気を付けてたつもりでしたが、やはり出てしまうものですね。
あと今回で書き溜めが尽きたので、次回から不定期更新になります。
「スズキサトル・・・あ、あの・・サトル様とお呼びしても?」
悟様!?女性に下の名前を、しかも様付けで呼ばれるなんて初めてだ。———ぶくぶく茶釜さんに”お兄ちゃん”呼びはされたことはあるけど———なんともむず痒い。
「はは、私は”様”と呼ばれるような者じゃありませんよ・・気軽にスズキさんとでも———」
「あ、あなた様をそんな風に呼ぶことなどできません!お許しを・・・」
「あ、はい。ではご自由に・・・」
押し切られてしまった。まあ元々反対する女性に意見を押し通せるほどの度胸もないんだけど。
「あの、サトル様・・・お願いがあります」
「ん?なんでしょうか」
「両親を・・村のみんなの命も救っていただけないでしょうか?」
村?
「村が・・突然さっきの騎士達に襲われて・・・お父さんは私達を助けるために立ち向かって・・・」
どうやら彼女達が住む村全体がさっきの騎士達に襲われているらしい。———考えてみれば当たり前か。この二人だけが偶然騎士に追われるような状況になるわけがない。
しかし村全体を救うと言うことは、さっきのようにただ逃げるだけとはいかないだろう。二人を助けただけでもなけなしの勇気を振り絞ったのだ。これ以上は荷が重すぎる。
・・・うん。二人には申し訳ないけど無理だ。さすがにそこまでは———
「お願いします・・・私の・・私のすべてを捧げます!・・どうか・・・」
(うひゃ!ちょ、胸が!?)
その言葉と共にエンリが飛びついてきた。慎ましいながらも柔らかな双球が惜しげもなく押し付けられる。
(うわ、女の子って柔らかいんだな。全身フニフニしてる。それになんかいい匂いが・・・・って俺は何を考えてるんだ!!)
しかも『私のすべてを捧げます』だって!?まるでペロロンチーノさんに借りたエロゲみたいなセリフだ。
気のせいか『ここ重要選択肢ですよ。モモンガさん!』と言うバードマンの幻聴が聞こえてくる。
固まっているとネムも同様に飛び付いている。こちらはさすがに情欲は感じないが、二人の少女が泣きながら縋り付き、こちらを見上げてくる様子はすさまじい保護欲と罪悪感を煽ってくる。
(う・・そんな目をされたら断れないじゃないか・・・)
っていかんいかん。感情に流されるな。できない事を約束するほど無責任な事はない。
よし、ちゃんと断るんだ———
「そんなものいりませんよ。誰かが困っていたら、助けるのは当たり前・・・ですから。私にまかせてください」
しかし、意思とは裏腹に、口からそんな言葉が出る。さらに自然と手が二人の頭に動き、優しく撫でていた。
「あ・・・」
すると二人とも泣き出してしまったので、慌ててハンカチを取り出して涙を拭う。
・・・嫌がって泣いてるんじゃないよな?大丈夫だよな!?
◆
「少し離れていてください」
二人が落ち着いた後、そう言って距離を取る。数メートル離れたところで動きを止め———
〈
周囲の動きが停止した事を確認すると、頭を抱えてしゃがみ込む。
「何やってんだ俺は・・・できないって言ってんだろうが・・・」
何が『まかせてください』だ!安請け合いしてんじゃねえよ!!とさっきまでの自分を責めながら姉妹に視線を向ける。動きは止まっているものの二人とも花の咲いたような笑顔をしており、こちらを信頼している様子が伝わってくる。
『美少女の上目使いおねだりは最強だぜ!』と昔ペロロンチーノさんが言っていたが、あれほどとは思っていなかった。
「今からやっぱ無理です・・・ってのは駄目だよなぁ」
一度希望を持たせておいてそれを否定するなんて最低だ。なによりあんな目を見ながら断るなんて無理だ。
「いかん、効果時間が切れる」
急いで立ち上がり、元の体勢に戻ると同時に魔法が切れる。
(やばい、どうする。こうなったら自分が戦うしかないか?)
先ほどの騎士を思い出す。鎧を着た男、その手には本物の剣が握られていて———
無理無理無理!!
しかし、絶望する悟の頭に一つのアイデアが浮かんだ。
(そうだ、何も俺自身が戦う必要は無い。モンスターを召喚してそれに戦ってもらえばいいじゃないか)
さっそくユグドラシル時代愛用していた〈
(となると召喚するのはレベルが高いのはもちろんとして、耐久力にも優れたモンスターだな。最悪逃げるまでの時間稼ぎができるように。)
少し考えた後、召喚するモンスターを決めた。
———使用するのは超位魔法〈
超位魔法は魔法と名がつくがMPを消費せずに発動できる。その代わり使用できる回数が限られており、どちらかというと〈
同じ超位魔法である〈
普段ならばそのまま発動を待つ所だが、今は悠長にしている時間は無い。発動時間を省略する課金アイテムを取り出し———砕く。
砂時計の様な形をしたそれが握りつぶされると零れ落ちた砂が魔法陣の中を駆け回り、周囲に六体の天使が光の柱と共に出現した。
召喚されたのは八十レベル台の天使〈
〈
光の柱が消えると同時に、六体の天使達は悟の前に跪く。そんな様子に戸惑っていると、先頭の天使が口を開く。
「〈
(しゃべった!?)
アンデッド召喚の実験で、召喚モンスターにユグドラシル時代より段違いの自由度があるのは把握していたが、まさか会話までできるとは思わなかった。召喚したアンデッドは『ヴゥ』とか『ヴァ』としかしゃべらなかったので分からなかったが、あれらにも意思があったのだろうか?
(やばい、なんかすごい変な事させてたぞ)
集団でコサックダンスをしてるアンデッドの群れを思い出す。
(うわぁ、『こいつ何やらせてんだろ』とか思われてたらどうしよう。あんまり憶えてないけど他にも色々やらせてた気がするぞ・・・)
急に羞恥心が湧き出てきたが、今はそんな事考えている場合じゃないと無理やり意識を戻す。もし〈
〈
〈
〈
〈
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〈
〈
こんな所かな?
鈴木悟が使用できる限りの強化魔法はかけた。これでやられるようなら仕方が無い。その時は迷わず逃走だ。
(エンリ達はここで待っててもらったほうがいいかな?ただその場合は護衛用に天使を置いておく必要があるな。一体だと少ないか?でも二体以上置いておくとなるとこっちが手薄になるな・・・)
天使の配分を考える悟だったが、ここで肝心な事に気づく。
(・・・俺、村の場所知らないじゃん)
今まで考えてたのはなんだったのかと思いながらエンリ達の方に振り向く。
「村まで案内してもらえますか?」
結局全員で村まで向かうことになったのだった。
Wikiって偉大。
今回使用した強化魔法は、ほとんどがシャルティア戦でモモンガ様が使用した物ですが、一部モモンガ様以外が使用した物があります。
もし使用出来ないものがあったらすいません。