玉城デニー知事がきのう安倍晋三首相と初めて会談した。4カ月余りも対話を拒まれた翁長雄志前知事の時とは違って、就任から9日目の会談である。

 冒頭、玉城氏は米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設について「選挙で新基地建設は認められないという民意が改めて示された」と述べ、新基地に反対する意思を伝えた。

 これに対し安倍氏は移設を進める「政府の立場は変わらない」と語り、対話は平行線に終わった。

 今回、政府が早期会談に応じたのは、翁長氏を無視し続けたことに対する県民の批判の根強さや、14日の豊見城市長選、21日の那覇市長選への影響を考慮し低姿勢をアピールする必要があったからだ。

 安倍氏は「戦後70年たってなお、米軍基地の多くが沖縄に集中し大きな負担を担ってもらっている」とした上で、「この現状は到底是認できるものではない」と語った。「県民の気持ちに寄り添いながら負担軽減に向け一つ一つ着実に結果を出していきたい」とも強調した。

 翁長氏の県民葬で菅義偉官房長官が代読した首相の追悼の辞と同じ表現を使って説明したのである。菅氏の追悼の辞に対し、会場のあちこちから「うそつけ」などと激しい怒声が飛んだ、その事実を安倍氏は知った上で使ったのだろうか。 

 言葉だけの丁寧な対応はいらない。県民の沖縄戦体験や米軍統治下の体験に安倍氏自身が向き合い、知事選で示された民意に謙虚であることが出発点であり、それなくして対話は成立しない。

■    ■

 玉城氏は安倍政権が支援する候補に8万票を超える大差で勝利した。

 しかし政府は知事選で連続して示された新基地建設反対の民意には背を向け、「辺野古が唯一」という主張を何の説明もなく繰り返すだけである。

 工事を強行し既成事実を積み上げれば、「あきらめ感」が広がると考えているかもしれないが、今度の知事選が突き付けたのは安倍政権の基地政策に対する明確なノーの意思だ。

 豊見城と那覇市長選終了後、法的対抗措置に踏み切り、工事を強行しようと考えているのなら、法律を盾にした民主主義の破壊と言わざるを得ない。

 むしろ辺野古に固執することが、今後の日米安保体制に禍根を残すことになるだろう。

■    ■

 日米安保のための基地なのに、なぜ沖縄だけが負担を背負わなければならないのか。

 会談で玉城氏は「安保の負担は全国で担うべきであり、早急に話し合いの場を設けてほしい」と要請した。

 今回の会談が単なる政治的演出でないというのなら、安倍氏が言う「到底是認できない」現状を変えるための実質的対話を進めるべきだ。普天間の危険性除去が大切というのなら、安倍氏が仲井真弘多元知事と約束した5年以内閉鎖を優先すべきだ。

 新しい対話環境をつくりだすのは政府の義務であり、対話による解決しか道はない。