで明らかになった、外国人観光客が想像以上に地方へ行っていない現実。
どうすれば地方へ呼び込めるのか。
そのヒントをビッグデータから探ろうという動きが始まっています。

山梨県は、県内の外国人観光客の移動データを分析しました。
県内一の観光地である河口湖周辺に人が集中している一方、意外な場所に外国人が集まっているのを見つけました。



山梨県 観光振興課 丸山孝さん
「行きやすい場所ではないので。
電車を降りてすぐそこにある場所ではない。
そこまでして行きたいのかと。」 



一体何が外国人観光客を引き付けているのか。
担当者はこの日、初めてその場所の調査に出かけました。
そこにそびえ立っていたのは、戦後建てられた比較的新しい五重塔。

山梨県 観光振興課 丸山孝さん
「上のほうに(観光客が)いらっしゃいますね。」

注目の場所は、その裏山。
タイから来たという若い男女の姿がありました。




彼らがカメラを向ける先に目をやると…。
なんと、富士山と五重塔が1枚の絵のように見える絶景が広がっていました。



タイからの観光客
「登るのが大変でした。」

タイからの観光客
「でも実際に来ると、とても美しい。
タイの観光サイトで見てきました。
日本を訪れるタイ人みんなが来たがる場所なんです。」

実はこの場所、タイの旅行サイトで絶景ポイントとして取り上げられていました。
海外の個人客は、こうした情報を手がかりにわざわざ足を運んでいたのです。
ビッグデータから、日本人にはなじみのない景色にも外国人が魅力を感じていることを発見した山梨県。
今後、こうしたポイントをさらに探し出し、ルートとして紹介することで県内に滞在する外国人を増やしていく計画です。

山梨県 観光振興課 丸山孝さん
「ビッグデータで可視化されますと数値化されますので、その辺を見ながら(外国人観光客に)どういったことをサポートしてあげるのか、どういったことで『おもてなし』になるのか、今一度考えられる。」

観光にビッグデータ! 外国人急増のワケは

ゲスト髙井典子さん(文教大学准教授)

●富士山の観光資源は計り知れない?

そうですね。
富士山といえば河口湖ですとか、箱根の芦ノ湖から見たものというイメージが強いんですけれども、静岡県、山梨県、また神奈川県からも絶景ポイントはいくらでもあると思います。
特にタイ人の方は、わざわざ不便な所までも行って、それを見て、写真に撮るっていうのがとっても好きな国民でいらっしゃるんですね。
ですからそういう所をしっかり抑えていくと、ほかの場所でも絶景ポイントというものが売りポイントになるのではないかと思います。

●日本人があまり気付かない、外国人が体験してみたいこと、行ってみたい場所は?

最近、よくメディアでも取り上げられているんですが、飛騨の地方、高山の近くに、飛騨古川という町がありまして、こちらに今、里山サイクリングというツアーをされている会社があります。
ここでは外国人の方が多く来られていて、外国語をしゃべるガイドさんがガイドをしながら、日本の原風景のような里山を巡るツアーが大変人気で、そこでは農家の方が働いてらっしゃる姿であったり、農家の方が軒先でお茶をどうぞと差し出されたりと、本当に私たちが観光の商品として作ったというより、先ほど出てました、日常の中で自然に生まれたもの、こういうところが評価されているということですね。
これは全国各地に、いろんな資源がまだまだあると思われます。

●このビッグデータ調査をどう見る?

観光の統計情報というのは、法務省がされている出入国管理というベースになるものがありますけれども、それでどこの国の方が何人、いつごろ入られたということは調査はできていますが、日本国内に入ったあとどこに行かれているのかというのが、例えば旅館やホテルの宿泊台帳などをもとに集めてきた情報というのがこれまで主流だったわけです。
今回の基礎情報というのは、まさにこの観光のビジネスをやっていくうえの一番基礎になる情報です。
観光以外のビジネスですと、例えば小売り店でもそうなんですけれども、POS(ポス)を使って、どんな方が、いつ、何をお買い物されたかという情報をもとに、この商品はなぜ売れなかったのか仮説を立てて、検証をして、次の戦略を立てるというオーソドックスなマーケティングの手法が取られているにもかかわらず、観光ではまだまだそれができていなかった。
1つには団体観光客の方を旅行会社を通して、ボリュームで受け入れていて、そこの情報は得ていたと思うんですけれども、個人客になった場合にほとんど基礎になるものがなかった。
それが今回初めて整備される方向に向かったということで、大きな意義があると思います。

●われわれの知らないマーケットがたくさん生まれている可能性がある?

報道されるときには、大型のバスでたくさん来られるアジアのお客様であったりとか、「爆買い」といわれる行動が目につくんですけれども、訪日観光の市場というのは、本当に多くのいろいろな国の、あるいはいろいろな趣味を持った方がたくさんおられる細分化された多様化されたマーケットであると。
これまで日本の観光産業が主に対応してきたのが、日本人と比較的、同質的なマーケットであるのに対して、全く異なるマーケットです。
ですから小さなビジネス、あるいは地方、あるいは起業家の方にとっては、ニッチなマーケットというチャンスが訪れているということだと思います。

小さなホテルの“奇跡” 外国人客が熱烈支持

東京・馬喰町です。
300軒以上の卸売り業者が軒を連ねる問屋街で、めぼしい観光施設はありません。
この街でなぜか4年ほど前から、外国人の姿が目に付くようになりました。
目指すのは、駅の周辺に15軒ほどあるホテル。
外国人の宿泊客が増え続けているのです。

なぜ問屋街のホテルに多くの外国人が集まってくるのか。
その先駆けとなったのは1軒の小さなホテルです。




創業40年のこのビジネスホテルは、客の7割が外国人のリピーターです。

ホテル柳橋 マネージャー 図師智子さん
「4回目かな。
サウジアラビアの秋葉原のオタクの方。」

マネージャーの図師智子さんです。
4年前から力を入れてきたのが、海外の旅行口コミサイトの活用です。



この世界有数の口コミサイトは、利用者の感想によってホテルがランク付けされる仕組みです。
このサイトで自分たちの評判をいかに上げるか。
ホテルではさまざまな取り組みをしてきました。


まず、海外からの個人客のニーズに応えることを徹底しました。
飛行機が早朝に着いたとしても、無料でチェックインの時間を早め、部屋を用意しています。
さらに心がけているのは、日本語を織り交ぜてフレンドリーに会話することです。
寄せられた感想に返信するときも…。

ホテル柳橋 マネージャー 図師智子さん
「思い出してもらうように、宿で『ありがとう』て言っていたなとか。
親しみを込めるような言葉を返信の中に入れるように確かにしています。」

そしてチェックアウトのときには、ぜひサイトに感想を書き込んでほしいと声をかけます。
こうした努力の積み重ねによって、去年、世界的な旅行口コミサイトが選ぶ日本のお値打ちホテル第4位になりました。



ホテル柳橋 マネージャー 図師智子さん
「レビュー(感想)がレビューを呼んで、ありがたいことにお客さんにつながってきたとすごく思います。」

ネットの声を収集 観光イノベーションへ

国も、外国人観光客を呼び込むために、新たなネットの活用法を模索しています。
注目したのはツイッターでのつぶやきです。
去年、観光庁は、日本を旅行した外国人のつぶやき5万件を試験的に収集しました。
例えば、外国人が関心を持っている食べ物の1位は、すし。
次いで、ラーメンであることが分かりました。
つぶやきを集めるメリットは、プラスの評価だけでなくマイナスの評価も把握できる点です。

NTTデータ ソーシャルビジネス推進室 高野恭一課長代理
「一番上ですと、渋谷のタコ焼きを食べてます。」

NTTデータ ソーシャルビジネス推進室 高野恭一課長代理
「ツイートの原文を見て、ポジティブ(肯定的)、ネガティブ(否定的)の推定もしています。」

つぶやきと位置データを突き合わせれば、将来的には観光スポットの評判を客観的な数値で表した分析も可能になるといいます。

NTTデータ ソーシャルビジネス推進室 高野恭一課長代理
「結構ディープに訪日の旅行を楽しんでいるというのが見えてきたというのがある。
どこで何をしているか、どのように思っているかを提供できると、より外国人観光客の行動が捕捉できると思っています。」

まだまだ伸びる! 訪日観光の可能性

●地道な努力の積み重ねが高い評価につながると、勇気づけられるところも多い?

そうですね。
このホテルがしていることは、ことばが分からない異国で、人が感じるであろう不便、不安、不満っていうのをきちっと押さえて、丁寧に対応しているところにあると思います。
その実体験が掛け値なしの情報として流通することで、それを見て、次の方が来るという、非常にいい循環が起こっている例だと思いますし、こういうことは大手の企業じゃなくても、小さな企業、小さな家業であったり、あるいは地方でも十分できることではないかと思います。

●さまざまな趣味の外国人も来るのでは?

そうですね、例えば「スペシャル・インタレスト・ツアー」と呼ばれるような、日本ですと、にしきごいですとか盆栽、こういった趣味のツアーもありますし、あるいは例えばドイツ人の方、とにかく歩くのが好き、ヨーロッパの方は小道が好きといったような、ニッチな要求、ニーズを見つけていくというのが大切かと思います。

●外国で感じる不安や不満、不便の感度を上げていくためには?

それが実は、訪日観光の人材育成でたぶん一番大事なことだと思うんですね。
そのためには、観光の現場で働く人々が自分自身も海外に出て、異文化の中の不便、不安、不満というものを感じること、それによって自分たちが他国の人を受け入れるときに、同じ人としてそれを解消してあげる、そういう気持ちを持ち実践をするということ、これがとても重要なんではないかと思います。

●リピーター、個人観光客、日本のファンを増やすうえでやらなければいけないことは?

そうですね、情報発信の点からいいますと、そういうコアなファンの方は、旅行に行くときの観光情報だけではなく、それ以前に、日本という国はどんな国なのかということを知ってくださる、そういうチャンスを私たちが情報発信しなきゃいけないと思うんですね。
ですから例えば、先ほど盆栽とか、にしきごいと申し上げました。
これは必ずしも観光情報として流れているわけではなく、そういう趣味の流通で行われていると思いますので、そういう意味では、日本ですと例えば柔道であったりとか、そのほかいろいろ日本のお家芸、本家本元を旅行情報以外で流すことが重要ではないかと思います。
例えば、お買い物はいずれ本国でできるようになりますので、今、浮かれ過ぎずに、地道に丁寧にコアなファンを作っていきたいと思います。

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