どう見ても食べちゃダメそう
いよいよ秋本番ですね!
スポーツの秋、食欲の秋、いろいろありますが、野食クラスタ的にはやっぱり「収穫の秋」。とくに、ぼくは30年以上キノコを偏愛してきているので、秋といえばキノコというイメージが強いです。
今年は例年と比べ8月下旬の降水量が多く、結果として9月に入ってからのキノコの発生量がすごいことになっています。
人生初のマツタケの収穫にも成功し、またその他高級キノコも大量に採れてホクホクしています。毎年こんな感じならいいのに!
ド立派なマツタケ
しかし、美味しいキノコが大量発生しているということは当然、毒キノコもいっぱい出ているということ。
そして今回ぼくは、やらんでいいのに毒キノコに手を出し、痛い目を見るという失態を犯しました。今回はそれをネタに1本書いてみようと思います。
(別に当連載のためにバカをやらかしたのではなくて、あくまでまじめな試食だったということをあらかじめ強調しておきます。だから父さん、そんなに怒らないでくれ……)
マリオのキノコは「めちゃくちゃ美味しい」キノコ?
キノコにあまり詳しくない人に「なんでもいいからキノコ描いてみて」と色鉛筆を渡したら、多くの方はきっと「赤地に白の水玉模様」の入ったキノコを描くと思います。
これはもちろんあの世界的なゲームソフトの影響が大きいわけですが、このデザインのモチーフになったキノコはちゃんとあります。それがこの
きれい
ベニテングタケ。
白と赤だけで構成されたド派手なデザインは、見る人に神秘性や気味悪さを喚起させます。実物は見たことがなくても、写真や絵本で見たことがある人は多いのではないでしょうか。
見るからに毒々しい色合いですが、見た目の通り毒をもっています。
世界的にも毒キノコの代表としてよく知られており、このキノコのせいで「派手なキノコは毒がある」というイメージが完全に定着しています。(実際はそんなこともないのですが)
キノコのことは全然わからないよという人でも、このキノコを見せられ「食べろ」と言われたらきっと全力で拒否するのではないでしょうか。
しかし一方で、このベニテングタケを利用する地域が存在します。
長野県の山間部では、古くからこのベニテングタケを食用にしてきました。現在でも一部地域では好んで食べられていると聞きます。
実はベニテングタケは見た目のわりにそこまで毒性が強くなく、また茹でこぼして利用する、塩漬けにするなど手を加えれば、食用にできるようなのです。(もちろん食用に流通することはないけど)
しかし、茹でこぼしは以前友人が試していたのですが、中毒はしなかったものの味もなく、美味しいものではなかったと聞きました。毒成分と同様、旨味成分も水溶性のため、茹でこぼしや塩漬けによって流出してしまうのは防ぎようがないでしょう。
そのためこれまでは見かけても食指が動くことはなかったのですが、ある日キノコ仲間から届いた1通のLINEが、その意識を変化させてしまうこととなりました。
めっちゃ煽ってくる
「タマゴタケなんか採ってる場合じゃない」と来たよ……
タマゴタケというのは、ベニテングタケと同じテングタケ科に属する、世界的に人気の高い食用キノコ。見た目はベニテングタケに負けず劣らずド派手ですが、味と香りがよく、キノコ狩りの対象としてはトップクラスの人気を誇ります。
たいへんに旨味が強いのでぼくも大好きなのですが、それよりも美味しいとなるとかなりのもの。
ベニテングタケの毒性が弱いとはいえ、一切の毒抜きをせずに食べるのは危ないように思われますが、「少量なら大丈夫」といって食用にしているキノコクラスタは実はけっこういるようです。
前記の長野では「2、3本なら大丈夫」なんていう言い伝えもあるとか。
「少しだけなら大丈夫」というのは個人的には「先っぽだけだから」と同じくらい信用ならない言葉で、すでに「2切れまでなら大丈夫」という魚を食べて社会的に死にかけた経験もあり、完全に死亡フラグの香りがプンプンします。
とはいえ今回は信頼するに足る確実な筋からの情報、試してみる理由には十分なり得ます。
というわけでその翌週、ぼくは最寄りのベニテングタケ発生地に降り立っていました。
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