特許・商標・著作権
弁護士や弁理士など特許・商標・著作権に関する法律の専門家が今すぐお答えします!
知的財産権を専門とする者です。
法律(著作権法および民法)的には、相手方に問題はなさそうです。
詳細につきましては、本日の午後に回答いたしますのでご了承ください。
お待たせしまして申し訳ございません。
まず、著作物を著作権者に無断でネット上にアップロードする行為は、ご質問にあるとおり、複製権(著作権法21条)と公衆送信権(同法23条)に抵触することになります。
この複製は、著作物をサーバ内の記録媒体に複製することを意味します。
『(複製権)
第二十一条
著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。』
また、公衆送信権とは、サーバに記録された著作物をユーザーのパソコンへ送信する権利などをいいます。
『(公衆送信権等)
第二十三条
著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
2 省略』
続きまして、損害賠償請求ですが、これは民法に根拠があります(民法709条)。
『(不法行為による損害賠償)
第七百九条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。』
質問者様が著作物を著作権者に無断でネット上にアップロードしますと、先に申しましたように著作権の侵害となってしまいますので、この損害賠償請求の対象となってしまいます。
この場合、その損害額につきましては、実損分が原則となります。アメリカのように、制裁金を課すというようなことは認められておりません。
そして、この損害額の算定につきましては、権利者が勝手に決めることはできず、権利者が証拠を提出し、裁判官に主張立証して、認められなければなりません。
この損害額の立証が難しいために、一般には、著作権法に損害額の算定方法が規定されていますので、それに基づいて権利者が損害額を算定し、主張立証することが多いようです。
損害額の算定方法は複数あり、著作権法114条1項~4項に規定されています。以下に、要約したものを記載します。
『(損害の額の推定等)
第百十四条
著作権者等・・・が、故意又は過失により自己の著作権・・・を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為によって作成された物を譲渡し、又はその侵害の行為を組成する公衆送信・・・を行ったときは、その譲渡した物の数量又はその公衆送信が公衆によって受信されることにより作成された著作物・・・の複製物(以下・・・「受信複製物」という。)の数量(以下・・・「譲渡等数量」という。)に、著作権者等がその侵害の行為がなければ販売することができた物(受信複製物を含む。)の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、著作権者等の当該物に係る販売その他の行為を行う能力に応じた額を超えない限度において、著作権者等が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡等数量の全部又は一部に相当する数量を著作権者等が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。
2 著作権者・・・が故意又は過失によりその著作権・・・を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、当該著作権者・・・が受けた損害の額と推定する。
3 著作権者・・・は、故意又は過失によりその著作権・・・を侵害した者に対し、その著作権・・・の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を自己が受けた損害の額として、その賠償を請求することができる。
4 省略』
本件では、相手方が「想定被害額はサーバー削除時のリンクへのアクセス数、少なく見積もって100×500円でどうでしょうか?」とありますので、これはこの114条1項に基づいて、「受信複製物の譲渡等数量を100」とし、「受信複製物の単位数量当たりの利益の額を500円」として、これらを乗じて得た額50,000円を損害額として算定しているものと思われます。
受信複製物の譲渡等数量が100であることと、受信複製物の単位数量当たりの利益の額が500円であることが、適正であれば、相手方の要求した損害額は一応、この114条1項に基づいて算定しているということになりますので、吹っ掛けてきているとはいえないものと推定されます。
相手方の主張で明らかに誤っているものとしては、「刑事責任罰金(最大3000万円/10年以下の罰金)が発生します。」という点です。
正しくは、著作権を侵害した場合、法人を除き、「10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはこれを併科にする」となります(著作権法119条1項)。
また、示談書につきましては、当事者双方の署名が入ったものをお互いが所持し、保管しておいた方がよろしいかと思われます。和解金を支払った後で、再度の支払い要求や、払った払っていない、などの紛争が生じた場合に、証拠となりますので、後々のことを考慮しますと、口頭のみで済まさない方が賢明かと思われます。
ご質問にあるような方法でアクセス数を算定しているのでしたら、実数と異なっていると思われますので、争う余地はあると予想されます。
実際のアクセス数を把握していないのであれば、114条1項による算定は困難となり、同3項によるロイヤリティ相当額による算出となるので一般的です。
実際の損害額は提示できませんが、損害額の算定方法として、その著作物をライセンスした場合の業界相場を目安に算定するというのが一般的に行われていると思われます。
次のご質問ですが、損害賠償の要件は①故意または過失の存在、②侵害、③損害の発生、④侵害と損害の因果関係の4つを満たすかどうかのみで判断されますので、本件のように、質問者様が、故意に著作物をネットに掲載して著作権の侵害行為をしている時点で、損害賠償請求の要件は満たされてしまうものと思われます。
評価していただきましてありがとうございます。
また、何かございましたらご質問してください。
ご健闘をお祈り申し上げます。
元の著作物(以下「原著作物」とします)から二次的著作物を創作する行為は、これを無許可で行いますと原著作物の著作権者(本件では「アメリカ法人」となります)の有する著作権のうちの翻案権と抵触する可能性があります(著作権法27条)。
その場合には、二次的著作物を創作した相手方は、翻案権の侵害ということになりますが、そのような違法行為により創作された二次的著作物であっても、原著作物の著作権とは別個に、その相手方は、その二次的著作物について著作権が生じます。
すこにややこしいかもしれませんが、アメリカ法人の有する原著作物に対する著作権および、相手方の有する違法な二次的著作物に対する著作権の二つの著作権が発生していることになります。
この場合、相手方はアメリカ法人に対して、損害賠償等の義務が生じるのですが、一方、それとは別個に、第三者が二次的著作物の著作権を侵害した場合には、その者は、相手方に対して二次的著作物の著作権の侵害行為による損害賠償の責任を負うこととなります。