英国では「五輪ボランティア」が殺到した事情

大事なのは無償とか有償とかではない

イギリスではスポーツのボランティアが活発に行われている(写真:Sport England提供)

2020年開催の東京オリンピック・パラリンピック大会に向けて、ボランティアの募集が始まった。オリンピック・パラリンピックの組織委員会は約8万人の「大会ボランティア」、東京都は「都市ボランティア」約3万人を募集している。

「オリンピックのボランティアは有償であるべき」という声が日本で日増しに支持を得るようになったが、2012年のロンドン大会で約7万人のボランティアが「ゲーム・メーカー」として参加したイギリスでは、「ボランティア」とは基本的に無償の行為であり、スポーツ・イベントではボランティアの存在は必須となっている。「やりがい搾取」「ブラックボランティア」などいう言葉はまず出てこない。

いったいどのような社会背景があるのかを探ってみた。

ボランティアのもとの意味とは?

まず、「ボランティア」(volunteer)という言葉の定義を再確認してみよう。英語の「volunteer」はもともとラテン語(「望んで・自分の自由意思で」という意味の形容詞)から発祥したものだが、17世紀には「軍事兵役に志願する人」つまり「志願兵」の意味であった。現在オックスフォード英語辞書を引いてこれを和訳すれば、最初が「志願兵」そして「自らの意思でいずれかの範囲で奉仕を提供する人」になる。

オリンピック・ボランティアの有償化を支持する人は、「ボランティアという言葉には『無償』という意味が必ずしも入っていない」と主張する。したがって、「ボランティア」と言えど「有償化も可能だ」という流れである。ところが、英語の「ボランティア」には「自ら志願する」という意味とともに「無償で行うこと」が含まれて認識されている。

明文化されたものでは、たとえば英イングランド地方のボランティア組織を統括する「全国ボランタリーカウンシル」(NCVO)は、ボランティア行為を「ほかの人・グループ、あるいは環境に恩恵を与えることを目的に、無給で何かを行うことで時を過ごす活動」と明記している。イギリス政府のボランティアについての説明でも、無給で作業を行うことが前提となっている。

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  • NO NAME904299dc4fe7
    みんな頑張ってオリンピック成功させようぜ!って
    一丸となるようなオリンピックなら参加したいと思ってたが、
    しょっぱなからデザイナーは利権ありきのパクリ野郎なおかつ執行委員会の親戚だったり、森は適当なこと言うだけで月200万とかでめちゃくちゃなので心理的に応援できなくなってしまった。
    一部の企業だけが儲かって税金の無駄使い。
    景気高揚させるなら、別の使い方をしてほしかった。
    復興税に使い切るとかでも良かったのだ。
    up174
    down22
    2018/10/10 05:46
  • NO NAMEe118e1d18f8a
    ボランティアが根付いているとかではなくて、
    みんなで成功させたいね、
    私も協力したいな。
    こう思われなくなった東京五輪サイドに問題があるのでは。
    up154
    down17
    2018/10/10 06:45
  • NO NAMEa08d3f934978
    ボランティアに参加したくないと思わせる東京オリンピックが問題なのです。
    開催地投票での賄賂、利権、電通とゼネコンに湯水のように金が流れ、酷暑の開催をどうすることもできないメディアに牛耳られた、スポーツの祭典ではない利権者の金儲けの場所となっているのが問題なのです。
    ボランティアに無償で参加するのは、泥棒の手伝いを無償でするようなものです。
    up148
    down16
    2018/10/10 07:27
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