同性愛は精神疾患ではないし治療の対象にもならない。
このことは、現代の日本ではほぼ常識となりつつあるだろう。
性的なことがらに関するマイノリティ(少数者)に対して差別的な言動をすることは許されないという社会道徳・規範は21世紀に入って、日本も含めた先進諸国で急速に広がった。
誰かの性的あり方を自分と違っているというだけの理由で病気扱いすることも差別の一種とみなされるだろう。
だが、からだの性とこころの性が一致しない性同一性障害(性別違和)・トランスジェンダーの人々の場合、医療との関係は微妙だった。
医療的な処置――からだの性をこころの性に合わせるために、男性ホルモン・女性ホルモンを用いたり、性別適合手術をしたりすること――をときに必要とする点で、「病名」や「障害名」と切り離せないからだ。
とはいえ、最近トランスジェンダーをめぐって大きな変化があった。2018年6月には、世界保健機関(WHO)が性同一性障害を精神疾患のリストから外す方向であると発表したのだ。
このことの意味を考える前に、少しLGBTについて簡単に解説しておこう。
LGBTのLはレズビアン、Gはゲイ、Bはバイセクシュアルで、これらは性的指向(好きになる性)という点に特徴がある。いっぽう、Tはトランスジェンダーの略で、性自認(からだの性とこころの性のギャップ)という点に特徴がある。
最近では、そこにIとしてインターセックス(からだの性が男女の中間で、かつて半陰陽といわれていた人々)、Qとしてクエスチョニング(迷っている人)やクイア(かつて「変態」と同じ蔑称だったが、独自で個性的というプラスの意味で使われる)、さらにAとしてアセクシュアル(他者に性的欲求を持たない人)を加えることもある。また、男性でも女性でもないXジェンダーという言葉もある。
そうすると、LGBTIとかLGBTIQAとかどんどん長くなって略語だかなんだか意味がわからなくなっていく。そこで、LGBT+としたり、LGBTでの性的指向(Sexual Orientation)とTでの性自認(Gender Identity)という二つで代表させてSOGIという言葉を使ったりすることもある。
また、これらのすべては人間の性の正常な多様性(ダイバーシティ)の一部であるという視点から、性的マイノリティ(少数者)とまとめて呼ぶ場合もある。