「不正入試、自ら公表を」 文科相が異例の呼びかけ

社会
2018/10/12 23:27
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東京医科大で発覚した不正入試問題が、他大学にも波及した。柴山昌彦文部科学相は12日、他の複数の大学で不正な操作があった疑いがあると言及し、大学に自主的に公表するよう異例の呼びかけを行った。受験シーズンが迫るなか、受験生の混乱を避けるため早期の対応を促した形だが、入試の実態解明の難しさを指摘する声もあがっている。

記者会見に臨む柴山文科相(12日、文科省)=共同

記者会見に臨む柴山文科相(12日、文科省)=共同

「大学入試は公正かつ妥当に実施されるべきだ。大学は不適切な操作はないと回答していたのに、このような事態は問題だ」。柴山文科相は同日の閣議後会見で語気を強めた。

文科省は医学部医学科がある全国の81国公私立大の2013~18年度の入試を対象に調査し、9月に性別や年齢別の合格率を公表した。いずれの年度も男子が優位だが、性別などによる加点といった不正を認めた大学は無かった。

だが、同省が男女の合格率に差がある約30大学を訪問して入試関係の資料を調べると、複数で女子や浪人生に不利な扱いをしたり、特定の受験生を有利にしたりした疑いが浮上したという。

柴山文科相は、調査中だとして大学名を明かさず「各大学が事実と背景について点検を踏まえた発表をするよう求める」と要請。受験シーズンを前に事実解明し、過去に不利益を受けた受験生の救済を急がせる狙いがある。

文科省は10月中にも中間報告を公表する方針。報告にあわせる形で、医学部に限らず国公私立の全ての大学を対象に、来年の入試に向け不正や不適切な対応の有無などの点検徹底を求める通知も出す予定という。受験に向けた混乱を最小限に抑えたい考えだ。

ただ、入試の実態がどこまで解明されるかは不透明だ。各大学のノウハウが蓄積された学生の選抜方法の調査は難しいとみられ、ある文科省幹部は「入試に関するデータは全て大学の手にある。大学側が納得してくれないと、実態は明らかにならない」と話していた。

複数の大学での不正入試の疑いに言及した柴山文科相の指摘に、調査に取り組むとする大学がある一方で、戸惑いも広がっている。

過去6年の入試で男子の合格率が平均で女子の1.67倍だった順天堂大は「不適切な入試があったかどうか学内で事実関係を調査する」とコメント。調査結果については「今後公表する」とした。

ただ、順天堂大に次いで合格率に差があった東北医科薬科大の広報担当者は「結果として男子の合格者が多かったとしても、恣意的な操作はしていない」と説明。自主的な調査はしていないという。

4番目に差が大きかった日本大医学部は、医学部独自の入試と各学部共通の入試の2パターンを実施。医学部独自の入試について同大広報課は「男子のほうが成績の良い傾向が出ただけ」とし、共通入試では「女性の合格率が高い」と公平性を主張した。

一方で、都内の予備校担当者は女子や浪人の受験生が合格しにくい大学があるというのは「常識だった」と驚かない。「入試で差があるというのを理解したうえで、進路指導をしている」と話した。

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