よいアニメで、よい人生を『人生を変えるアニメ』
涙も笑いもときめきも、人生に必要な感情はアニメが教えてくれる。
べつにドラマティックに変わらなくてもいい。『ゆるキャン』観てこの冬、キャンプデビューするのもありだし、『弱ペダ』でロード買っちゃうのも変化だ。ヘコんだ気分がOPだけでUPするのもアニメの力、人生をいい風に押してくれるのは有難い。
『人生を変えるアニメ』には、そんなアニメが並んでいる。アニメ監督や声優、小説家、評論家などが、年代ジャンル問わず、本気でお勧めしてくるアニメガイドなり。
本書は「14歳の世渡り術」シリーズの一冊で、中高生に向けて「知ることは、生き延びること」というメッセージ性が込められている。『風の谷のナウシカ』『母をたずねて三千里』といった古い作品から、現在放映中の最新作も入り混じっているので、わたしが読むと「あるある!」「見た見た!」「見たい見たい!」とうなづくばかりの読書となる。
この世界の片隅に
たとえば、斎藤環氏がお薦めする『この世界の片隅に』。彼は、劇場で7回鑑賞したという。打ち間違いではなく、同じ映画を7回観たんだって。わたしも大好きで、[たくさんの人に観てほしい。できれば、大切な人と一緒に]と綴ったが、さすがに7回はすごい。
同じ映画を7回も観ると何が起こるのか? 映画の内容が自分の記憶と入り混じり、作品の中に言い知れぬ懐かしさを覚えるようになるんだって。これすごくわかる。何度も何度も繰り返すことで、そのアニメの会話やシーンや感情、音楽、空気感までもが、自分の人生の記憶の一部になるんだよね。
3月のライオン
怖いことを言ってくる人もいる。[読書猿]さんだ。「14歳」シリーズで、読者が中高生メインであることを想定して、「いつか嘘をつくあなたへ」というタイトルで『3月のライオン』を薦めてくる。
劇中、主人公はある「嘘」をつく。それは絶望的な状況で、自分の居場所をつくるための嘘なのだが、その嘘が彼の人生を決定してしまう。その嘘をつき通すために、嘘を本当として努力し、嘘を守るようになる。確かにこのシーンにはぞっとしたが、読書猿さんは先回りする。
そして、「あなた=『人生を変えるアニメ』の読者」も、生きるための嘘をつくことになると予告する。「意に添わぬ期待や約束を引き受けて、必死に世界と自分をつなぎとめる戦いに身を投じることになる」というのである。この件はドキッとした。これは予告だが、わたしにとっては事実だからである。
わたし自身、完全に正直に生きることはできない。嘘と本当との折り合いをつけながら(ごまかしながらともいう)、あるところは糊塗し、別のところは密かに頑張ってつじつまを合わせ、なんとかやり過ごしてきた。
読書猿さんのメッセージが、「14歳」に届くかどうか分からない。だが、これを読んだ14歳が、わたしくらいの歳になって『3月のライオン』を観たとき(読んだとき)、きっと思いだすだろう(自分の人生として)。
灰羽連盟
三宅陽一郎氏にとっての『灰羽連盟』は、文字通り「人生を変えるアニメ」だった。その熱量は読んでるこっちにダイレクトに伝わってくる。彼は、ストーリーの完成度や独特の世界観を長々と述べるのではなく、自分の人生をどういう風に変えてしまったかについて語ることで、『灰羽連盟』の魅力を伝えようとしてくる(そして、その試みは大成功している)。
物語の後半の、ある会話のシーンで、その3分に満たない時間で、「自分にとって何かたいせつなもの」が分かる決定的な瞬間が訪れたというのだ。それは、声優の演技や脚本や演出といったものを超えて届き、人生にとっての得難い価値・生きていく方向性のようなものが示唆されたように思えるほどだったという。これは観たい!
天元突破グレンラガン
これは、わたしのお薦め。『人生を変えるアニメ』には無いが、わたしの人生をアツい方へ変えたアニメとして全力で推したい。
これ、子どもを寝かしつけた深夜、嫁さんとイッキに観た。笑いと悲鳴と号泣がないまぜになって、座って観てたのが立っている。感情が、ボロボロに突き落とされて、掴み上げられて、想像のナナメ上どころか次元を突破される。ラジカルに、心のほとばしるままに観る。ヘコんだ鼓動がみるみるうちに上昇する(OPを聴いたら今でもそうなる)。このアニメのコンセプトであり、ゴールであり、わたしが伝えたい言葉はこれだ。
いいかシモン、忘れンな!
お前を信じろ!
俺が信じるお前じゃねぇ
お前が信じる俺でもねぇ
お前が信じる、お前を信じろ!
あのとき寝かしつけられてた子が大きくなり、とーちゃんの視聴リストから一気に観てくれたのも嬉しい。「お前を信じろ」と、わたしが伝えずとも、アニメが伝えてくれるのだから。
よいアニメで、よい人生を。
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