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【社説】

日韓宣言20年 東アジア安定を視程に

 相互理解と信頼を目指す日韓パートナー宣言が出てから、二十年が過ぎた。朝鮮半島をめぐる情勢が急変している今こそ、両国の協力が重要だ。宣言が示した未来志向の関係を再確認したい。

 小渕恵三首相と金大中(キムデジュン)韓国大統領が、「日韓パートナーシップ宣言」に署名したのは、一九九八年十月八日のことだ。

 宣言の中で小渕首相は、植民地支配をめぐり「痛切な反省と心からのお詫(わ)び」を表明した。

 日韓政府間の合意文書に、歴史認識が盛り込まれたのは初めてだった。一方、金大統領は、日本の国際社会への貢献を高く評価しており、今でも日韓間の最重要文書の一つだ。

 この宣言を受け、韓国では日本文化の開放が実施され、韓国の映画館では日本のアニメなどの映画が大ヒット、書店には日本人作家の特設コーナーが広がった。

 日本でも、韓国ドラマやKポップのブームが起きた。日韓間の人的交流は今年、一千万人の大台を超える見通しだ。

 両指導者の知恵とビジョンによって、両国の文化面の交流が飛躍的に拡大したといえる。しかし、歴史認識をめぐって、両国間には火種がくすぶったままだ。

 海上自衛隊は、韓国南部済州島で開かれる国際観艦式への護衛艦派遣を見送った。韓国側から自衛艦旗「旭日旗」の掲揚を自粛するよう求められたためだ。

 両国のネット上を中心に、感情的な反応が噴き出した。過去を直視し、相手を認めるという「パートナーシップ宣言」の精神を忘れてしまったかのようだ。

 公益財団法人「日韓文化交流基金」が先月実施した両国大学生の交流事業では、会員制交流サイト(SNS)の共同運営や、日本で韓国の歴史をまなぶ機会の拡大を望む意見が出たという。

 相互理解を目指す、新たな交流方法を探る工夫も必要だろう。

 朝鮮半島を取り巻く状況が、激しく動いている。非核化をめぐる交渉はヤマ場を迎え、二回目の米朝首脳会談が実現する可能性も高まっている。

 関係する米国と中国は貿易問題などで対立を深めているが、日韓両国は、民主主義や市場経済といった価値観を共有している。

 九日に都内で開かれた式典で安倍晋三首相は、日韓関係の発展を約束した。東アジアに永続的な安定を実現するために、両国の多面的で、成熟した協力関係が欠かせないことを忘れてはならない。

 

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