このところご体調が芳しくない状態の続いておられた佐々淳行さんが亡くなられまして、魂の平安を心より祈念する次第です。

 大変ご自身にもご家族にも知人友人にも厳しい方でありまして、快活なお話を笑いながらされる一方、叱咤激励… と申し上げるにはまあいろいろと踏み込んだお話もたくさん頂戴する感じではございました。

 思い返せば、慶應義塾大学に在学中、佐々さんの授業を取っている間に、ある案件で塾生を集めてほしいと頼まれてから24年に渡るご厚誼を賜ったのは私自身としても幸甚の至りです。穏やかな表情の中にも、世の中の至らぬ点を冷静に見つめ、こうでなければならない日本、それに対して力を尽くせない日本人の体たらくというお話を何度も、何度もされました。「お前は警察組織をもっと理解しろ」とか「新しい時代の警邏について考えを述べろ」などなど、まあ不思議な注文も頂戴しつつ、それでいて、かなり率直に、日本の置かれた現状や安全保障については最後の最後まで明哲で開明的な議論を先導されようとしていました。

 ジャーナリストの藤田正美さんも交えてのネット論壇を作りたいというご希望もあり、BLOGOSで動画をやったり、その後、某支援団体との定期的な会合もご一緒させていただき、佐々さんから見て若い世代はもっと右も左を見た堂々たる真ん中を歩くべきというご意見をいまだ胸に抱いております。

国内海外安全保障なう 第三回 「日本は領土・領海を守れるのか」
https://www.youtube.com/watch?v=LIX1Ina8wl4

 いろんなお話を聞かせていただきましたし、たくさん怒られもしました。まあ、時事問題はことさらご関心を持ち続けられ、それに対して人に言えない率直な評価をお話しいただいて、これはどう咀嚼したものか悩むことも数え切れない回数ありつつ、とはいえ、天下国家日本かくあるべし、一方で、国民の間での議論は口を差し挟むことなく細大漏らさず聞き届けよとのお話は私には大変に重いものでございました。

 ちょっと「安らかにお休みください」と私の口から申し上げるには、なかなか安心して送り出せなかった私らの世代のだらしなさを噛み締める部分はございますが、車椅子のうえで「年相応。老病の老病たる所以だよ」とご自身の病状をも笑い飛ばす佐々さんの心の太さを思い至す次第です。

 「喧嘩師の風格をもっと磨きなさい」「権力者に迎合しない、公平な態度が山本君の唯一の持ち味だ」と、何度も何度も言われまして、なんかこう、佐々さんにとっては至らぬ存在でしか自分はないのだなという反省もいまなお深く感じております。

 ご厚誼を賜り、本当にありがとうございました。


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