ただ今集中砲火浴びてるジェンダー論や法学(右側の政治的な理由も相まってるのが気持ち悪いし、理系の偏見で査読英語言うのは周りにも飛び火しそうで迷惑だってのは理解したが)、あといろいろ不信感ためてるであろう政治学あたりに関しては腐敗の疑いが払拭されるような話が全然されてないし、同じ文系でまとめちゃわないで、そのへんの奴らとははっきり線引いて、理系とは違って査読英語至上主義じゃないけど、「まともな人文学」はちゃんとやってるって立場にしたほうが政治的に有利なんじゃないかと思った。
細かい点を指摘しておくと,政治学や社会学は「文系」ではあるが「人文学」ではない.「文系」の学問は大雑把に「人文学」「社会科学」の2通りに分けられることになっており,文学・哲学・歴史学は前者,法学・政治学・社会学・経済学は後者に属するということに,一応はなっている(とはいえ本当に大雑把な分類だし,各国語で呼び方が違っていたりするのでややこしい.cf. 隠岐さや香『文系と理系はなぜ分かれたのか』星海社新書,2018年).
そして法学・政治学に関してだが,色々と特殊な事情があるのじゃ……
まずもって,あの分野では長いこと学士号持ちが一流大学の教授だった.博士号持ちが全然いないと揶揄されまくる文学研究者でも持っている修士号すら持ってなかった.いま憲法学でブイブイいわせてる木村草太先生も最終学位は学士だ.
では質が低いのか,というとそうではなく,むしろ学士号しか持っていないことがエリート法学者の証だった.なにせ東大や京大の法学部(※)である.放っておくと優秀な連中はみな高級官僚やら弁護士やらになってしまうので,優秀な人材には卒業後すぐに助手の職を与える約束をして引き抜き,助手として数年間雇用してそのあいだに本1冊分くらいの分量の論文(当然学内でみっちり審査するので,実質的な博論)を書かせるというルートが確立しており,そして助手論文を書いた連中は20代後半でどこかの大学の法学部助教授になっていった(これは,一時期の外務省キャリアのあいだでは大学中退ほど威信があったことに似ている.大学中退の外交官はそれすなわち大学在学中に外交官試験に受かった俊英ということだったので鼻高々だったのだ).
(※多くの大学では,政治学は法学部で教えられている.cf. anond:20180421135702)
ただしこんな高待遇を受けられるのは年に数人のレベルだし,いやさすがに教授が学士しか持ってないのはありえないでしょという流れになって近年はせめて修士号くらいは獲らせるようになっているらしいので,法学者や政治学者の大半がこんな経歴の持ち主だというわけではない.実際に私の周囲の政治学者はたいてい博士号あるいはそれに相当する経歴(※)を持っている.しかし1980年生まれの木村氏がこのルートを辿っていることからわかるようにこういう経歴の学者は割と最近まで学界に輩出され続けており,しかもなまじ優秀なものだから発言力もそれなりにある.
(※文系の多くでは長いあいだ,「博士課程で必要な単位を取得した上で,博士論文を書かずに退学する」という経歴が「博士課程単位取得退学」として博士号相当の経歴と見做されていた.なぜならかつて博士論文とは中高年の教授たちが自分の学者人生の集大成として仕上げる分厚いものであり,修士を出てからわずか数年で仕上げるものではなかったからだ.ゆえに,同じ「文学部の大学院を出て最終学歴は修士」であっても,博士課程の単位を取得して退学したか否かで文系アカデミアではまるで別物だ.単位取得退学ではない修士は理系のイメージする修士と何ら変わるところはないが,単位取得退学の修士は准教授として採用するに値する学歴だと見做される.ただし近年,文系でも博士号への圧力は強まっており,若手は次々と――かつて大御所が書いていたような超大作とは比較できないレベルだが,しかしなんとか1冊の本になるようなレベルの――博士論文を書いて博士号を取得している.ほんの1年か2年前には,博士号を持っているか取得見込みでないと学振PDに採用されないことになった.逆に言えばそれまでは,「修士号しか持っていない学振PD」が大量に存在したのだ)
なんでこういう話をしたかというと,同じ文系のあいだでも,業績の数え方どころか経歴すらぜんぜん違っていたりするということ.なので,うかつに他分野の学歴とか業績とかdisれないんですわ(まあ,わからずにdisっているアホな文系もいるけどね).私にわかるのも,私の専門分野や私の周囲の人の専門分野や私が関心を持って学術書を読んでいる分野の標準的なキャリアパスや論文作法に過ぎない.私の周囲の文系キャリアパスは別増田(anond:20181008223012)で言われているものとほぼ同じだが,一方では法学部には独自のルートがあったりもし,しかし別の政治学者はロンドンに留学してPh.D.を獲っているわけである.理系でも博士号をなかなか獲らない分野もあるという話だし(anond:20181010122823),一部の分野の標準的なキャリアパスを全体に敷衍するのは本当に危ういんですわ.
加えて言うと,政治学といっても本当に色々あって,政治史とかになるとお前やってること実質歴史学じゃんみたいになるし(扱う対象も研究手法も参考文献の書き方も歴史学の本と区別がつかないが,著者が法学部出身で政治学者を名乗っており政治学者としてポストを得ているので政治学の棚に並べられる学術書というものは常に存在する),データを駆使して統計取って英語論文バリバリ投稿しまくりみたいな分野もある.私は前者については業績の信頼性とかをそれなりに評価できる自信はあるけど,後者に関しては正直言っていることがチンプンカンプンだ.文系の研究者にとって重視されるスキルの1つである語学にしても,ある地域に滞在し現地の新聞を読み漁り現地の国会議員にインタビューして論文を書く人と,国際的な統計を元に数値をはじき出して論文を書く人とでは求められるレベルが全然違ってくる.前者は当然現地語など英語の他にいくつかの言語を習得しないとまともな研究ができないが,後者は別に英語さえできりゃいいでしょという話になる(逆に,前者は数学がわからなくても許されている).
社会学にもこういう内部対立はある.フィールドワークを重んじる人たちと統計取ろうとする人たちの話が噛み合わないとかね(cf. http://synodos.jp/society/19195).何が彼らを結びつけているかというと学問のラベルの他には基礎教養や語彙かな.たとえば,普通の人びとの間に分け入ってフィールドワークをするという似通ったことを一部の社会学者とほぼ全ての人類学者がやっているのだけれど,行為としては似ていても本を書かせると引いてくる古典や先行研究が全然違っていたりする.社会学者のフィールドワーカーは社会学の古典を引き,人類学者は人類学の論文を引く.そして違う古典や文献からは異なる問題意識や噛み合わない学術語彙が生まれてきて,それが2つの学問を別のものにしている.
つまり文系の学問は,単純に学問のラベルでは区切れないのだ.手法としては計量社会学者と経済学者と比較政治学者は似ているが,拠って立つ基盤では微妙に話が食い違い,基礎文献や学術的概念を共有して同じ学科に所属する社会学者たちの間でも,ある者は新宿三丁目に出かけある者は図書館にこもりある者はコンピュータの前で計算ソフトをいじっていたりと,まったく行動に統一性がない(理論物理学と素粒子力学と流体力学を同じ「物理学」というラベルでくくっているのと同じなのではないかと思うが,理系のことはよくわからないので安易な比較はしないでおく).
なので簡単に「あいつらはおかしい,俺たちはまとも」とか言えないですわ.ジェンダー関係でも,フェミニズム理論を追求している人もいれば歴史学者として女性の歴史を追い求める人もいて,フェミニズム的な文学研究といっても,現代の作品における女性のステレオタイプを批判する人もいれば,戦前の女性向けサブカル小説を研究する人や世界各地を飛び回って古文書を丹念に調査して女性の書き込みを集めた人もいるわけで(cf. http://todai-umeet.com/article/35973/),研究手法や問題意識という面でかなり多様なので……色んな分野の論文や学術書を読めば読むほど,そんな雑語り怖すぎてできなくなります.
だからみんなもっと色んな分野の学術書や論文読もうぜ! せっかく日本語で読めるんだから!
id:uturi 学士でも教授になれるという文化に驚いた。/研究方法は分野によって違うだろうけど、その論文が『学術的に正しいと思われるか』はどうやって担保されるのだろう?
第1に.文系にも査読誌はいくらでもありますって何度言えばいいの? このトラバツリーで俺何度も言ってるよね? 査読はしてます,してないからといって無価値ということにはならないだけです,って.何なの? 文字が読めないの? 文章読解能力が欠如してるの?
第2に.自分の頭で考える能力がないの? 論文を批判的に読むことができないの? 査読を通ってさえいれば論文の内容をまるっと信じちゃうの? 馬鹿なの? 死ぬの? 査読があってもダメ論文はダメ論文だし査読がなくても良質な論文は良質な論文,最終的に頼りになるのは己だけだろーが.
id:yujimi-daifuku-2222 良識的な人にも飛び火しているのは気の毒だし不当ですよね。/ただ、これまでオタクを豚に擬えて揶揄したり、普段からnot all manなどと言ってる人達に、貴方達どれだけ真剣に抗議してきましたかとは言わせて下さい。
はぁ?????? 俺はさんざん怒ってきたよ!!!!!! コミケだって夏冬3日間ずつ参加しとるわ!!!!!! 味方を撃ってんじゃねえって言ってんだよ!!!!!!
三浦瑠麗の件。 https://buzzap.jp/news/20180420-lullymiura-law-knowledge/ 東京大学大学院法学政治学研究科 総合法政専攻博士課程を修了し、法学博士を取得しているものの、三浦瑠麗さんは農学部...
ただ今集中砲火浴びてるジェンダー論や法学(右側の政治的な理由も相まってるのが気持ち悪いし、理系の偏見で査読英語言うのは周りにも飛び火しそうで迷惑だってのは理解したが)...
そびえ立つゴミの山を築けば素人はビビって言うこと聞いてくれるだろって調子なわけねなるほど
言ってることはわかるんだけど、公的な資金援助を受ける以上、受ける側が透明性や有用性をアピールする必要があって、無関係の納税者に「お前らもっと勉強しろ」っていうのは、相...
120%同意しかない。げにその通り。 素人勉強しろといきってるのが文系、理系は金がかかるだけになんとか理解してもらおうとプレスリリースや教育に必死である。はやぶさ2号とか涙ぐ...
と、勉強していない人間が申しております。
腹話術長すぎw
(cf. http://synodos.jp/society/19195) 北村紗衣、こいつWezzyなんぞに投稿してるカルト宗教家じゃん
その人はてなの有名人だぞ
社会学は他の学問と比べても分野内の差異が大きすぎるんだよなぁ。 ゲーム理論を援用して数理モデルを構築する者、RやPythonを使って統計モデリングを行う者、 教区簿冊や宗門人別改...
人文学と社会科学か。社会科学のほうが科学なのに怪しさが入り込む余地がある気がしてしまうのも奇妙だが、哲学とかだと論理的な議論はあっても「正しさ」を決めることはできない...
理系でも教授の贔屓やコネはないわけじゃないけど論文数(あるいは引用数)で無能認定する仕組みは馬鹿の排除には有効なんだよ(捏造の動機にもなるけど)。 論文数で無能認定は...
ぶっちゃけ話をすると,私はこれまで「別に査読はなくてもいいだろ」という話を延々としてきたのだが,ブコメやらtwitterやらで文系擁護派の一部の人が「人文系の学問は査読になじま...
文系に査読があるかないかなんて外の世界の人間にはぶっちゃけどうでもいいので むやみに外の世界に殴り込みをかけてこないでくれ 無茶な殴り込みをかけようとしてるやつはちゃんと...
武田邦彦と近藤誠と菊池誠を黙らせてくれればフェミ学者を自浄することも検討しますのでどうぞよろしくお願いします.
知らねーよ俺は別に理系の学会と関係ないし
アホが高学歴に文句垂れるのは昔から 見当違いの愚問が流布されるのは アホの数の方が多いからしょうがない
1991年以降は博士(哲学)、博士(史学)、博士(心理学)、博士(言語学)というようにちゃんと学問分野別になりましたので 博士(文学)で文学に詳しくない人はあんまり居ませんよ...
もちろん「博士(歴史学)」を授与してる大学もあるけど、伝統ある大学では「博士(文学)」をまだ授与してるところも多かったはず。早稲田の文学部は確か今もそうじゃなかったっ...