シャルティアが精神支配されたので星に願ったら、うぇぶ版シャルティアになったでござる   作:須達龍也
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レトロアドベンチャーゲームのように、選択肢一個の間違いがサドンデスな中
フォーサイトは生き残ることができるか!?


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「なるほど……それがお前たちの決断か。よく分かった。本当にくだらないことを聞いた。許してくれ」

 

 

 

 ああ、本当にくだらない。

 

 悪くなった気分を隠すのも億劫だった。

 

 その後に請われた、爺さんからの模擬戦の依頼も、ある種の気分転換になるかと受けたが、あまり気分が晴れることはなかった。…まあ、予想通りではあったが。

 さて、こう言ってはなんだが、他のチームはどうでもいいか。

 シャルティアの言っていた…アルシェという娘と、あとはまあそのチームのメンバーにはもう一度確認しておくか。

 …と思っていたら、向こうからそのアルシェのチームのリーダーがやって来た。

「モモンさん、一手御教授頂いてもいいでしょうか? もちろん、老公とは違い勝負って意味ではないです」

「私はあまり教えるのは向いていないと思っているが、軽く手合わせをするくらいなら構わんよ」

 チームのリーダーが手合わせをすると知って、アルシェを含むチームのメンバーもやってきていた。…というか、あの娘がアルシェでいいんだよな? エルフともハーフエルフとも聞いていないから、消去法であの娘がアルシェのはずだ。

 

 …でも、シャルティアだからなあ…

 

 どうしても一抹の不安が隠せない。名前を聞くのもなんか、ナンパっぽくてできないしな。

「ふむ、双剣か。私と一緒だな」

「いやいや、そのごっつい剣と一緒にするのは無理があるでしょう」

 向こうはスピードと手数で勝負のフェンサーと言ったところか。ちらりと他のメンバーを伺うと、後はマジックキャスターにプリースト、それにレンジャーと言ったところかな。なかなかにバランスの取れたパーティと言えるだろう。…ハムスケの試験相手には向かないな。

「さて、先ほどのご老人との戦いでは手を出さなかったが、今回は少しは攻撃させてもらうとするかな」

 ビュッと手に持った杖を振るって、そう言った。

「ははは、ヘッケラン、死ぬんじゃないわよ」

 ハーフエルフの娘がカラカラと笑いながら、そう野次っていた。

「少々の怪我程度でしたら、私が癒しますので安心してやられて下さい」

 神官の男も、楽しそうにそう声をかけていた。

「イミーナもロバーもうるせえよ」

「いい勝負を期待している」

「アルシェの期待が一番きついわ」

 ふむ、名前が確認できたのは幸いだった。やはり予想通りあの娘がアルシェで間違いないようだ。

 

「では、始めるとするか」

 

 

 

 

 

「はぁはぁ…ありがとう…ございました」

「ふむ、これで終わりでいいのかね?」

「はぁはぁ…はい。本当に…ありがとうございま…した」

 たったの三回…それだけの手合わせで、俺は立ち上がれないくらいに疲労していた。

 最初の一回は、どうやってやられたのか、かろうじてわかるくらいにあっさりと、あっという間に転がされた。

 だが、その一回目が一番精神的には楽だった。二回目と三回目は、あれは寸止め地獄とでも呼ぶべきものだった。

 こちらの攻撃の合間合間に、気付くとピタリと触れるか触れないかというところで杖の先端が寸止めされていた。

 攻撃をし続けることによる肉体的疲労と、何度も何度もやられていたということを知らされることによる精神的疲労で、起き上がることができなくなっていた。

 

 強いことはわかっていたし、差があることは知っていたが、これほどか…

 

「ヘッケラン、大丈夫?」

 アルシェがそう言って手ぬぐいを差し出してくれた。

「大丈夫よアルシェ、攻撃は当てられなかったんだから、ノーダメージよ」

 イミーナが何がおかしいのか、ケラケラと笑ってやがる。

「まあ、ただの疲労ですから、治癒魔法は必要ないですね」

「うるせーよ、すまんな、アルシェ」

 とりあえず身体を起こして、アルシェから手ぬぐいを受け取る。ホント、優しいのはアルシェだけだ。

 

「ふむ、これを聞くのはマナー違反になるかもしれないが、聞いてもいいかね?」

 

 モモンさんが言いづらそうにそう声をかけてきた。

「なんでも聞いてくれていいですよ。まあ、答えるかどうかはわかりませんがね」

 気楽に聞いてくれということを示すように、そう軽く答えた。

「では、お言葉に甘えて。君たちは何故金が必要なのかね?」

 モモンさんの質問は、最初に会った時に聞いてきたものと同種のものだった。俺はずいぶん其処に引っかかるんだなと妙に引っかかった。

「ちょっとうちのチームのプライベートなところに引っかかるんで、詳しくは言えないんだが…まあ、仲間と、家族の為にってところかな」

 アルシェは俺たちの仲間であり、俺たち全員の妹みたいなもんだ。

「ふむ、そうか。…ただ、何度も繰り返して申し訳ないが、それは君たちの命に釣り合うだけのものなのか?」

 さっきと同じ言葉。だが、さすがに二回も言われると、簡単には流せない。

 

「モモンさん、あんたはこの件、そんなにヤバイ案件だと思っているんですか?」

 

 モモンさんの質問は、俺には…関わったら死ぬが、それでいいのか?…そういう風に聞こえた。

「…そうだな。確かなことはわからんが、私の勘ではそうだと思っている」

 俺の疑問に、はっきりとそう肯定した。

 勘という不確かなものではあるが、何と言ってもアダマンタイトまで上り詰めたモモンさんの勘だ。恐ろしく確度の高い情報と言っても過言ではないだろう。

「…まいったな。依頼を受ける前に聞いておきたかったな」

 さすがに前金を貰っておいて、やっぱりやめますっていうのは通らない。

「…そうだな。今更言っても仕方のないことではあったな」

 モモンさんの方も、さてどうしたものかと考え込んでくれている。

「虎穴に入らずんば虎子を得ずという言葉があるが、私はでかい虎が中にいると思っている」

 未開拓の遺跡…ありえない話ではなかった。

「虎に出くわさないようには、どうしたらいいですかねえ」

 

「入らないのが一番いいんだが、それは無理なんだよな。だったら…」

 

「だったら…」

 

 

 

「虎の尾を踏まない。できるだけ虎の怒りを買わないようにするしかないな」




アインズ様攻略法、わからないなら、モモンさんに聞けばいいじゃないw






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