「ベター・コール・ソウル」シーズン4半ば、映画監督ギレルモ・デル・トロ氏がTwitterで彼の「ソウル」に関する考えをいくつかツイートして話題になりました。
以下、S4E7の時点で語られた内容なので、そのあたりまでのネタバレありです。未見の方はご注意。
映画監督、脚本家、小説家として様々な傑作を生み出し続けているギレルモ・デル・トロ氏。映画「シェイプ・オブ・ウォーター」でのアカデミー賞（作品賞・監督賞）をはじめ数々の賞を受賞した誰もが認める巨匠です。
デル・トロ氏は「ブレイキング・バッド」放映中からファンを公言していて、「ここ数年僕が観た中で最も優れた脚本は『ブレイキング・バッド』だ」と言っていたり、「ブレイキング・バッド」の神回「オジマンディアス」の監督を「ぜひやりたかった！」と言っていたほど。
そんな彼が「ベター・コール・ソウル」を「ブレイキング・バッド」よりも好きだとツイートしました。
毎度のクソ訳で恐縮ですが、大体こんな感じのことを言っておられるようです。
「ベター・コール・ソウル」新シーズン半ばでのちょっとした考察：僕は「ソウル」が「ブレイキング・バッド」よりもさらに好きだ。他人と違うことを言っちゃう俺、ってつもりじゃなくて、（訳注：「ソウル」は「ブレイキング・バッド」に比べると）明らかな事件は少ないかもしれないけど、精神的な転落をより深く、より痛烈に感じるからだ。
“evident stakes”のもっといい訳があるはずですが力及ばず…。英語マスターヘルプミー…！
ウォルター・ホワイト（ブラックになったけど）の時、僕らは彼の強烈な破滅と変化を見守ったけど、「ソウル」はジミーがささいな、だけど悲痛なつまずきを通じてソウル・グッドマン（悪い方の彼）になっていくのを手に手を取って見せてくれる。(元ツイート)：
このツイートはまたたく間に拡散され、海外ではいくつものエンタメ系サイトで記事になりました。「賛成！」「僕もそう思う」「むしろそう思わない人がいる？」と賛同する人、「いやぁ『ブレイキング・バッド』は超えられないよ」「『ソウル』好きだけど『ブレイキング・バッド』より？どうかなぁ」と異議を唱える人など、反応は様々。
嬉しかったのは「まじで？だったら『ソウル』観るわ」っていう人が何人かいたことです。さすがデル・トロさん影響力スゲー！
このツイートに対して、製作のピーター・グールド氏は「すごく驚いたし光栄だ。デル・トロ氏が観てくれてるなんて！言葉も見つからない」とリプライしていました。すごい嬉しそう…私まで嬉しい…（謎
デル・トロ氏はその後も続けて「ソウル」「ブレイキング・バッド」に関するツイートをしていました。
キムが鍵だな！ (元ツイート)
チャックとの関係においても、ジミーは「助けたつもりになってる人(enabler※)」だった。彼はチャックの凋落を見るのがちょっと楽しかったんだ。どちらの兄弟ももう一方の「転落」を見たがっていた。（訳注：ストーリーが）とてもよく練られている。(元ツイート)
enablerは「助けてあげるつもりでやったことがかえって相手のためにならないようなことをする人。身近な人が悪癖や犯罪などに染まっていくのを黙認ないしは放置している人」だそうです（オンライン辞書アルクより)。OH…。
ジミーが「チャックに病気のままでいてほしい」と感じている部分があるのは何度か表現されてましたね。チャックが入院した時（S1E6「羊飼いの少年」）、チャックの世話がいかに大変かを語るジミーに対し女医さんが「それって援助？妨害かも(Is that helping or enabling?)」と指摘してました。
でもチャックを尊敬していてなんとか認められたい！という気持ちがあるのも本当だから、複雑になるという…。サンドパイパーの件をチャックが一緒に戦ってくれると知った時のジミーの喜びぶりとか、今観るとホント泣けます…。
多くの脚本家は理解しているであろう一つの方程式がある。これが「ブレイキング・バッド」と「ソウル」の違いだと思う。プロットが少ないほど、ストーリーが豊かになる。プロットはリズムで、ストーリーはメロディだ。 (元ツイート)
ちなみに僕はこのふたつは置き換えられないと思ってる。 (元ツイート)
「ベター・コール・ソウル」はテンポが悪いとかストーリーの進み方がトロいとか言われることがありますが、そうやってゆっくり、じっくり描いているからこそジミーの気持ちに寄り添うことができて、話が豊かで深くなるんだと思います。
私個人としては「ブレイキング・バッド」と「ベター・コール・ソウル」どっちが好きか？というと…現時点に限って言えば「ソウル」のほうが好きな気がしますが、いや…。無理…選べない…！（悶絶しながら）
デル・トロさんのツイートに対して、ある人が「『ソウル』は素晴らしいけど『ブレイキング・バッド』との関係がなかったら観ることさえなかったんじゃない？もし彼が今後どうなるか知らなかったら僕らはこんなにもジミーの気持ちに寄り添えただろうか」とリプを送ってたんですが、全くもってそのとおりで、そもそも比べる必要もないかなと。デル・トロさんも「君は100%正しい」「ふたつでひとつの物語なんだ」と返事をしていました。