『タイキョの瞬間! 密着24時』(フジテレビ)番組ホームページより
10月6日に放送された『タイキョの瞬間! 密着24時』(フジテレビ)の内容に対して批判の声が強まっている。
有志の弁護士がフジテレビに送った意見書では、『タイキョの瞬間! 密着24時』について、<外国人の人権への配慮が明らかに欠如する一方、入管に批判なく追従し、主張を代弁しただけの、公平性を著しく欠いた番組>(2018年10月9日付朝日新聞デジタル)と痛罵しており、また、ネット上でも放送内容に疑問を呈する声が続々と出てきている。
『タイキョの瞬間! 密着24時』は、番組タイトルの通り「強制退去」をテーマとした番組で、不法滞在者を摘発する東京入国管理局の入国警備官や、成田空港の入国審査官の仕事に密着し、強制送還をめぐる緊迫感溢れる場面をカメラにおさめた番組だ。
この『タイキョの瞬間! 密着24時』に批判が殺到しているのは、日本における外国人を取り巻く問題について説明や配慮がいっさいなされぬまま、彼らを悪者として描いているところにある。
『タイキョの瞬間! 密着24時』でスルーされた問題
ひとつは、外国人技能実習制度をめぐる問題だ。
番組が密着する入国警備官たちは、群馬県のとあるアパートの一室に、近くの工場で不法に就労しているベトナム人が3人いることをつきとめる。内偵の末に彼らは摘発されるのだが、そのなかのひとりが外国人技能実習制度で日本に来た人だった。
その女性は2年前に技能実習生として来日して鹿児島にいたが、2カ月前に逃亡し、群馬の工場で働いていた。技能実習生による無許可の資格外活動は不法就労となり彼女は強制送還となった。
その摘発の瞬間をおさえたカメラには、入国警備官による「逃げたね!?」という尋問に対し、か細い声で「ごめんなさい……」とつぶやく模様がおさめられており、また、その様子のあとには、冷たく突き放すようなナレーションで<この女も強制送還となった>と付け加えられていた。
外国人技能実習制度をめぐる議論についてなにも知らない人が見たら、鹿児島の実習先を逃げ出して群馬で違法就労をするベトナム人の彼女はとんでもない極悪人のようにしか見えないが、もしも番組がその制度の実相を説明していたら、視聴者の受け取り方はかなり違うものとなっていただろう。
外国人技能実習制度は、<我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としております>(厚生労働省ホームページより)と公式には説明されているが、その実態はひどいもので、「現代の奴隷制度」と言われることも多い。