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成果主義とは何なのか(5)(6)
成果主義とは何なのか(5)
3. なぜ成果主義は評判が悪いのか
(2) 管理者でなかった管理者
「年功主義に比べて仕事の中身を細かく、多角的に分析するようになっている。社員の仕事の与え方、適性の分析など管理職の裁量が大きくなると同時により正確な評価が求められさらにフィードバックのある企業では、部下に説明しなくてはならない。評価者能力が求められる」
「適正な評価を下せない上司は追放される-そんな時代がやがてくるだろう。人事評価の適正な運用が成果主義の命運を握っている」
管理者の役割には仕事の管理と人の管理があります。
仕事の管理としては目標の設定や計画、作業標準や標準化、コスト管理などがあります。人の管理には能力開発、人事考課、昇進昇格、安全衛生、人間関係管理などがあります。
目標管理に基づく人事考課というのは管理者として当然の職務になるわけで、これが改めて問われることになっているのです。
日本人の仕事の範囲はあいまいで、手順も明確に定められておらず、担当者個人任せが多いとよく言われます。部下に自由にやらせている。そのほうが皆のやる気がおこり成果が上がる。失敗したら俺が責任をとる-という上司もいます。
このように人によりマネジメントのスタイルは千差万別です。先ほどの仕事と人という2つの軸で見た場合でも、仕事に関心が高いが部下には関心持たないタイプ、逆に親分肌で部下や人間関係に気を配るが仕事の遂行にはあまり関心を持たないタイプ、仕事にも部下にも関心を持たず放任するタイプなどに分けられます。
理想的なタイプは当然人にも仕事にも関心を持って業績を達成するタイプです。
組織として仕事をする以上、仕事をする目的の明確化、組織として効率よく仕事をするための職務配分や配置、人材の育成、実行した仕事の評価等々は管理者としてまず実施しなければならない仕事です。
有名なドラッカーの言葉を借りるまでもなく、「目標管理」や「目標によるしごとの進め方」はマネジメント上有効な手法なのです。そして目標の達成度を測定し評価することは、部下の次の仕事への意欲の向上や動機付けとする手段でもある。
自分も目標を持っており、部下の面倒ばかり見ていられないという人もいますが、プロの管理者は、部下と一緒に業績・成果を上げる人なのです。これを忘れて自分のやるべきことを放り投げる人は管理者失格です。
管理者が管理者としての仕事を果たしていない-むしろこういうことが通用していたほうが不思議かもしれません。成果主義はこうした問題点を浮き彫りにする制度であったと言うことができます。
したがって本質的な問題ではないのですが、職場の管理レベルという重要な側面を見落として、より高い管理能力を求める成果主義的な制度を導入してしまったという問題点があるのです。
成果主義とは何なのか(6)
3. なぜ成果主義は評判が悪いのか
(4)リストラに悪用されイメージが悪化
「ABCの社員は全体の8割を占めるが、ここまでの人は会社にいてもいいですよ。残り2割の人は注意しなさいというメッセージです。また当然DEのひとがいなくなれば相対評価ですから必然的に真ん中のCの人が下位のDEに落ちることになる。だからCだからと安心していられない。」
「評価制度で最低評価にランクされた社員はなんとしても契約解除にもって行きたい」
「成果主義は人材の流動化とセットになっている。成果をだせない低評価の社員はいずれ会社から放逐される運命にある。」
このように評価を雇用管理に使用する会社もあります。能力主義時代の人事考課は育成のための考課であるとうたっていましたが、人を組織から排除するのための考課もあるのです。しかしこれは邪道だと思います。いかに成果主義といっても排除の仕組みでは社員の支持は得られません。こうした趣旨を取り違えた運用を許してきたことが成果主義の最大の弱点ではないでしょうか。
本来、仕事の業績や成果に応じた処遇をすること自体は決して誤った方向ではないと思います。しかしすこぶる評判が悪いのは、こうした誤った理解と運用に基づくことが多いのではと思います。
「2・6・2の原則といって、評価の低い2割の社員は外に出てもらうという会社もありますが、キャノンはそうじゃない。2割の人はなんとしても頑張ってもらう。6割の人もがんばりその上の2割は何としてもがんばってもらう。そして会社はちゃんと雇用を守る努力をしますというメッセージを出す。雇用を確保するためにどうするか会社とまず考えるのがDNAとして染み付いている。なにより安心感を与えています。」という会社もあります。このように社員に安心感を与え、信頼に基づく管理をする会社は、その結果として高い業績を維持することができるものと確信しています。
大企業にいて独立して起業した人は、改めて雑多の仕事を処理しなければならないことに驚くと言います。細かく分業化された大企業のシステムで仕事をしている人ほど自分の仕事しか見えず、自己中心的な見方に陥りがちです。
会社の中にはさまざまな職種がありさまざまな能力や経験を持った人間が存在しています。高度な仕事もあれば単調で簡単な仕事もあります。そうしたさまざまな仕事があればこそ日々の仕事が円滑に進むのです。
成果主義に基づく評価の低い人が、仕事をサボっているのかというと必ずしもそうではないのです。むしろ仕事や与えられた目標の性格に基づく評価結果である場合が多いのです。相対評価の場合は、一定の等級内にいる人同士で比較するだけになおさらです。評価の高い人、低い人が固定化されてしまうのはその人の努力や働きぶりよりも社内での仕事上の置かれている立場によることが大きいと私は考えます。したがって評価の低い人を排除しても、その仕事や目標が残る限りその後任はまた低い評価に甘んじることになるのです。排除の論理よりも活用を考えるべきと思います。
成果主義とは何なのか(5)(6)
atc-1801
column:column_labor:column_tax_general
2005-09-19
成果主義とは何なのか(5)
3. なぜ成果主義は評判が悪いのか
(2) 管理者でなかった管理者
「年功主義に比べて仕事の中身を細かく、多角的に分析するようになっている。社員の仕事の与え方、適性の分析など管理職の裁量が大きくなると同時により正確な評価が求められさらにフィードバックのある企業では、部下に説明しなくてはならない。評価者能力が求められる」
「適正な評価を下せない上司は追放される-そんな時代がやがてくるだろう。人事評価の適正な運用が成果主義の命運を握っている」
管理者の役割には仕事の管理と人の管理があります。
仕事の管理としては目標の設定や計画、作業標準や標準化、コスト管理などがあります。人の管理には能力開発、人事考課、昇進昇格、安全衛生、人間関係管理などがあります。
目標管理に基づく人事考課というのは管理者として当然の職務になるわけで、これが改めて問われることになっているのです。
日本人の仕事の範囲はあいまいで、手順も明確に定められておらず、担当者個人任せが多いとよく言われます。部下に自由にやらせている。そのほうが皆のやる気がおこり成果が上がる。失敗したら俺が責任をとる-という上司もいます。
このように人によりマネジメントのスタイルは千差万別です。先ほどの仕事と人という2つの軸で見た場合でも、仕事に関心が高いが部下には関心持たないタイプ、逆に親分肌で部下や人間関係に気を配るが仕事の遂行にはあまり関心を持たないタイプ、仕事にも部下にも関心を持たず放任するタイプなどに分けられます。
理想的なタイプは当然人にも仕事にも関心を持って業績を達成するタイプです。
組織として仕事をする以上、仕事をする目的の明確化、組織として効率よく仕事をするための職務配分や配置、人材の育成、実行した仕事の評価等々は管理者としてまず実施しなければならない仕事です。
有名なドラッカーの言葉を借りるまでもなく、「目標管理」や「目標によるしごとの進め方」はマネジメント上有効な手法なのです。そして目標の達成度を測定し評価することは、部下の次の仕事への意欲の向上や動機付けとする手段でもある。
自分も目標を持っており、部下の面倒ばかり見ていられないという人もいますが、プロの管理者は、部下と一緒に業績・成果を上げる人なのです。これを忘れて自分のやるべきことを放り投げる人は管理者失格です。
管理者が管理者としての仕事を果たしていない-むしろこういうことが通用していたほうが不思議かもしれません。成果主義はこうした問題点を浮き彫りにする制度であったと言うことができます。
したがって本質的な問題ではないのですが、職場の管理レベルという重要な側面を見落として、より高い管理能力を求める成果主義的な制度を導入してしまったという問題点があるのです。
成果主義とは何なのか(6)
3. なぜ成果主義は評判が悪いのか
(4)リストラに悪用されイメージが悪化
「ABCの社員は全体の8割を占めるが、ここまでの人は会社にいてもいいですよ。残り2割の人は注意しなさいというメッセージです。また当然DEのひとがいなくなれば相対評価ですから必然的に真ん中のCの人が下位のDEに落ちることになる。だからCだからと安心していられない。」
「評価制度で最低評価にランクされた社員はなんとしても契約解除にもって行きたい」
「成果主義は人材の流動化とセットになっている。成果をだせない低評価の社員はいずれ会社から放逐される運命にある。」
このように評価を雇用管理に使用する会社もあります。能力主義時代の人事考課は育成のための考課であるとうたっていましたが、人を組織から排除するのための考課もあるのです。しかしこれは邪道だと思います。いかに成果主義といっても排除の仕組みでは社員の支持は得られません。こうした趣旨を取り違えた運用を許してきたことが成果主義の最大の弱点ではないでしょうか。
本来、仕事の業績や成果に応じた処遇をすること自体は決して誤った方向ではないと思います。しかしすこぶる評判が悪いのは、こうした誤った理解と運用に基づくことが多いのではと思います。
「2・6・2の原則といって、評価の低い2割の社員は外に出てもらうという会社もありますが、キャノンはそうじゃない。2割の人はなんとしても頑張ってもらう。6割の人もがんばりその上の2割は何としてもがんばってもらう。そして会社はちゃんと雇用を守る努力をしますというメッセージを出す。雇用を確保するためにどうするか会社とまず考えるのがDNAとして染み付いている。なにより安心感を与えています。」という会社もあります。このように社員に安心感を与え、信頼に基づく管理をする会社は、その結果として高い業績を維持することができるものと確信しています。
大企業にいて独立して起業した人は、改めて雑多の仕事を処理しなければならないことに驚くと言います。細かく分業化された大企業のシステムで仕事をしている人ほど自分の仕事しか見えず、自己中心的な見方に陥りがちです。
会社の中にはさまざまな職種がありさまざまな能力や経験を持った人間が存在しています。高度な仕事もあれば単調で簡単な仕事もあります。そうしたさまざまな仕事があればこそ日々の仕事が円滑に進むのです。
成果主義に基づく評価の低い人が、仕事をサボっているのかというと必ずしもそうではないのです。むしろ仕事や与えられた目標の性格に基づく評価結果である場合が多いのです。相対評価の場合は、一定の等級内にいる人同士で比較するだけになおさらです。評価の高い人、低い人が固定化されてしまうのはその人の努力や働きぶりよりも社内での仕事上の置かれている立場によることが大きいと私は考えます。したがって評価の低い人を排除しても、その仕事や目標が残る限りその後任はまた低い評価に甘んじることになるのです。排除の論理よりも活用を考えるべきと思います。

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