- メリルリンチの最新レポートによると、多くの親が子育てて最もお金がかかるのは、子どもが成人してからだと考えている —— 79%が成人した子どもに金銭的なサポートをしていて、その総額は年間で5000億ドル(約56兆6000億円)にのぼる。
- これは親が自身の老後に蓄えている金額の2倍だ。
- 家賃といった生活費だけでなく、親は休暇といった子どもの贅沢まで支援している。
- しかし、こうした金銭的なサポートは将来、今度は親を経済的に子どもに依存させるかもしれない。
アメリカでは、子どもを18歳になるまで育てるのに平均で23万ドル(約2600万円)以上かかる —— しかし、その金額は子どもが巣立った後も上がり続ける。事実、メリルリンチの最新レポート『The Financial Journey of Modern Parenting: Joy, Complexity, and Sacrifice』によると、多くの親が子育てて最もお金がかかるのは、子どもが成人してからだと考えている。
メリルリンチが2500人以上の子を持つアメリカ人の親を調査した結果、79%の親が成人した子どもに金銭的なサポートをしていることが分かった —— その総額は年間で5000億ドルにのぼる。レポートによると、これは親が自身の老後に蓄えている金額、2500億ドルの2倍だ。 メリルリンチによると、アメリカには1億7300万人の親がいる。
「感情とお金が絡み合うことで、親は自身の経済的な未来を妥協することになりかねない、金銭的な決断をする危険を冒す」とレポートは指摘している。
また、72%の親は自身の老後の貯金よりも子どもの利益を優先させると言い、63%は子どものためなら自らの経済的な安定を犠牲にすると答えている。レポートによると、その傾向は特にアジア系、ラテン系、アフリカン・アメリカン系の親で顕著だ。
回答者の半数は、貯金を取り崩すと答えた一方で、借金をしたり、老後の蓄えを取り崩すと答えたのは約4分の1だった。退職時期を遅らせると回答したのが20%弱。中には、少数ではあるものの、子どもを支援するために退職後にもう一度働き始めるという親もいた。
最低限の生活以上のものを支援する親たち
では、親は具体的にどんなものを子どものために払っているのだろうか? 答えは、ほぼ全て。家賃や住宅ローンといった生活していくのに必要な経費だけでなく、休暇といった子どもの贅沢品も親がカバーしている。
レポートによると、成人した子どもに親がしている金銭的なサポートの総額は5000億ドルで、このうち約4分の1が大学にかかる費用だ。年間540億ドルの食事・食料品代、180億ドルの携帯電話代は、多くの親が一部をサポートというより、全額をカバーしている。
だが、"もっと大きな買い物"も親が払っている。約60%が子どもの結婚資金を出し、25%が子どもの最初の住宅購入を支援している。レポートによると、アジア系の親が最も子どもへの金銭的なサポートに積極的で、特に教育に関しては支援を惜しまないという。
「こうした経済的な支援が積み重なって、多くの親は成人した子どもに結局いくら使っているか、よく分かっていない」と、レポートは指摘する。
ただ、経済的な支援は"住む場所を提供する"という形で現れることもある。レポートによると、13歳~34歳で親と実家で同居している子どもの割合は31%で、1960年から50%増となっている。この割合は、配偶者と住んでいる人の割合よりも多い。
「成人した2人の子どもの生活費を払うより、子どもが実家に戻って生活する方が安く済む」と、ある回答者は語っている。
メリルリンチの調査結果は、Country Financialの調査『Country Financial Security Index』の結果に似ている。Business Insiderが以前報じたように、この調査ではアメリカのミレニアル世代の半数以上が親や後見人、家族から21歳になった後に経済的な援助を受けていることが分かっている。また、約37%が毎月お金を受け取る一方で、59%は年に何度か受け取っていることも分かった。同調査によると、アメリカ人が経済的に独立する年齢は以前に比べて、遅くなっているという。
子どもを助けるか、親を助けるか
しかし、ミレニアル世代がお金の面で親に依存する一方で、レポートによると、多くの親が成人した子どもにアドバイスや精神的なサポートを求め始めている。
「多くの親が、子どもが必要とする金銭的な援助や住む家を提供するのは親の責任だと考えていて、同じことを親のためにするのは子どもの責任だと考えている」と、レポートは指摘する。「何百万人という親が、自らの子どもをサポートすることと、自らの年老いた親を支援したり、介護することの間で板挟みになって、その両方の役割に気付く」
同レポートはまた、重要な疑問を突き付けている —— 自身の経済的な安定を犠牲にすることで、将来、今度は親が子どもに経済的に依存する可能性が上がるのだろうか?
解答者の約50%は、子どもたちに対し、親が経済的な支援をどこまで提供するつもりがあるのか、より明確な境界線を引いておくべきだったと後悔している。
レポートが指摘するように、「親の心は子どもへの惜しみない支援を求めるかもしれないが、その一方で頭は、おとなになった子どもをサポートするという重荷から自らを解放し、自身の経済的な安定を確実にするよう伝えているかもしれない」。
(翻訳、編集:山口佳美)