10月に入って世界の株式市場が変調をきたし始めている。9月までは好調に推移してきた「親米国」の株価指数も軒並み大幅な下落を強いられている。
8月23日付の当コラムで筆者は、当時、大幅な通貨・株価下落に見舞われたトルコの次に同様の危機を迎える可能性が高い国・地域として、①反米的な姿勢を続けるEU(もしくはユーロ圏)と②新興国、の二つを挙げた。そして、どちらに危機が訪れるかを考えるための「カギ」はインドの株価ではないかと指摘した。
そのインドの株価だが、10月に入って下落ペースが加速している。いまや、「反米」的なスタンスからずっとさえないパフォーマンスだった韓国に並びそうな勢いである(図表1)。
このインド株の大幅下落については、インドの一部銀行の粉飾決算や不良債権の過少申告など、個別要因の存在も否定できない。だが、インドと並び、これまで株価のパフォーマンスが良好であったオーストラリア市場も下落局面に入るなど、「親米新興国」の株価も軒並み下げ始めている。
これらの新興国については通貨の下落も続いていることから、通貨危機型の新興国市場の株価下落が今後も継続する可能性も否定できない。
また、このような新興国の株式市場の下落と同時平行で欧州株の下落も加速している(図表2)。従って、前述の「トルコの次はどこか」のシナリオとしては、①と②が同時進行している可能性が高いと考える。
この欧州株と新興国株の大幅下落は以下の2つの要因が同時進行することで実現していると考える。
すなわち、第一点が、トランプ政権の対中国強硬政策で、中国がますます苦境に陥り、トランプ政権が目指す「新たな世界秩序」の実現可能性が高まっているという「期待」の側面。第二点が、米国の金融政策の正常化による金利上昇とマネー(流動性)の収縮という「現実」の側面、である。
欧州、及び新興国の多くが経済・貿易面で中国との相互依存関係を強めてきただけに、トランプ政権の対中強硬政策で「踏み絵」を踏むことを催促されている状況だといえよう。