ざっつなオーバーロードIF展開 作:sognathus
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本作でも殺戮は行われますが、ちょっと展開が違います。
王国軍の大軍を前にしてアインズは当初超位魔法を使うつもりだった。
帝国から最大の魔法をもって開戦の合図として欲しいというような事をお願いされた気がしたので、それならうってつけの魔法があると実際に使うのを楽しみにしていた。
だが、ここにきてちょっと彼の気分が変わった。
(《イア・シュブニグラス/黒き豊穣への貢》を使えば大きな戦果を帝国にも見せることができるだろうけど、でもあれを使うと下手をしたらガゼフを殺してしまうかもしれないんだよな……)
ガゼフの事を一人の人間として気に入っていたアインズはできれば彼を殺したくはなかった。
勿論魔法を発動してもその効果によって後から召喚される
けどだからといって『もし』が絶対に無いとは言えないのだ。
「ふむ……」
アインズは今にも進軍せんとしている王国軍を眺めながら一人最前線で尚も呑気に考えていた。
(そうだ。あれをやってみるか。見方によってはある意味カッコ良く見える気がするぞ)
「何のつもりだあれは……?」
ボウロロープ侯は正面から一人向かってくるマジックキャスターの格好をしたアンデッドをワケが解らないという顔で見つめていた。
(アインズ・ウール・ゴウンがアンデッドだった事に驚いていたら、なんか呑気に歩いてきたぞ? 一体あれは何のつもりだ?)
「将軍、どうされますか?」
副官が怪訝そうな声で指示を求めて彼に訊いた。
そんな指示を仰ごうとする副官は、ボウロロープ侯と同じくアインズの行動の真意が掴めず、その顔には気味悪がっている感情がありありと浮かんでいた。
「ああ……まぁ、進軍だ。あの頭のおかしいアンデッドを踏み潰せ。魔法を使ってくるだろうから正面からは行くな。回り込んで包囲して仕留めろ。弓隊には第一陣が接敵するまで矢を放たせろ」
「はっ」
ボウロロープ候の許可が下りた事によって先ず左翼の前列から5千の兵がアインズ目掛けて駆け出した。
たった一人のアンデッドに正直この判断は馬鹿らしく思ったのだが、自信がアインズをそれだけの戦力を持っていると判断したので、先ずはそれを確認しようとしたのだ。
因みに虎の子である自身直属の精鋭兵団には待機を命じていた。
(あいつらは駄目だ。まだ動かす時ではないし、動かす価値があるようには思えない)
「将軍! あれを!」
正直歩兵が接敵する前に弓矢によってアインズが落命するのが先かもしれないとボウロロープ候が次の指示の事をぼんやりと考えていた時だった。
突如副官の驚きに染まった声が彼を淡い物思いから現実に引き戻した。
「どうした? なんだ?」
「いえ、あれ……」
「ん? ……は?」
副官が大声で指を指していたのはアインズだった。
そこには『今頃』には弓矢を受け、針のむしろとなって倒れているアインズの死体が転がっているはずだった。
だが実際には全くその常識的な予想とは異なった展開となっていた。
弓矢自体は問題なく全てアインズが歩いている位置まで届いているのだが、その内の直接彼に当たった矢の全てが彼の体に当たった瞬間、いや、触れた瞬間とも言うべき時にまるで石の壁にでも当たったような衝撃を受けて折れて地に落ちていたのだった。
そして矢を受けた本人はといえば、依然として何事もなかった様子でただ歩いて尚もこちらに向かってきていた。
どうやら当たって砕けた矢では彼の歩調を鈍らせることすらできないようだった。
「なんだ……どういう事なのだあれは……」
「な、何かの魔法でしょうか……」
(魔法にしたってあれだけの矢玉を一斉に受けて無傷で済むものか?)
ボウロロープ候はようやく込み上げてきた不安を振り払うかのように頭を一度降ると、間もなく接敵するはずの歩兵の様子を目で追った。
(何の魔法かは知らんがあれだけの兵に直接攻撃されれば流石に……)
そんな淡い期待をボウロロープ候が持った時だった。
アインズはちょうどその時に王国軍の歩兵が後10メートル程にまで迫ったところである
「絶望のオーラⅤ」
アインズがスキルを発動させると彼に肉薄した兵士が途端に地に伏せて動かなくなった。
それは彼の近くにいた者だけではなかった。
その恐ろしい何かの余波はまるで波紋のように広がっているようで、まだアインズの姿すらまともに見えていない後方の兵士たちにまで程なくして届き、そしてその瞬間に前列の兵士たちと同じように倒れて動かなくなった。
「……」
「……」
ボウロロープ候と副官はその様子を愕然とした顔でただ眺めていた。
(あ……は……? 一体何が……)
「将軍!! 将軍、どうします?!」
驚きの感情が籠もった大声から悲鳴じみた大声へと変わっていた副官の声でボウロロープ候は再び呆然としていた状態から我に返った。
「あ……? ……っ、と、突撃だ。左翼の全ての隊をやつに向かわせろ! 騎兵突撃用意!!」
ボウロロープ候の大音声で現実離れした光景に彼以上に呆然としていた騎馬隊に喝が入る。
突撃の下命が下りたようだ。
正直あんなものを見せられてどう戦ったらいいのか全く判らなかったが、騎士たちは兵の本分で何とか体裁を整えると、歩兵隊の前に出て何とか陣形を整えた。
指示された陣形は長蛇の陣。
騎馬隊としては妙な陣形だったが、その陣形を選択した理由がアインズただ一人の殲滅のみを目的としたものだと考えれば納得がいくものだった。
つまり何が何でもアインズを後続の兵全てを使ってでも押し切って倒すというボウロロープ候の咄嗟の判断が形となったものだった。
「騎兵が進軍するから弓はもう使うな! 弓隊も抜刀して歩兵隊と一緒に突撃しろ! いいか! 騎馬隊の後を追うんだ! ただひたすらに前だけ見て進めぇ!!」
かくして鬼の形相となったボウロロープ候の号令で、まさかの左翼6万による全軍突撃がアインズ一人に対して始まった。
左翼本陣に残っているのはボロロープ候の副官と万が一を考えてと彼から託された精鋭兵団だけだった。
副官は全軍の率いて勇ましく駆け出したボロロープ候の無事の帰還をただ祈るのだった。
―――だが、現実は非情だった。
「…………」
副官と精鋭兵団たちは目の前の光景を言葉を失くして見つめる事しか最早できなかった。
それだけ現実と受け入れがたい惨状が広がっていたのだ。
彼らの視線の先には、アインズに向かって進軍した6万の大軍が彼に接敵したと思われる地点からまるで海が割れるように裂け始め、彼が歩いてきた跡の両側にあっという間に無数の動かなくなった兵の山ができるという悪夢のような光景があった。
「……て……だ……。っ、撤退だ! 撤退するぞ! 王と全ての軍にそれを伝えるのだ!!」
渇き切った口からようやくその言葉を絞り出した副官は自らが鞭を打たれた馬のように兵を率いて全力で駆け始めた。
もはやあれではボウロロープ候や彼に従って向かっていった他の貴族の安否は火を見るより明らかだった。
だからこそ彼は直感で最前の判断を取るために、伝えるために直ぐに行動を移したのだった。
だが、幸運にも同じ光景を目の当たりにしたレエブン候とガゼフが彼より早く撤退の判断を下していた為、既に王国軍は両名の進言を受け入れ、王都への撤退行動へと移っていた。
一方アインズはといえば、呑気に死体を撒き散らしながら、恐らくこういう状況においてガゼフが取るであろう行動を予測し、彼との再会を確信してウキウキと歩を進めていた。
半端な感じですがここで終わります。
ガゼフが辿る運命もこの話では原作と異ならせるつもりなので、多分どこかで続きを出すと思います。
その時はタイトルもこの話の続きと判り易く、したいですね。