シャルティアが精神支配されたので星に願ったら、うぇぶ版シャルティアになったでござる   作:須達龍也
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これくらいのペースで、いけたらいいなと思ってます。


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「…そう見えるとしたら、いくぶんわたしが、客観的に俯瞰しているからかもね」

 

 

 

 なんか、そう言って微笑んだシャルティアは、ちょっと大人びて見えた。

 

(シャルティアのくせに…)

 

 出来の悪い、手間のかかる妹のようだと思っていたのが、急に大人になられたようで悔しい。

 でも、さっきシャルティアの言ってたことって、一歩退いて客観的に冷静に物事に当たるってことだよね。

 それって、こっちのシャルティアが持っていない一番大きいことじゃない? …まあ、シャルティアは他にも色々と持ってないんだけどさ。

 なんか、シャルティアの精神支配が解けた後も、シャルティアの先生としてしばらくは居てもらったほうがいいんじゃないのかな。

 

 今度、アインズ様にそう言っておこうかな?

 

 その後は、アルベドが双角獣(パイコーン)の調子が悪いと相談してきたんだけど、召還獣だからって、あたしに聞かれたってわかんないって。

 シャルティアに、一角獣(ユニコーン)みたく処女じゃないと駄目なんじゃないのってからかわれた後、アルベドが処女だから大丈夫って……まあ、その後のやり取りは、こいつら何言ってるんだ、みたいな気持ちにさせられた。

 シャルティアなんか、ついさっき見直したばかりだったのになあ。

 

 

 更にその後、アルベドがアインズ様に襲い掛かって謹慎させられたと聞いて、本当になんだかなあという気分にさせられた。

 

 

 

 

 

「さて、今回の依頼を受けるか、どうか? …ロバーテイク」

「構わないと思います」

「イミーナは?」

「いいんじゃない? 久方ぶりのちゃんとした仕事だしね」

「なら…」

 私に決定権はないという前提で始められた話し合いは、ある意味予想通りの結論に至ろうとしていた。

「…私に気を遣っているとしたら、それは遠慮したい。もし今回の仕事を受けなくても他にも手はある」

 非常にありがたい話ではあったが、それは私の本意ではなかった。仕事を受けるか受けないかの重大な決定に、私情を挟んで欲しくはなかった。

 

 それでも、みんなの決定は変わらなかった。

 

 みんながみんな、言葉は違えど私の為じゃないというニュアンスのことを言ってくれたが、それが真実でないことくらいはわかる程度には、みんなのことを知っているつもりだ。

 そして、私がもう何を言おうとも、決定を覆すことはないこともわかっていた。

 私は両親には恵まれなかったが、チームには恵まれていると本当に思う。

「…感謝する」

 

 

 その後、実家に帰り、両親の変わりなさに情けなくなり。また妹達を守るのは私だけだという思いを再確認した。

 

 

 

「あー、どこかで見た顔があちらこちらにあるわね。というかあそこのカブトムシさんはつい最近、カッツェ平野で会っていたじゃない」

 イミーナの言うように、割とよく顔をあわせるご同業がたくさん居た。

 格としてはわたし達…”フォーサイト”と同じくらいのワーカー達だ。

 

 イミーナの言うカブトムシ…グリンガムさんが率いるチーム”ヘビーマッシャー”は、全員で十四人という大所帯ワーカーチームだ。今回の参加人数は五人というところだけど。

 グリンガムさんは、変に固いしゃべり方が特徴なんだけど、そのしゃべり方同様に、ヘビーマッシャーは堅実なチームとして有名だ。

 

「……って! うげぇ、あいつもいるの? あー、そうか。じゃぁ、あそこにいる森妖精(エルフ)の娘たちは……最悪。死ねよ、糞」

 あるチームリーダーを見つけて、イミーナがはき捨てるようにそう言った。

「……私も好きではない」

 もちろん、私の評価もそう変わらない。

 

 人間性という面では最低と評するしかない男…エルヤー・ウズルスの率いる…というよりは、この男一人の為のチーム”天武”は、今回は四人のようだ。

 今回はというのは、最低男以外は特に決まった面子ではないからだ。

 強さという面では、闘技場でも名をはせるどころか…かの近隣国家最強と呼び名も高い王国戦士長と匹敵するとまで一部では言われている。わたしはこいつよりもヘッケランの方が強いと思うけど。

 強いけど人間性が最悪だから、普通のメンバーではチームが組めないのだろう、いつでもエルフの奴隷達を引き連れている。

 メンツが時々変わっているように見えるのは、売り払ったりしているのだろうか? …使い潰しているとは流石に思いたくはなかった。

 

 最後が、場違いとも思えるような老人…パルパトラ”緑葉(グリンリーフ)”オグリオンさんが率いるチーム”竜狩り”の五人だ。

 格としては同格ではあるが、かつてはオリハルコンにも匹敵したと言われ、八十歳になった今でも現役であるパルパトラさんに敬意を払わないワーカーはいない。故に、自然と”老公”と言う敬称で呼ぶことが多い。

 

 そしてわたし達フォーサイトのメンバーが、リーダーのヘッケラン・ターマイト、二刀流を操る私が知る限りでは最強の剣士だと思っている。

 軽薄そうに見えるけど、いつでもわたし達のことを考えているすごく優しいチームリーダーだ。

 副リーダーがイミーナ、リーダーのヘッケランとはかなりいい感じに見える。私の勘では、多分付き合っていると思う。ちょっとぶっきらぼうで口が悪いが、リーダーに負けず劣らずの優しい…頼れるお姉ちゃんだ。

 詳しく聞いたことはないが、半妖精(ハーフエルフ)だから多分私が知らない苦労をたくさんしてきたはずだけど、そんなことはおくびにも出さない…ああ、エルヤーへの敵意は隠そうともしていないな。

 影のリーダーとも言えるのが、神官…元神官のロバーテイク・ゴルトロン、優しすぎて冒険者にはおさまれなかったからワーカーになったという、異彩な経歴の持ち主だ。

 そんな人だから、もちろん優しい人だ。…本当に、優しい人しかいないな。すごくいいチームだと誰が相手でも誇ることができる。

 最後が私…アルシェ・イーブ・リイル・フルト、第三位階までの魔法と、相手の使える魔法の最高位階が見えるという異能(タレント)を持っている。私が誇れるのはそれくらいだけだ。

 私たちは上位のワーカーチームというのが世間の評価だが、さっきも言ったように私は最高のチームだと思っている。

 

 …最高のチームだったになるかもしれないけど…

 

 この仕事が終わったら、私は妹達二人を引き取って…ただのアルシェになって…どこか両親の手が伸びない場所に行くつもりだ。

 最後の最後まで私は我侭な妹だった。私が抜けるせいでフォーサイトは解散することになるかもしれない。それがすごく、申し訳なかった。

 

 伯爵の執事らしき人物が現れ、案内された先の光景は驚きだった。

 大きな幌馬車が二台、驚きはそれを引くのが八足馬(スレイプニール)だったことだ。貴族であっても滅多なことでは保有できない…当然、うち程度では保有した歴史はなかった。

 だが、それよりも驚くものが、最後に執事から紹介された。

 

「ご紹介いたしましょう。たった二人でアダマンタイト級まで上り詰めた冒険者”漆黒”のモモンさんです」

 

 冒険者の最高位…アダマンタイト級、私は初めて目にした。

 チーム名と同じ漆黒の鎧を纏った偉丈夫、背中には両手で持つのも難しそうな大剣を二本も背負っていた。…まさか、ヘッケランと同じ二刀流なのだろうか? あんな大きい剣でそれは考えづらい…けど、もしかしてという思いは捨てられなかった。

 チームメイトの”美姫”ナーベ、使える魔法の位階は私と同じ第三位階という話だが、見た感じ…もう少し上まで使えると思う。ただ、私と同格なはずがないという思いは強く持たされた。

 敬意…畏怖といったもので見つめていた中、モモンさんが口を開いた。

「交流を深める前に……君たちに聞きたいことがある」

 大声ではない。だが、太い声はその鎧の下の雄々しさを感じさせる。

 

「何故、遺跡に向かう? 依頼を受けたというのは分かる。しかし、組合から強く願われれば断るのが難しくなる冒険者と違い、しがらみのない君たちが引き受けたのは何のためなんだ? 何が君たちを駆り立てるんだ?」

 

 不思議な質問だった。内容もだが、何故そんなことを聞くのかがわからなかった。

 

「そりゃ、金ですよ」

 

「君たちの命に釣り合うだけの金を提示されたということか?」

 

 不思議な問答が続く。意味がわからない。意図がわからない。

 

 

 …本当に、わからなくていいのか? …残念ながら、この時は思わなかった…

 

 

 

「なるほど……それがお前たちの決断か。よく分かった。本当にくだらないことを聞いた。許してくれ」




さて、ここからフォーサイトの生き残りをかけた綱渡りが始まります。
生き残れるのはアルシェだけなのか? それとも全員生き残れるのか?
はたまた逆転で全員が死ぬことになってしまうのか?






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