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【首都スポ】

[トライアスロン]女子の岸本、日本選手権での飛躍誓う

2018年10月13日 紙面から

日本トライアスロン選手権出場を前に、合宿地の高原で笑顔をみせる岸本新菜=長野・佐久穂町で(いずれも久野功撮影)

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◆第24回日本トライアスロン選手権(2018/東京・お台場)

 兼2018NTTトライアスロンジャパンランキング最終戦▽14日▽お台場海浜公園(スイム1・5キロ)、臨海副都心特設会場(バイク40キロ、ラン10キロ)▽男子50人、女子55人▽日本トライアスロン連合、東京中日スポーツ・東京新聞主催

 今春、日体大を卒業してプロトライアスリートになった岸本新菜(22)=福井県スポーツ協会=は、日本トライアスロン界の次世代ホープだ。明るくチャーミングな笑顔がトレードマークの有望株の目標は「2024年パリ五輪でメダル獲得」。14日の日本選手権で飛躍のきっかけをつかもうと、意欲満々だ。 (フリージャーナリスト・辛仁夏)

◆プロ1年目「日本や世界で活躍できる選手に」

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 本格的に始めて5年目になるトライアスロンの魅力について聞くと、岸本はくすっと、いたずらっぽく笑ってみせた。

 「3種目ある分、楽しさは3倍あるし、きついときも気持ちを上げられるところです。番狂わせの可能性や危険性は誰にでもあって、絶対ということがなく、勝てるチャンスがあります。この競技をやっている人は『けっこう、ドMだね』と、いろんな人から言われるんですよ」

 小3から中1までの5年間、友人の誘いに乗り、「遊び感覚」で当時住んでいた埼玉県川越市のキッズ・トライアスロン大会に出ていた。「同じころに4歳から始めた競泳もやっていたので、ちょこっとかじったくらいでした」。中学と高校では違う競技もやりたくなり、バレーボール部と陸上部にそれぞれ所属した。一時期離れたが、6歳下の末弟が続けていたこともあり、トライアスロンを忘れることはなかった。

 「やっぱり格好良い競技だと思って、大学ではもう一度トライアスロンをやろうと決めました。だから、走ることを生かせると思ったので、高校で陸上に取り組みました」

 日体大に進学し、2年生のころにはすでに、プロとして競技を続ける覚悟が芽生えていた。「日本や世界で活躍できる選手になりたい」。そんな未来予想図を描いたからだった。

◆アジアでタイトル獲得も「トップ選手出ていない」

 それでも、気持ちがゆらいだことはあった。大学最終年だった昨年の日本選手権。目標とした10位以内をクリアできなければ、やめるつもりだった。結果は12位。そこで思い直す。この1レースを迎えるまでの自分を顧みた。

 「他の大会での結果やレース内容を振り返ると、自分にまだ伸びる可能性があるなら、チャレンジしたいという気持ちになったので、続けました」

 「続けて良かったですね」と声をかけると、「うふふふ、良かったです!」と破顔一笑した。

 国際大会に出始めて2年目、プロ活動1年目の今年は、アジア・カップなどの国際大会で初タイトルを取るなど著しい活躍をみせる。スイムが少し苦手というが「得意のバイクで第1集団に追いつきラン勝負に持ち込むのが自分のレーススタイル。高校時代、(陸上部で)400メートル、800メートルをやっていた分、スピードには自信があるし、今年の4戦すべてゴールスプリントの勝負に持ち込みました」と、最後の粘りとメンタルの強さを自負する。

 6月のアジア杯大阪城大会で初表彰台の2位となり、同月下旬のU-23アジア選手権と8月のアジア杯アルマトイ(カザフスタン)大会で優勝を飾った。アジア圏では結果を残せるようになったが、自分の今の立ち位置では、世界で戦う権利はまだないと自己評価は辛口だ。

 「日本女子のトップ選手はW杯に出場し、私が表彰台に上っているアジア杯には出ていません。もちろん、アジアで勝つことはうれしいですが、私にはまだ先の目標があるので、突き進まないといけないです」

◆「5位以内目標。今年こそ結果残したい」

 力をつけて臨む今年の日本選手権。「もちろん優勝するつもりでレースに臨みますが、個人的な目標としては5位以内」と冷静に分析するも、本音はこうだ。

 「今回は自分の持ち味を出して、世界で戦うトップ選手を相手にどこまで気持ちを切らさず食らいつけるか。オリンピック出場という目標を達成するためにも、これからは絶対に結果を残さないといけない大会だから、今年こそは結果を残したいです」

 6年後のパリ五輪メダリストに向けたスタートラインに立てるか。世界への扉を開くための重要なレースになる。

カラフルにペイントされたフィンガーネイル

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◆岸本新菜ア・ラ・カルト

 ●チャームポイントは「お尻!?」 「私、お尻が大きいんですよ(笑)。バイクが得意なのはお尻を使ってペダルを踏むからで、大きさが武器なのかなって。はっきりした理由が分からないですけど、鍵はお尻かも…。わっはははっ!」

 ●勝負飯 納豆ご飯。「絶対にレース前は食べます。とにかく納豆が大好きで、納豆パン、納豆パスタ、納豆うどん…、何でも納豆と一緒に食べます」。レース後は「焼き肉を、頑張った自分へのご褒美で食べますね」。

 ●おしゃれさん! 大事なレース前は毎回、願掛けで凝ったネイルをする。「ファッションが好きなので、オフの日はいろいろおしゃれをしています。普段とのギャップにびっくりされます」

 ●自分の性格 心配性で、負けず嫌い。「ムードメーカーで、イエーイみたいな性格で、明るく、場を盛り上げることが好きです」

蒲郡オレンジトライアスロン大会兼U-23アジア選手権で2位と1秒差でゴールテープを切る岸本新菜(中)=6月24日、愛知県蒲郡市で(谷大平撮影)

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<岸本新菜(きしもと・にいな)> 1995(平成7)年11月30日生まれの22歳。横浜市出身。164センチ、52キロ。福井県スポーツ協会。小学生時代に競泳とトライアスロンを始め、横浜市立もえぎ野中ではバレーボール部、日大藤沢高では陸上部。日体大入学後、本格的にトライアスロンを始めた。昨年の日本学生選手権で個人3位、団体4連覇。今年はアジア・カップ初優勝(アルマトイ大会)、U-23アジア選手権優勝。福井国体3位。日本ランキング5位。日本選手権は15年大会26位、16年大会25位、昨年は12位。

◆尊敬する上田の実力に脱帽「スタミナが私と全然違う」

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 岸本が尊敬するトライアスリートは、08年北京五輪から3大会連続日本代表の上田藍(34=写真)=ペリエ・グリーンタワー・ブリヂストン・稲毛インター=だ。9月下旬に長野で行われた強化合宿に上田と一緒に参加。「世界の舞台でもランラップで1位を取っている上田選手は、練習でのスタミナが私とは全然違いました」と、改めて日本女子の第一人者の実力に脱帽した。

 そんな一回り下の後輩について上田は「東京五輪そして次のパリ五輪に向けて、一つひとつ階段を上れば、確実に強くなる有望な選手です」と、高く評価した。

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