「サキマではなく、タマキだ。対応に注意を」
米時間9月30日午前8時すぎ。米国務省内で日本メディアに対する取材対応への注意が飛んだ。
「名護市長選と沖縄市長選で勝ったのは、いずれも日本政府推薦の候補者だ。今回も日本政府の予想を信じていた」と話す米国務省の日本担当者は、玉城デニー氏の勝利に率直に驚きを表現。国防総省の日本担当者は「こんな大差になるなんて」と、日本政府への不信感をあらわにした。
国務省は「玉城氏の勝利を祝する」とのコメントを発表したが、今後の対応を決めかねている。玉城氏の父親が元米兵だからだ。
2015年5月。衆院議員だった玉城氏は、翁長雄志知事から託された親書を携え単身、ワシントンを訪れた。米議会に辺野古新基地計画の見直しを訴えるためだ。しかし、米議員らは玉城氏を警戒した。
「ミスター・タマキはアメリカ系沖縄人で父親は元米兵だ。対応が難しい」
後日、面談しなかった理由を本紙に問われたマケイン上院議員(故人)は苦笑しながらそう説明した。
米国では、米兵は国のために戦った「ヒーロー」であり、家族も準じた扱いを受けることが多い。冷遇すれば、米国内に複数ある退役軍人組織の反発を招く恐れもある。
選挙期間中、「新時代沖縄」と訴えた玉城氏は、米国ですでに一つの大きな変化を起こしていた。
沖縄の米軍基地問題を報じてきたニューヨーク・タイムズ紙が、初めて社説で、安倍晋三首相と米軍幹部の責任に言及し、新基地に代わる案を模索する必要性に踏み込んだのだ。
オバマ政権時のホワイトハウス元高官は、玉城氏の大勝について「沖縄人が『名誉日本人』より『沖縄人』を選んだということではないか」「沖縄人の誇りを訴えた翁長氏が沖縄を変えた。誇りが引き継がれた」と解釈してみせた。
一方、辺野古移設の行方については「米国は軌道に乗っている計画は変更しない。見直しのチャンスがあるとすれば、工事が長期停滞した場合ではないか」と予測。その鍵を握る人物として「トランプ政権は2年弱で、大統領補佐官は3人目、国務長官は2人目だが、国防長官はマティス氏1人だけ」と指摘。マティス氏が、方向を目まぐるしく変える船の「イカリ」と説明し、言葉を続けた。
「元海兵隊大将のマティスは簡単には辺野古を手放さない。玉城氏が日米でどう新時代を築くかだ」(知事選取材班)=おわり