朝日新聞のピロリ関連記事に関して

2017.01.06

2016年11月16日付けの記事「中学生にピロリ除菌 自治体、胃がん予防 副作用懸念も」の内容に一部誤った表現があるため、コメントさせて頂きます。
http://www.asahi.com/articles/ASJBS7GR6JBSULBJ00P.html

記事では斎藤博氏(国立がん研究センター検診研究部長)のコメントとして「除菌する人が増えれば、確率的には重い副作用を発症する人も出てくる可能性が否定できない。感染しているが無症状の『健康な人』への積極的な除菌が、無用な害を与えるおそれがある」とありますが、感染者はすべてヘリコバクター・ピロリ感染症患者であり、内視鏡検査により保険病名として認知されている「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」診断患者は、無症状であっても「健康な人」とは医学的に表現しません。感染症由来のがん対策は感染症対策であり、WHOも胃がん対策として感染検査と除菌を検討するよう勧告しています。また、ヘリコバクター・ピロリ感染は5歳頃までに成立し、年間1000人以上の40歳代までの若年者の胃がん死亡は従来の胃がん検診では防ぐことが出来ず、中学生の除菌によりその予防効果が期待できます。

朝日新聞では、2013年8月19日付けの過去の記事でも同じ斎藤博氏のコメントとして、「胃がん発見の精度は内視鏡の方が高いが、治療の必要がない早期がんを見つけてしまう可能性もある」との誤った内容を掲載し、日本消化器内視鏡学会から訂正が求められ、「治療の必要のない病変はありますが、治療の必要のない“がん”はありません」とする反論が同会のホームページに掲載された経緯があります。

反対意見を掲載することは記事の公平性を保つ上でも重要ですが、医学的・保険的に明らかに誤った内容を掲載することは、読者のミスリードにつながります。我々、予防医療普及協会も正しい医療情報の発信に今後とも努めていきたいと思います。