なんか気づいたら人外に転生していた件について 作:神坂真之介
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◆冒頭のばとーるぷろろーぐ
アゼルリシアの中腹、雪が厚く積り吹雪荒れる白い雪原に一つのドラマがあった。
真っ白なキャンバスに佇む傷ついた戦鎧に身を包んだ一人の人間の男の姿が一つ、身の丈2mに届こうかという体格は破損した鎧越しに見てすら分厚い筋肉の存在を感じさせている。
アゼルリシア山脈の肌を指す冷気は容易く温血生物の命を奪うが、男の体は生命に満ち、放つ覇気は揺らめく熱気すら立ち登らせていた。
吹き付ける冷気を受けてなお剣を備えた益荒男は刃を構えて微動だにしない、一対の剣のような佇まいには些かの隙も無く、兜の奥のその瞳には一点の曇りもない。
叩き付ける吹雪が一層の濃度をました、次の瞬間、視界を覆う真っ白な吹雪の向こう側に巨大なうねりが生まれた、ドン、ドン、ドン!と重たい音が断続的に迫り、眼前にあった四方の雪が爆発的にはじけ飛ぶ、そして白い雪崩を突き破ってそれが姿を現す。
ゴォッと生物が挙げたとは思えない重厚な雄たけびを上げて現れるそれには。棘状のとさかを無数に生やした頭部、白い体表には無数の分厚い鱗、縦に割けた青い獣の瞳孔、そして大きく開けた顎には無数の鋭利な牙歯が並んでいた。
男と対比する事、体格差四倍強、それは単純概算で8mを超える超大型の……ドラゴンだった。
雄叫びに意味は無くそこには苛烈な激情と憤怒に溢れている、怒涛の勢いで長い首が伸び、男に向かい顎が開く、対して男は左に迅速な一歩、続けて右に数歩とさらに高速の体重移動。回避におけるフェイントである。
一歩目の回避運動に反射的に追随した竜の顎は空を噛み砕く、しかし、そこでは終わらない、顎に続き男の身の丈にも劣らない竜の剛腕が左右から迫る、右に避けようと左に避けようとも逃がさぬと言わんばかりの剛撃。
それに対しても男は怯まない、急激に迫るそれに避けるでなし退くでもなく逆に前に向かって二歩、三歩と駆ける。
「――ハァッ!」
短い呼気と共にアスリートが高跳びをする様に背面を向けての跳躍、まるで竜の剛腕に纏わり着くようにその上を紙一重で飛び越える。
通り過ぎる剛腕に置き土産を残しながら、軽い受け身をとっての前転、くるりと衝撃を逃して姿勢を即座に立て直す。
雪原に足を深く取られないための処置、一瞬の隙さえもこの場では致命的であることを痛いほどに理解しているがためだ。先ほどより途切れること無く、張り巡らされた男の武技【可能性知覚】は間断なく攻める竜の猛攻を示し続けている。
激しい突進で雪をまき散らしながらも荒々しく竜が振り返る、冷ややかに青みがかった白い体表にはよく見れば無数の赤い切り傷と血のしずくが滴り落ちる、その目には隠し切れない怒りがにじみ出ていた。
『――矮小な下等生物如きに俺が痛みを感じるとは――なんという屈辱か!』
その言葉は怒声でありさらに言えば怒声よりも既に咆哮でもあった。竜の咆哮には魔力が宿る。幾多の生命を縛る恐れを抱かずにはいられないそれを、男は剣を構えなおす動作と共に
「その程度の傷、戦士ならば茶飯事だ」
『俺を傷つけられるモノ等、同族以外に居るものか』
「――狭量だな、世界は広いぞ最強種」
『ほざいたな小僧!!』
怒り心頭の竜は、男の煽りに冷静さを欠いていた。それ故に着実にダメージが積み重なってゆく、手足の先から上腕部、そして翼の付け根にと、付けられた傷跡はいまだ致命には程遠いが確実にその動きを鈍化させ、緩やかに竜を敗北へと近づけてゆく。
生物として圧倒的に人族を凌駕するドラゴンだが、それでも血を流しすぎればその動きは鈍くなる、傷が増えればそれだけ動きにも影響が出る。痛みは思考を鈍らせ、怒りは選択肢を狭める。
傲慢にして高いプライドを持つドラゴンは得てして挑発行為に耐性が無い。怒りに目が眩めば、普通であれば気付くことも気付かなくなる。出来ていたことも場合によっては精度を失う。小賢しいというなかれ、勝負の世界は舌戦すらも利用するのだ。
そも両者の戦いは半刻(一時間)にも及んで居り、その戦いは決して一方的なものでは無かった。
竜の放つ一撃、一撃が男にとっては深刻な破壊力を秘めており、直撃すれば無事で済むのは難しい、それを避け続ける事は並大抵のことではない、真新しかったミスリルの
例え相手が虚実も知らぬ直線的な戦い方しかできないのだとしても命を容易く刈り取るそれは確実に男の方の精神を削り取っている。
互いの勝利と敗北はコインの裏表の様にくるくると巡り、そして確実にその確定の瞬間が近付いていた。
剣刃爪牙が打ち合う事、二十と数合、大勝負を先に仕掛けたのは竜の方であった。
急がねばならない程に追い詰められていたわけではない、単純に思うにならない戦いの流れに竜の側が痺れを切らしたというのが実情だ。それは最後の最後で竜の側が下手を打ったと言う事になる。
竜の体表に白い魔力の流れがうっすらと魔力の光となって浮き出ている、空気の流れがその口腔に集中し、注意深くよく見る事が出来れば竜の胸元がわずかに蠕動している事が見て取れる、肺に空気と共に大気中の魔法的要素を取り込み、竜血に内在する魔力が共振反応を起こしているのだ。それはすなわち―――
破壊力はもちろんの事ながらその射程、範囲、放射速度に至るまで人族の使う魔法(第4位階辺りまでで想定)でも足元にも及ばない性能を誇っている。一度放たれれば、男には耐える事はもちろん回避する事すら至難だろう。
吸い込む動作が生む隙も一瞬しか無い、オリハルコンクラスの冒険者のフルパーティ(六人編成)が吐息一つで全滅したというのは良く聞く話だ。
だが此処で一つの疑問がわくのではないだろうか、そもそも、もっと早くからそれを使っていればこの戦いに竜が勝利したのではないか?……と。
この男の
―――――<武技【流水加速】>
瞬間、男の耳から音が消える、肌に感じる空気が濃い水気の様に纏わりついて感じられ、全ての者の動きがゆっくりと流れていく。
―――――<武技【急所感知】>
鋭敏化した感覚が吐息の為に膨らんだ、竜の喉元を捕らえる、確かにそこは多くの生物にとってもっとも脆く致命的な部位である。
既に発動中であった【可能性知覚】に肉体強化の武技をさらに重ねて、鈍い世界を駆け足の速度で全力で駆ける。
竜の口腔はいまだ開かない、ただ、近付くほどにその青い瞳が大きく見開かれてゆくのが判る。
借り物のアダマンタイトの剣を刺突の為に腰溜めに構える
加我の距離からタイミングを計る、足腰に力を入れ大地を蹴り上げる力を、腰を捻る運動に乗せ、背筋へと繋げる。
既に、此処は自身の領域、あとは己の身を一本の槍と見立て――――。
『――――勝負あり、其処まで』
◆たいけんばんしゅうりょー!
はい其処までー、
なんかもー本当に大怪我しそうだったし、君達本気出し過ぎじゃね?一応これ親善試合的なあれって覚えてますか?なんか忘れてませんか二人とも。
『何故止めた、へジンマール!』
がるがる怒るトラ公くん111さい、やっぱドラゴンだけあってプライドが高いんだろうね。
後、私に向かって叫ぶせいで
「言わねばわからんか、トランジェリット?」
『―――っ』
止めなかったら負けてたよね?というかむしろ死んでたよね?
そもそも、開幕
「すまないなガゼフ、身内の不始末に付き合わせて」
「いやなに、貴方には世話になってばかりだ、この位の骨折り程度なんとも無い」
さて、何故現状のような状態になったのかを説明しよう、話せば長くなるのだが……。
→アゼルリシアの麓に数年ぶりに雪が積もたよ!
→里帰りだ!
→とりあえずドルドマの所に挨拶に行くか!
→まだ仕官してないガゼフが傭兵の護衛仕事で偶然フィオ・ジュラに!
→お、久しぶりだな、一杯やる?いーねー(ドワーフs’)
→トランジェリット襲来、下等生物共、俺に捧げものをする権利をやろう
→やあ(私)
→アィエエエ!?へジンマール!?ナンデ、へジンマールナンデ!?
→俺は悪くねぇ!弱い奴が悪い!(トラ公)
→ほぉ?弱くなければいいんだな?(ガゼフ/義憤)
→絶対に負けたりしない、勝ったなガハハ!(トラ公)
→ガゼフには勝てなかったよ……(←今ここ)
……大体こんな感じになる。
意外と短い様な長い様な、まあともあれ、トラ公の襲撃にフィオジュラの砦は結構な被害を受けてそれに腹を立てたドワーフと一緒に、対ドラゴン装備作ってガゼフに装備させてトラ公を凹ませたのが現状な訳だ。
トランジェリットの実力はある程度把握して居たし、ガゼフの方も割と定期的に接触していたんで、二人の実力差はそうないと思ってたが、不測の事態は何処にでもある。
流石に最重要人物である原作キャラのガゼフを死なせる訳にはいかんし、全力でやったよ、帝国魔法学院の
もともと、身内の何頭かは味方に引き入れたいと思っていたので、これはこれで良いタイミングだと思ったのもある。
私が凹ませても同じドラゴン同士なので今一つ説得力がないが、下等種族と下に見ている人族に凹まされれば価値観を破壊できるだろう、そのショックを突いて洗の……もとい、調きょ……もとい、教育して新しい価値観を馴染ませるのだ。
父上殿は無理だ、人間でもそうだがある程度年を取って価値観が固定されるとそれをひっくり返すのは凄まじい労力が居る、今までもそれなりに意識改革しようとしたが、あの亭主関白思考は70、80年代の団塊世代並みに頭が固い、単に私のコミュ力が足りないだけかもしれんけど、現状では時間も足りない。諦めて時が来れば力技で何とか、だ。……何とかなる様に実力つけんと。
まぁ、そいう思考はともあれ今は洗脳の時間だ!
「トランジェリット、約束は約束だ、私が立ち会った以上、破る事は許さん」
「くそぉぉ……」
「勝鬨じゃぁぁぁぁ!」
「祝い酒じゃーっ!!」
単にドワーフ達は酒が飲みたいだけの様な気がするが。
酒にべろんべろん酔わせて、現代日本人の礼儀作法を刷り込んでくれるわ!!
・後日のとある会話
『おい、人間』
「なんだ、トランジェリット殿」
『……お前の名を教えろ』
「ガゼフ・ストロノーフだ。」
『ガゼフ……ガゼフか』
「そうだ」
『おい、お前は俺に勝った奴だ』
「……?」
『俺がお前を倒すまで、俺と……へジンマールの奴以外に負ける事は許さん』
「っふ、わかった、確約は出来ないが肝に銘じよう」
とかなんとか。
※8mは超大型:D&D概算。
◆キャラクター裏データ
/トランジェリット
:オラサ―ダルクの子供の一頭、今作では生まれながらに各年齢段階毎のドラゴンレベルがオートカンストするという竜族の天才児、天才だけど
バーバリアンのクラスにある激怒というスキルの所為で直ぐに冷静な判断力を失う、代わりに爆発的な攻撃力を得るのだが今の所、それが裏目に出てる。
後日、帝都に出没するようになる。
ドラゴン版ツンデレ系ブレイン。
ところで実は雌だという設定を考えて見たが、オーバーロードに萌キャラはモモンガ先生しかいらないと気がついて辞めた。
/ガゼフ・ストロノーフ(二十代前半)
他/レベル5
:どっかの白竜の所業で、すでに原作レベルを突破してしまった元単位の人、白竜の余計な発言の所為でレンジャーを習得してしまっている。ちなみに、レベルでは同格近くても、総合的には単独では優遇処置の多いドラゴンであるトラ公には勝てないのだが、単純に戦闘経験が圧倒的な事と、対竜経験の豊富さに加え、へジンマールが依怙贔屓して装備を整えたので今回ほぼ冷気完全耐性気味で戦っており、トラ公にとっては割と酷い不利な戦闘だった。このガゼフは無数の武技を使えるがガゼフの代表的な武技はまだ開発中で使えないのでちょっと残念キャラ。ところで
第二話プロローグ最初の方だけ投稿だよ
書きかけの他の話を書き終わったら、続きかくと思うけど、期待はしないでね!