半導体、太陽光発電、液晶パネル、どれも出始めは日本がトップだったけれども、海外に抜かれてしまった商品です。
半導体は最早上位に日本は1社のみ
2018年上期の半導体企業ランキング-トップ15に日本企業は1社のみ | マイナビニュース
太陽光発電に至っては中国にもっていかれています。
太陽光発電ランキング・ソーラーパネルメーカーシェア比較
Twitterでは盛んに「日本はあと5年もすれば技術後進国になり果てる」だとか「全ては日本企業がケチだから悪い」だとか「日本には金がない」だとか嫌なツイートが飛びかっていて
まあ気持ちはわかるのですが、グチグチ言うだけで原因の究明をしようとしない。口を開けばケチなのが悪いと言うばかり。
正直言って、全く文句ばかりで生産性が無いなあという印象をもっています。
よくTwitter等では「基礎研究や技術部分への投資不足が原因だ」という話がよく流れてくるわけですが、同じような話をしてもしょうがないので、私は、「要因の一つには日本の文系軽視がある」という説を提唱します。
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まずはじめに
さて、まず初めに述べておきたいのは、私は別にメーカーで働いている人間でもなければ、何なら社会人ですらありません。
現在就活中の身の大学院生です。
そのため、社会人の方からすると「ナマ言ってるんじゃねえ」と思われかねませんが、
特に企業説明会で聞いていて感じたことや、企業分析をしていて感じたこと、
大学で経営学系の講義を受けて感じたことを元に記事を書かせていただきます。
あくまで、私が感じた違和感を書き起こしたものとして読んでいただけるとありがたいです。
企業説明会で感じた違和感
大学生の就職活動は、とりあえず「企業説明会」なるイベントに参加することから始まります。
企業説明会、有名企業側にとっては、自社の紹介やアピールをすることで学生に対する周知をはかる機会であるとともに、学生側は業界の様子や仕事内容等について現場の方から聞くことの出来る良い機会でもあります。
私は、文系であり、統計学・経営学・経済学を専攻しているため、特にデータ分析やエンジニア、マーケター、営業辺りに関心があるわけなのですが、とりあえず広く業界を見てみようと、特に絞らず色々な企業さんのお話を聞きました。
その中で、所謂日本のBtoBのメーカー企業さんは、やはり「理系」の「優秀な技術を備えた」学生を求めているようで、説明会の場でも、理系学生ばかり優遇しており、文系の営業やマーケター系の説明は、言っちゃ悪いけどテキトーな印象を受けました。
まあ、この待遇差は当然かもしれません。
「優れた技術で高品質な商品を作る」
「高品質な商品であれば自然と売れる。」
「特に相手がビジネスであれば尚更。」
それが日本のBtoBメーカー企業のやり方だったはずです。
※当然例外はあります。某k社とかはそうですね。
説明会でも、この手の企業では必ず次のような言葉ばかり耳にしました。
「自社に備えた優秀な技術が強み」
「良い商品を作ることが売上に直結する」
「とにかく技術が大事」
私は経営系の人間のため、この販売姿勢に強く反感を覚えてしまい、
「あぁ。日本のBtoBメーカー企業に行くと、文系は大事にされなさそうだ。行かないでおこう。」
と強く思いました。
というのも、
「たとえ良い商品であっても、買い手に良さが伝わらなければ売れない」
「商品の価値は品質だけでなく、買い手の知覚によっても決まる」
それがマーケティングの基本的な考え方だからです。
BtoBとBtoC
まあ、ただBtoB企業がこのようになるのもわかります。
実際マーケティングの教科書は、BtoC企業がメインであり、BtoBメーカーは経営戦略系の本さえ読めば事足りるような気もしてきます。
広告効果も小さいし、BtoBメーカーのマーケティングのメイン要素は「営業」。
まあ、知恵と足と業界ごとのノウハウを使って頑張ってくれとしか言いようもない気がしておざなりになってしまう気持ちもわかります。
※別に営業をバカにしているわけではなく、机上の空論でどうにかなる問題じゃあないよなあという話です。
そもそも売れる商品とは何か
ところで、売れる商品とは何でしょう。顧客は当然対価を支払って商品を購入するわけなので、簡単に考えてしまうならば
(顧客が感じる価値)>価格⇒顧客は購入する
(顧客が感じる価値)<価格⇒顧客は購入しない
はずですよね。
それではBtoB取引における商品の価値とは何でしょう。
BtoCであれば、消費者によって感じる価値は様々です。だからこそ顧客対象の分析が重要になるわけですが、BtoBにおいては相手もビジネスを考える相手。故に重要なのは
儲けを産めるかどうか
でしょう。
当然既存のものより品質の良いものであれば、儲けを産むことが出来るわけなので、よく言われる高品質、最新技術は商品の価値を構成するものの一つと考えることが出来ますね。
高品質低価格商品とは
日本の商品は高品質で低価格がウリであると言われます。言葉だけ取ってみればよさそうですが、内実はどうでしょう。
顧客の購買行動を先ほど次のように仮定しました。
(顧客が感じる価値)>価格⇒顧客は購入する
(顧客が感じる価値)<価格⇒顧客は購入しない
品質は価値の一部であるので、高品質低価格商品は、
不等式の右側である「価格」を小さくし、左側の「価値」を大きく取った良戦略商品のように見えます。
潜在的な価値
ただ、商品の価値は品質の良さや使われてる技術だけではありません。
商品にはある種の潜在的な価値があるわけです。
例えば、
弁当を作る企業にセンサーを売るとします。
(私はセンサーや弁当工場には詳しくないので適当に話しますが)
まず、顧客であるこの弁当企業では、弁当に印字されたラベルを抜き取り式で、検査員が適当な印字が施されているか検査します。
これを人力で行う理由は既存のセンサーだと、精度が悪く、印字検査を適切に行えないためです。
ここで仮に最新式のセンサーによって、検査員に割く人員を削ることが可能になれば、年間で2億円の経費を削減することが可能になるとしておきましょう。
つまり、このセンサーを買うことで顧客は「年間で2億円」得します。
このように表面的には分からない顧客にもたらす効用を、潜在的な価値と呼ぶことにしましょう。
ということはです。
このセンサーが5年間壊れず使用できるとすれば、このセンサーの価値は少なくとも10億円あるわけです。
単に技術や品質だけでなく、この潜在的な価値を如何に顧客に伝えることが出来るかが商品を売る場合は重要で、
この顧客に対する潜在的な価値を高めることが出来れば出来るほど、商品の価値は爆上がりするわけです。
ただ、いくら商品のなかに潜在価値があったとしても、顧客からはほとんど見えません。
よってこの潜在的価値をうまく提示することで、顧客が見ている商品の価値を高めることこそが営業の仕事だと私は考えます。
つまり、こういうこと
※当然、潜在的価値は商品の質あってこそという点に注意
日本と海外の考え方の違い
大学の講義で経営学の先生が、有名な経営大学院での実験結果の話をしてくださいました。
※具体的にどこの話なのかは忘れました。すみません。
先ほどのセンサーは、10億円の潜在価値がありました。この時、製品開発コスト1億円を仮定して、各国の経営者に値段をつけさせると、
アメリカやヨーロッパの国々の人は、「潜在的に10億円も成果をあげられるのだから、5億円~7億円くらいの値段設定をすべき」
と言う一方で、
日本人だと、「製品開発コストが1億円なんだから、2億円くらいに設定すべき」
と言うようです。
つまり、日本だと「とにかく低価格にした方が良い」という考え方が根強い一方で、
他の国々だと「提供した価値に合わせた値段設定をすべきだし、高い物を売るために潜在的価値を積極的に高めよう」という考え方があるみたいです。
つまり、整理するとこうなります。
長期的に見る
そろそろ勘の良い人なら気付いているかもしれません。
この話が、どう一般的によく言われる「投資不足」話と合致するのでしょうか。
日本は技術や品質によって表面的な価値を高めた商品を低価格で売ろうとします。
正直、技術や品質は、一度出回ると大抵はすぐに真似されます。
故に、日本企業が技術や品質で先手を取ったとしても、勝てるのは最初だけで、すぐ追いつかれます。
更に日本企業は、研究開発にお金を大量に使う割に低価格で販売するので、「儲け」を大きく確保することが出来ません。
一方で他国の企業は潜在的な価値を高めることで、高価格で販売を行っていきます。すると、「儲け」を大きく確保することが出来ます。
この「儲け」は次の研究開発費に回すことが出来るので、次の商品を作る際には儲けの少ない日本企業は幾分か不利になり、
何周か回った段階で、品質でも後れを取るようになります。
今騒ぎになっている日本の技術後進国化は、ここの段階とは言えないでしょうか。
ちなみに、この潜在的価値を高めることに恐らく日本で最も注力していると思われる会社が
天下のキー〇ンスです。
この企業の凄さは皆さんご存知の通り。
まとめ
これを通して私が言いたいことはただ一つ。
知恵を存分に駆使した営業努力、日々研究が行われている経営学、その他経済経営に関する努力を軽視するべきではないということです。
別に軽視してませんって企業は良いんです。
ただ、少なくとも私がBtoBメーカー企業の方々から話を聞いた時は、文系軽視の印象は受けました。