<2012年7月=東スポ携帯サイトより>
「銭形平次」(フジテレビ系、昭和41~59年)で三輪の万七親分を演じていた遠藤太津朗(旧名・遠藤辰雄)さんが7月7日、心筋梗塞のため死去した。享年84。
今週は同じく時代劇や舞台で活躍された女優・山田五十鈴さん(享年95)の訃報も重なった。山田さんは「必殺からくり人」(昭和51年)のエンディングで唯一人、キャスティングのテロップがバーンとズームアップしてせり出してくるという別格ぶりの超大物。山田さんの訃報に隠れる格好となってしまったが、この人もまた、時代劇を語る上で忘れてはならぬスターだった。
長らく水曜夜の風物詩であり続けた大川橋蔵版の銭形平次が放送終了して早や28年。もはや、コワモテなんだけれど、どこか間が抜けていて憎めない平次の岡っ引き仲間というかライバル、三輪の万七親分を知らない世代も多くなった。
そんな万七親分の人となりを説明するならば「名探偵コナン」における毛利小五郎というか、天知茂主演の「明智小五郎シリーズ」における波越警部(荒井注)や、松田優作主演の「探偵物語」における服部刑事(成田三樹夫)に近いテイスト。
主人公を一方的にライバル視しつつ、単純な推理で「今回はお前さんの出番はないな。ワッハハ」なんて事件を解決した気になってはいるが、事件が二転三転し、最後は主人公の引き立て役となってしまう感じ。
他の時代劇では、徹底して邪悪な匂いをまき散らし、時代劇好きからは〝ミスター悪代官〟とまで呼ばれた遠藤さんだが、不思議と万七親分だけはコワモテの中にも愛嬌が感じられた。岡っ引きにとって、命よりも大事な十手を番所に置き忘れて鰻を食べに出かけたスキに、まんまと十手を盗まれ、ライバルの平次に泣きつくとか…。
小悪党ばかりではない。アンヌ隊員こと、ひし美ゆり子が脱ぎまくっている昭和48年公開の「ポルノ時代劇 忘八武士道」(東映=石井輝男監督)では、志村けんも真っ青な〝ばか殿メイク〟と素っ頓狂な声色で吉原遊郭の総名主(ほとんど怪人か狂人といった感じ)という役を狂気とケレン味たっぷりに演じていた。
同じく昭和48年公開の「仁義なき戦い 代理戦争」、翌年公開の「仁義なき戦い 頂上決戦」(ともに深作欣ニ監督=東映)では一転して、神戸・明石組の舎弟頭役を重厚な貫禄とともに演じていたものだ。他にも「大魔神」(昭和41年・大映)の犬上軍十郎役や、若山富三郎版の「子連れ狼 親の心子の心」(昭和47年・勝プロ)における柳生烈堂役などが印象深い。
月曜夜8時には水戸黄門一行に懲らしめられ、水曜夜8時には銭形平次と何やら争っている、なんてパターンの週も多かった。下手すれば、金曜や土曜の夜には仕掛人や仕置人、仕事人によって、むごい姿であの世送りにされている週も…。
悪代官と万七親分のイメージが強かった遠藤さんだが、演じてきた役柄を顧みると、実はマルチプレーヤーだったのかも知れない。また1人、味のある時代劇スターが姿を消してしまった。合掌。