​インターネットは鍵のかかった部屋になる

bar bossa店主・林伸次さんは、cakesの姉妹サイトのnoteでも記事を書いています。そちらは完全に有料。閉じられた世界なのですが、林さんはこれからはそういった閉じられたインターネットが主流になると考えているようです。その理由はなんなのでしょうか。

noteでも毎日記事を書いています

いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

bar bossaが取り引きしているワインのインポーターさんで、小さくて個人経営なのだけど、趣味の良いワインを精力的に輸入しているところがあるんですね。そちらは、たくさん高級ワインも扱っているのですが、bar bossaはそういうのには手を出せなくて、あるとき「なんだかいつも安いワインばかりですいませんね」みたいなことを伝えたんですね。

そしたら、「いえいえ、全然そんなことないですよ。ボッサさんのように、お手頃なワインを毎月毎月同じくらいの量で10年以上ずっと買い続けてくれるお店が一番助かるんです」と言われました。

確かに高級レストランがたまに10万円20万円と大枚をはたいて、高級ワインだけをゴソっと買っていくのは、儲かるには儲かるのでしょうが、またいつか買ってもらうために、その高級ワインをずっと在庫しなきゃいけないから、bar bossaのような「少額だけど、ずっと毎月毎月、10年以上に渡って買い続けるお店」の方が助かるんでしょうね。

僕、このcakesの姉妹サイトのnoteで「定期購読マガジン」というのをやっているのですが、先日、購読者が800人をこえたんですね。内容は僕の毎日の日記と、ちょっと思いついたアイディアやあまり表では書けないようなコラムを書いています。毎日更新で一ヶ月300円なので、1日10円だから、まあ買ってくれる人いるかなというつもりで始めたのですが、800人をこえたというわけです。定期購読マガジンは手数料などで20%引かれるので、800人で19万2千円が僕の口座に毎月振り込まれます。

おかげさまで、色んな原稿仕事をいただいたり、対談にゲストで呼ばれたり、取材を受けたりとしているのですが、そういう仕事って単発のものが多いし、その時々に何を話すかがんばって考えたりアイディアを絞り出してやっと書き上げたりって感じなんですね。

それよりも、定期購読者がたくさんいる状況って本当にやりやすいなあって思うんです。みなさん毎日読んでくれている方たちなので、「僕は渋谷で21年間バーを経営しているのですが」っていういつもの前置きを書かなくて良いし、何を書いても面白がってくれるんです。

noteで定期購読マガジンを始めた理由

この「定期購読マガジン」をやり始めた経緯は色々とあるのですが、一番大きいのは「僕の記事を最初から批判的な目で読もうとしている人にわざわざ書きたくない」っていうものです。

「アンチ」というわけではないのですが、僕のアカウントをフォローしてくれているのに、僕の文章の「あら探し」をしてやろうとずっと待っている人っているんです。あるいは結構バズった時はたくさんの人に読まれるから、必ず「書いてあることに納得しない人」というのが出てきて、ひどいコメントが飛んでくるんです。

cakesのような場所は、僕も原稿料をもらっているのでそういうのは仕方ないなとは思うのですが、noteで毎日無料で書いているのに、どうしてそんな「僕に対して否定的な人たち」のために書かなきゃいけないんだろうってずっと気になってまして、「お金を払ってくれる人たちだけ」に届けようと思い、「定期購読マガジン」ということになりました。

インターネットって本当に素晴らしくて、誰でも自由に発言してたくさんの人に意見を届けられるようになりましたよね。面白い記事を書けば、全くの無名の人でも「たくさんシェア」されて、何万人にも読まれることは夢でもなんでもありません。

でも逆に、「便所の落書き」と表現されますが、本当にひどい言葉もとびかっていますよね。僕はこの「定期購読マガジン」を始めて気がついたのは、インターネットはこれからこんな風に「鍵がかかった中だけで語り合える場所」というのがメインになってくるということです。

みなさんも経験あると思うのですが、誹謗中傷が飛んでくると本当に「表現する気持ち」をなくしてしまいますよね。でも、サロンとかコミュニティとか定期購読マガジンといった、「鍵がかかっていて、悪意のある匿名の人は参加できない」という状態になっていると、誹謗中傷はぐっと減ります。

既存のインターネットの場合は広告収入に頼るのが一般でしたよね。でも僕のnoteのように少しでも払っていただいて、でもたくさんの人に参加してもらうと、これで生活が出来るようになる人も出てきます。このnoteの「本当に買ってまで読んでくれる人の割合」ですが、自分で色々と計算してみたところ、フォロワーの5%というのが目安のようです。例えば、あなたのフォロワーの純粋な数が2万人いたとしたら、そのうちの1000人の人が本当にお金を払って買って読んでくれるようです。

「お金を払ってまで読んでくれる方」はまず誹謗中傷のようなコメントは書きません。とても気持ちが安定します。たぶん、これからインターネットは無料の「殺伐とした無法地帯」と有料で「お金やアイディアや繋がりをシェアしあう建設的なコミュニティ」とに分かれていくような気がします。

林さんの定期購読マガジンはこちらです。

林伸次さん、はじめての小説。

ケイクス

この連載について

初回を読む
ワイングラスのむこう側

林伸次

東京・渋谷で16年、カウンターの向こうからバーに集う人たちの姿を見つめてきた、ワインバー「bar bossa(バールボッサ)」の店主・林伸次さん。バーを舞台に交差する人間模様。バーだから漏らしてしまう本音。ずっとカウンターに立ち続けて...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

Lagrangianpoint そう思うほんとに インターネットは鍵のかかった部屋になる| 9分前 replyretweetfavorite

konpyu 800人はすごいわあ 約1時間前 replyretweetfavorite

t_take_uchi インターネットは鍵のかかった部屋になる|林伸次 @bar_bossa | 約1時間前 replyretweetfavorite

feilong “22766” https://t.co/9VvJ5h0D0G 約2時間前 replyretweetfavorite