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「マンガ 線形代数入門」を読んだところ、高校数学から行列が廃止されたことについて前文で触れていた。大学に入っていきなり行列に触れる学生に、線形代数を少しでもわかりやすく説明したいというのがこの本を出す大きな理由だったという。
本当に信じられなかった。教育業界では、これからはITだプログラミングだと騒いでいる。それなら、高校のカリキュラムから行列がなくなるのはおかしい。
例えばコンピュータグラフィックスでは、2次元3次元を問わず行列演算が基本中の基本である。人工知能(AI)としてもてはやされている機械学習にしても、具体的な処理は行列演算だ。せめて行列という概念が存在することだけでも高校のうちに知っておくべきではないか。
インターネットで調べていくと、大学で数学を教えている先生の中には、このことを問題視している人が多いこともわかった。「それなら、次の学習指導要領の改訂でまた行列が復活するかもしれない」と淡い希望を持った。
しかし、現実は逆だった。学習指導要領の2022年度の改訂では、高校の文系数学の範囲からさらにベクトルが消えるという。ベクトルも線形代数に必須の重要な概念である。高校の数学から重要な概念がどんどん削られていく方向なのだ。
本当の問題は社会の無関心
これをきっかけに、この問題に関する記事をよく見るようになった。最近も、高校教育で行列を習わないことを問題視するブログ記事を読んだ。てっきり賛成意見ばかりだろうと思って、ブックマークコメントを見た。
もちろん、記事の趣旨に賛同する意見もあった。しかし、高い評価を得ているコメントは「自分は高校では行列の意味がわからなかったから、必要になったら勉強すればいい」「何が問題なのかわからない。高校で習わなくても大学でやればいい」というものだった。まるで「問題にするほうがおかしい」と言わんばかりだ。