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『タイキョの瞬間!』で炎上のフジテレビが迎えている「ある局面」

「入管のプロパガンダ番組」と揶揄され

入管の実態

先月末、『入管脱衣所に監視カメラ』(東京新聞・9月24日)という記事が出た。

強制退去を命じられた外国人を収容する茨城県牛久市の「東日本入国管理センター」で、収容者が使うシャワー施設の脱衣所などに監視カメラが設置されていたのだ。

全裸になる場所の撮影に「プライバシーの侵害」との批判が収容者から出ていると知り、私は9月24日の『荒川強啓デイ・キャッチ!』(TBSラジオ)でこのニュースを調べた。

入管センターは「収容者による破壊行為が相次いだため」の抑止策だという。ではなぜ収容者は破壊行為に至ったか。共同通信は「収容期間が長期化したことによるストレス」と伝えた。

産経新聞には次の記載が。

《入管施設をめぐっては最近、収容期間の長期化が進んでおり、自殺や自殺未遂が相次いでいる。》(9月24日)

一気にぞっとする話になってきた。

 

実はその前日、朝日新聞は1面で入管センターの問題を詳しく取り上げていたのだ。

見出しは『外国人の長期収容 急増』(9月23日)

長期化のきっかけを幾つかあげていた。抜粋する。

・東京入国管理局が10年に強制送還しようとしたガーナ国籍の男性(当時45)が飛行機の中で死亡した。男性を「猿ぐつわ」や結束バンドで拘束し、前かがみの姿勢を取らせていたことが問題となり、3年弱は強制送還がなされず、再開後は帰国を拒否する収容者が増えた。

・難民申請をする収容者が増えた。難民申請中は強制送還されないことが知られ、申請する収容者も多くなった。


・施設外での生活を認める「仮放免」の対象者の減少。刑事事件に関与する仮放免者も出たことなどから、法務省は15年から審査を厳格化した。

そして、こちらの朝日にも収容の長期化に伴って自殺者も出ていることが書かれていた。今年4月に9ヵ月間収容されていたインド人男性(当時31)がシャワー室で首をつって自殺。5月にも自殺未遂者が相次いだ(今回、監視カメラが設置された牛久の入管センターで)。

自殺したインド人男性は《家計を助けるため金融会社でも働いたところ、借金を肩代わりする羽目になった。「殺す」と脅され、身を守るために2017年4月、「安全」と聞いた日本へやってきた。》という。

《だが、ビザは短期滞在しか認められない「乗り継ぎ」名目。不法滞在を理由に17年7月、東京入管に収容された。》(朝日新聞9月23日)

9月9日の西日本新聞でも入管の強制退去が特集記事になっていた。以下は収容者の支援活動を続ける牧師さんのコメントである。

《確かに日本の法律に違反したかもしれないが、それぞれの事情を考慮せず、即退去、という考えには違和感がある。人権に国境はないのだから。》

ネット上をざわつかせる

私がこれらの事実をあらためて書くのは、先日フジテレビで『タイキョの瞬間!密着24時 〜出て行ってもらいます!〜』という番組を放送していたからだ(10月6日)。タイキョとは強制退去のことである。

公式サイトには「不法滞在者や、不法占拠など、違法行為や迷惑行為を許さないプロフェッショナルたちの姿を描く緊迫のリアルドキュメント番組です。」とあるが、「入管」関連の記事を調べていた自分からするとかなり違和感のある番組内容だった。

『タイキョの瞬間』番組ロゴ(フジテレビ公式ホームページより)

なぜ不法滞在をしてしまったのかという事情は詳しく明かさずに「凶悪犯人のアジトに突入」するような勇ましいシーンの数々。気になったのは「技能実習生で来日していたがそこからは逃げてきた」という女性がいたことだ。

番組では「不法就労の疑いであなたには帰ってもらいます!」を決めゼリフにしていた。「ルールはルール」「自業自得だ」という感想も当然あるだろう。だがせめて外国人側の言い分も聞きたかった。そこから日本社会のひずみがチラリと見えてきたかもしれない。実際にこんな記事も出た。

『フジ「タイキョの瞬間!」ネット上で問題視の声も』(日刊スポーツWEB 10月7日)

《不法滞在者を摘発する法務省・入国管理局の入国警備官などに密着取材したフジテレビ系「タイキョの瞬間!密着24時 〜出て行ってもらいます!〜」に、ネット上で批判が殺到している。》

《ツイッター上では、「超過滞在になる、不安定な状態で日本に留まざるを得ない背景は知っているのか?」「正規で滞在している外国の方々がみても不快な内容だと思う」といった批判が巻き起こり、抗議活動を呼びかける声もあがっている。》

『タイキョの瞬間!』はどうしてこんなに単純でわかりやすく煽情的な内容になってしまったのだろう。