オバロ、エタっちゃったよシリーズ 作:神坂真之介
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私の名は鈴吹弥太郎、どこにでもいるちょっとオタクな趣味を持つ社会人である。
主にゲームと読書を中心にそこそこに趣味にお金をかけている。ただ同人誌等を買いあさるのは数年前に辞めて久しい。
卒業したというより、お金がナイルのせせらぎの如く飛び立っていくので自重しただけである。
見ると買いたくなるので、出来るだけ見ない方向にしたのだ。
最近の趣味はMMORPGっぽいものを題材にしたウェブ小説オーバーロードを読むことカナー。
ふと公園を通りがかったところ、公衆トイレの横のベンチに一人の骸骨が座っていた。胸元の肋骨を大胆にさらけ出したローブの骸骨は私を見ておもむろにこう言うのだ。
「(アンデッドを)やらないか」
「うほ、良いオーバーロード」
等と言う、ワケのわからない妄想を益体もなく考えていた所で暴走して歩道まで脱輪してきたアーマードジープ(ただのハマーである)にはねられた。
……と言うのが私の記憶する、今迄での最新の記憶である。
で、現在の私がどういう状況かと言うと、目の前にえらい豪奢な恰好の顎の尖った骸骨がいて
年若い女の子と幼女を背にして、ビッっと格好良い仕草でそこら辺になんか香ばしい臭いを点ててたぶん死んでる鎧姿の兵士?を指さし
「デスナイト、この村を襲っている騎士共を殺せ」
とかのたまっている所なのである。
うむ、どう見てもオーバーロードです、ありがとうございます。
アニメも見たよ!モモンガさん!!
いやぁ、なんという事でしょう、死ぬ瞬間の走馬燈が人生の振り返りではなく
最近マイフェイバリット作品の世界をリアルにイメージするバーチャル妄想だとは。
ある意味、ロックな感性してんな私。
しかも、立ち位置的にどうも私、デスナイトじゃん。
両手を見てみるとスケルトンな骨だしなんかごっついフランベルジュな剣と盾持ってるし
「どうした、俺の命に従え」
おっとまごついてる所為か、モモンガさんが不審に思ってるぜ。
今の彼も大体の状況が未知だらけで実験段階だもんね、下手なことをすると速攻で消されそうだよ
そいつはまずいぜ私、走馬燈ってのは人生生まれてから死ぬまで圧縮した回想だとか聞いた事あるけど。
走馬燈、始まってすぐ終了とかそれはそれで簡便よ、と言うかせっかくオバロなんだからいろいろ楽しみたいYO!!
あと、はよ行かんと村人がそれだけ死ぬからね!私は多分カルマ値+50くらい、あるから助けに行くぜー!
バッとモモンガさんに敬礼をしたあと、速攻全力ダッシュをきめる。
「ヴォオオ(ノ・ω・)ノオオオォォォ-!!!(いって来ます!いてもうたるわ法国のあほどもー)」
「……えっ?」
おっと、人語がしゃべれねぇや、雄叫びしか出やしねぇ
唖然とする、モモンガさんを放置してレッツゴー私
タンクはあとからアルべドさん来るしだいじょーぶだいじょーぶ。
あと100レベルのオーバーロードをまともに傷つけられる奴なんてナザリックの連中かドラゴンロードくらいしかいねーよ。
「ヴォオオオオオォォォ-!!!」
なんだあれは
なんだあれは
なんだあれは!!
それは昨日までと変わらないくそったれな作業の一環でしかなかった。
罪もない村人達を、自分達の掲げる正義とうなの独善で皆殺しにする、そんなくそったれの仕事だ。
大を生かすための、小なる犠牲、そうする事で結果的に人類全体にとってはプラスになるそんな善行
まったくクソッタレな仕事だ、どんな綺麗事で飾ろうと自分の手が血まみれなのは変わらない
本国の高司祭達は一言二言程度に心にもない遠まわしの褒め言葉を下さるだろうが
六大神はきっと許しはすまい、死後は死の神スルシャーナが治める冥府の中でも最も罪深き者の地の獄行きは免れまい。
心を凍らせ殺しを作業と割り切らなければ耐えられない。
そんな憂鬱な作業が始まってしばらく
死んだ目で遠くを見た彼、エリオンの視界に異常な影が映った。
最初は小さな人影であったが、それはみるみる内にと言うのもおこがましい速度で大きくなる。
大きい、2mどころではない、おそらく4mはあろうかという巨体の戦士、その相貌は骸骨のそれである。
生者ではありえず、そして圧倒的な存在感は幻覚でも何でもない実在する存在だと証明している。
悪夢のような姿にエリオンは思った、ああ、死の神の使いが迎えに来たのだと。
目前に迫る死の使いを目に、次の瞬間、彼の意識は途絶えた。
「い、いやだー」
「死にたくない!」
「神よ!」
手足が千切れ飛び、血しぶきが盛大に舞い上がり、そんな阿鼻叫喚な悲鳴がそこかしこに響き渡る。
BGMとしては大変テンションの下がるあれそれ、だがそれを止める気はない。
騎士さん達よ、今まで何人の人がそうやって命乞いをしたと思っているのかね?
君等は殺す仕事をしているんだから生き死ににかかわるのは不思議じゃないさ
でも、ここ最近のうちに殺してきたのは、この割と無常な世界を必死子いて生きていた村人だよね?
私は正義の味方じゃないし、博愛主義者の聖者でもないが一言言おう。
「ヴォオオ(ノ・ω・)ノオオオォォォ-!!(だが許さん!!)」
これは今迄、なぶり殺しにされた村人の分!
これはエンリの父の分!
これはエンリのかーちゃんの分!!
これは両親を失ったネムの分!!
そしてこれは私のなんかノリによる怒りの分だ!!
シールドバッシュ的サムシングをずばんずばんと帝国の恰好をしたスレイン国の騎士、長いので略してスレ氏共に叩き込む。
すぐには殺さんぞー、じわりじわりとなぶり殺しにしてくれるわ!!
村人達の無念を知るがよいわ!!
あ、べりゅーす隊長(笑)は今は生かしておく、ゲス野郎なので脅せばサクサク色んな情報を吐いてくれるだろうしね!!
まぁ、大した情報は持っとらんだろうがな
あとロンデス・ぐらっぷらーだったっけか?。実質隊長の彼も生かしておくか、素直に情報は話さんだろうけどモモンガさんの支配とか精神操作の前には無力だろうしな。
そいやそいやと、命乞いをするスレ氏共ににケツバッシュを叩き込む度に人がポンポンと宙を舞う、逃げる奴は足ちょんぱである。
足をまるっと切られて取れた連中は、ほっとけば出血多量で死ぬだろう、くびちょんぱではないから死んだらゾンビになるな、たぶん。
デスナイトの能力ってかなりえげつない。
残酷ですね、そうですね、でもあんでっとだから精神的に影響がないぜ!!
まじ人間辞めちゃったね、モモンガさんの気持ちがちょっとわかるよ、まぁ、理性的にモラルは保ちたいものですが。
「そこまでだ、デスナイト」
ケツバッシュに熱中し時間を忘れていると。いつの間にか空にモモンガさんとガチフルアーマーのアルべドが浮いていた。
モモンガさんはちょっとやそっとの事ならスルーしてくれるけど、アルべドは洒落が通じないので即振り返ってモモンガさんに膝を着いて礼のポーズをとる。
いや、正直正式な礼儀作法なんか知りませんが、アニメとかゲームとかの真似で礼っぽい感じにしてるのです。
後はモモンガさんが話を回してくれるだろう。
一仕事終えた事に私はすがすがしい気分になった、背景は邪悪な魔導士と暗黒騎士とアンデットバーサーカーと死屍累々の地獄絵図だけどね。
モモンガさんは原作通り、あれよあれよという間に交渉を成立させて人の良さそうな村長の家に行ってしまった。
法国の連中はヘロヘロになりながら開放された、割と死人は少ない、。
ほら、死体よりも傷病兵の方が軍にとっては足枷になるそうだから、ちょっと手加減してみました。
隊長と副隊長なのはいつの間にか姿が消えてた。たぶん、エイトエッジアサシンとかいうナザリックの影の仕事人な人達が回収したんじゃないかと思う。
ふへー、さて、これからどうしようね、ぼへーと農村を見渡す。
改めて思うと背が高いなデスナイト、モモンガさんからして2mくらいの背丈の骸骨だけどそのモモンガさんよりもでかい。
何処かのアッパーカットで滝を真っ二つにするムエタイチャンピオンよりもでかいもんなぁ。
おかげで遠くまでよく見える、すげぇ新鮮だわ。
ボーっとしていると村人たちが泣きながら死体を集めていた。
縁者の死体に泣き縋る女性の姿も見える、人間だった頃であれば、何とも言えな欝々とした気分になっただろうが
現在では、何も内側から湧き上がってくる感情がない、アンデッドの精神安定効果とは別の、種族的な共感性の欠如だろう、此れもモモンガさんが書籍とかで経験していたな。
ただ、元人間の理性としては、哀れで可愛そうだと思う、感情は伴わなくとも。
んーんー、手伝っても良いが、私の様なデカこわアンデッドとか近付かれたら怖くて逃げるだろ。
ヴォ―とかしか喋れぬ我が身がちょっと憎い、そう言えば口唇虫って発声用のアイテム(?)だったかがあった気がする、モモンガさん用意してくれんかなぁ。
/がぜふ
「あちらのアンデッドは?」
暇に飽かせて花を摘んで墓にお供えをしているといつの間にかガゼフ一党が来てた。
なんとなくモモンガさん、私が抱えた花束を見てポカーンとしてる様に見える、嫉妬マスクで顔は見えないんだけどね。