2010-07-23 平和を愛する心には鉄面党が許せない
肩凝りがエラいコトになっている私ですが、皆さんいかがお過ごしですか。
いつもの。
■[映画感想・は] 10/7/15 070(1715) 『爆発!暴走遊戯』 (ビデオ/76年日/石井輝男監督)


《解説》
『爆発!暴走族』に続く“暴走族”シリーズの2作目で、監督は引き続き石井輝男。
脚本は石井と、この作品では助監督もやっている橋本新一。
風間[~岩城滉一]率いる暴走族“ブラックパンサー”は、鈴鹿サーキットで開催される“JAFグランプリ”を観戦しようと田舎道を飛ばしていたのだが、その最中に同じ目的で鈴鹿に向かっていた花田[~織田あきら]と魔子[~鹿沼えり]の率いる暴走族“レッドバロン”と遭遇。
下町の貧乏人で構成されるブラックパンサーと、山の手のボンボンで構成されるレッドバロンは以前から対立関係にあり、当然のように小競り合いが勃発するのだが、モタモタしているとレースを見逃しかねないってんで一時休戦な雰囲気に。
しかし、レースの最中にもまた揉め事が発生し、更にはブラックパンサーのサブリーダー(多分)の真一[~星正人]が、風間の妹ユキ[~多岐川裕美]の為に人気レーサーの桑島正美[~本人]のサインを貰おうとしていた所に、花田と魔子が現れてブラックパンサーに罵詈雑言を吐き散らかし、旧知の関係だったらしい桑島を連れて行ってしまったコトで状況は最悪になり、両チームの間には全面抗争の火種が蒔かれるコトとなる。
翌日、花田は仲間を引き連れて風間の職場である自動車修理工場へと赴き、「3日後に総力戦で決着を付けよう」と宣戦布告。
そのコトを知ったユキは、レッドバロンの連中に顔が利くであろう桑島に会いに行き、「どうにか決闘を止めて」と頼み込む。
それを引き受けた桑島は、花田らを説得して決闘を中止にするとの言葉を引き出すのだが、花田はそれを無視するドコロか決闘の場所にすら行かず、警察に“暴走族が何かやらかそうと集まってますぜ”的な密告をカマし、無傷のままブラックパンサーを壊滅させようとする姑息な計略を用いる。
警官隊の襲撃を受けて場が大混乱に陥る中、風間はブラックパンサーのメンバーや援軍に駆け付けた“行田連合”の連中を逃がそうと、囮役となって逮捕されて留置場にブチ込まれてしまう。
卑劣な罠にブチ切れた真一は復讐を決意し、風間の恋人アケミ[~中島ゆたか]やユキが止めるのも聞かず、仲間のサブ[~町田政則]と共にレッドバロンのメンバーや桑島の車に対する破壊工作を開始するのだが、花田らに待ち伏せされて軽々と捕まってしまい、真一は凄惨なリンチを受けるハメに(サブは真一を見捨てて逃走)。
そんな状況の中、桑島とユキは何故かイイ雰囲気になりつつあったのだが、ブラックパンサーとレッドバロンの対立関係は、何とか事態を収めようとする2人の思惑を無視して悪化の度を深めてゆく…
《感想》
物語自体は極めてテキトーなのに、妙に入り組んだ設定を持ち込んでゴチャつかせてしまった前作を反省したのか、今回は暴走族同士の抗争を最初から前面に出し、そこに悲恋要素を絡めただけの単純な話作りを試みている様子。
しかし、基本構造がまんま『ウエスト・サイド物語』なだけでは飽き足らず、“指を鳴らしながらの集団ダンスシーン(無駄に長い)”みたいなモノまで混入させたコトで、オマージュなのかリスペクトなのか悪フザケなのか分からない、何とも言えないノリが全編に染み渡る結果になり、作品のカテゴライズを“珍作”へと追い込んでいます。
とは言え、娯楽作品としては一応の勘所を押さえてあり、性描写と暴力描写も(手際の悪さは否めないものの)分量的には結構な大盛りで、10~15分間隔で流れをぶった切ってでもおっぱいか乱闘、或いは集団暴走シーンを出す等の、集中力が壊滅的な人間も飽きさせないような配慮が施されており、シンプルこの上ない筋書き(敵役をブルジョア階級にしてあるのも分かりやすいですね)と相俟って、主なターゲットである頭の働きがイマイチなヤングでも安心して観ていられる親切設計になっていますよ。
デビュー直後の新人にしても演技力がポンコツ過ぎる岩城を“留置場にブチ込まれた”という設定で一時退場させ、別の役者に主人公を任せて中盤を進行させる、というダイナミックな手法には目から鱗が落ちる思いでしたが、そこで起用されている桑島の“素人だからしょうがない”とかそういう問題じゃない動き(演技と呼べる域に届いていない)には、全身から鱗が生えかねない衝撃を受けるハメに。
有名レーサーという肩書きによって公開当時はフィルターがかけられていたのでしょうが、表舞台から姿を消して久しい今となっては、劇中でレーサーならではのドラテクを見せてくれるワケでも、ルックスがイイってワケでもない桑島は激しく場違いで、そんなのにメインを張られても混乱するばかりです。
ユキと桑島の不自然な恋愛話(真一からの好意をユキがガン無視しているのもギクシャク感に拍車をかける)に元々短めの尺をもりもり食われているコトもあって、ブラックパンサーとレッドバロンの抗争という話の縦糸がかなり緩んでおり、終盤ではかなりの力技を駆使してまとめようとしているのですが、残念ながら大失敗に終わっていますよ。
そんなこんなでクオリティ的にはちょっとアレな一本ですが、良くも悪くもヒマ潰しに適した内容の作品ですので、そのつもりで観ておけばとりあえずは問題無いんじゃないかと。
それにしても、この数ヵ月後にシャブと拳銃不法所持のゴツいコンボで捕まったものの、何事も無かったようにシレっと復帰した岩城と、数年後にシャブで捕まって(多分。調べてみても何かボカした書き方ばかり)そのままフェイドアウトしてしまった様子の桑島との落差を思うと、芸能界という場所の特殊さが際立ちますね。【1】