ドイツ、ノートライン−ヴェストファレン州のハンバッハというところで、ドイツを代表する電力会社RWEが、褐炭の採掘現場を確保するために森の木を伐採しようとした。
RWEはここでの2045年までの採掘許可を所持している。しかも、森はRWE社の社有森だ。このあたりの石炭は地表に露出しているので、森の木を切れば、すぐさま採掘を始められる。採掘が終われば、また植林することも可能だ。
ところが、すでに数年前より過激な環境保護活動家たちが伐採に反対していた。先月から、その反対運動が激化。伐採を妨害するため森を占拠し、木の上に小屋を作って立て篭っていた過激派が、介入した警察を攻撃するなどして戦闘のようになっていたことは、本コラムの9月21日版で書いた。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57609
どさくさの中、小屋の様子を撮影しようと木に登っていたブロガーが15mのところから墜落し、死亡するという事故まで発生した。その後、一応、50余りあった木の上の小屋は撤去されたが、しかし、抵抗運動は止まず、さらに市民まで巻き込んだ。
ドイツ人は森に対する思い入れが深く、「木が切られる」と聞くと、その瞬間に人々の頭にスイッチが入る。それはいいのだが、一方、ドイツが昔からの石炭の産地であることも事実だ。とくに、この辺りは褐炭の埋蔵量が多い。
褐炭というのは質の劣る石炭で燃焼効率が悪く、CO2の排出量がおびただしいが、いずれにしても、この褐炭で鉄が、そして電気が作られ、ドイツの産業が発展した。中でも電力最大手の一つであるRWE社は、産業革命以来、今日まで、ドイツの経済発展の一翼を担ってきたという誇りがある。
ところが、環境派が前々から何を主張しているかというと、石炭火力発電を即刻やめろということだ。彼らに言わせれば、昨今、地球のあちこちで起こる異常気象や、南太平洋の島の海岸線の陥没は、ひとえにCO2のせいなのだ。
確かに現在、ドイツはCO2を排出しすぎている。1kWhの電気を作るために排出するCO2の量は450gで、フランスの10倍近い。ドイツ政府は去年、京都議定書で定めた2020年目標を達成できないという苦渋の宣言をした。
なぜ、CO2が増えてしまったかというと、原発が減り、再エネが増えたから。環境派が絶対に認めたがらない不都合な真実である。