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鑑定士と顔のない依頼人 【ネタバレ注意】老人性二次元性愛矯正ムービーではない大どんでん返しミステリ


La Migliore Offerta

/ The Best Offer

 

ミステリ

2013 イタリア

監督・脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ

音楽:エンニオ・モリコーネ

出演:ジェフリー・ラッシュ、シルビア・フークス、ジム・スタージェス、ドナルド・サザーランド

 

 

 

 

世界的に著名な美術品の鑑定士でオークションも主催するヴァージル。人間嫌いで、仕事以外で女性と接することもない。彼の唯一の楽しみは美術品である女性の肖像画を蒐集すること。それも自ら主催するオークションで元画家の友人と共謀し、逸品を不正に格安で落札、手に入れていた。自宅の隠し部屋、四方の壁に所狭しと飾られた美女の肖像画に囲まれ過ごす至福の時。

ある日若い女性から電話で、急死した両親のコレクションを競売に掛けたいという依頼がくる。しぶしぶ屋敷へ鑑定の下見に向かうが、依頼人の女性は電話口だけで姿をみせない。無礼に怒り、断って去ろうとするが、地下室で古い機械のものと思われる歯車を拾い・・・

 

『ニュー・シネマ・パラダイス』で一世を風靡したジュゼッペ・トルナトーレ監督が描く、サスペンス・タッチの逸品。

・・・しかし・・・この邦題、なんとかならなかったのか?

 

 

音楽家にとっての絶対音感と同じように、圧倒的な審美眼と知識を持つ美術鑑定士ヴァージル。

初老の域に達しながら、不遜で他人を見下し、遠ざけ、倒錯した蒐集癖で、けして善人ではない。

電話で話しをするだけで、姿を見せない若い依頼人クレア。

広大だが寂れた様子の依頼人の屋敷。

立場をわきまえてか、言葉を濁すばかりの使用人。

次々に見つかる伝説の人形師のものと思われる機械仕掛けの部品。

その部品で元の機械の復元を試みるイケメンでプレイボーイの修理屋ロバート。

ヴァージルに絵を酷評されながらも、不正落札の片棒を担ぐ元画家のビリー。

そして、屋敷向かいのカフェで、何事か数えてばかりいる車椅子の女性。

殺人事件のように派手な事件が起こるわけでもなく、静かに、そして少しずつ明かされる謎。

依頼人の秘密を知るうちに、人を拒み続けていたヴァージルの心に愛が芽生え始める。

 

 

 

この作品、地味といえば地味なのですが、私、ツボでございました。

前情報ナシで観ておりましたので、最初は、

 

「二次元性愛のアブナイ老人がリアルな愛に目覚めるまでを変態目線で描く人格矯正御伽噺」

 

・・・かしらん?と思っておりましたら、な、な、ナ、ナント!!

ビックリの大どんでん返しが待つ、チョーお気に入りとなる一本でございました。

 

 

 

 

 

 





【以下、盛大にネタバレ御免】※一応ミステリなので、くれぐれも未見の方は鑑賞後に!!

 

 

 

 

 

 

この作品、けっこう細かい伏線が仕込まれていて、私もどこまで把握できていることやら?

 

例えば冒頭のエピソード。本筋とは別件の鑑定依頼で、煤に覆われた木片に古い絵が隠れていることを発見する。後に著名な画家と同じ年代の顔料で描かれたものと科学的分析で証明されるが、ヴァージルはその画家を真似た贋作であると見抜く。

この精巧な贋作をも見抜く“絶対的審美眼”の持ち主であることが、物語の重要な鍵。

 

豪奢なレストランでお一人様ディナーのヴァージル。しかも、カトラリーも手袋を嵌めて扱う極度の潔癖症。誕生日祝いにレストランがサービスでケーキを出すが、彼は眺めているだけ。ケーキの蝋燭が燃え尽きるまで待つと、「誕生日は明日だ。験を担いで零時前には食べない」と給仕頭に伝え帰ってしまう。

 

美術鑑定士・競売人として海外でも引っ張りだこ。だが極力他人との接触を避けたいヴァージルは携帯電話を持つことなど以ての外で、仕事の受注やスケジュールは全て初老の男性秘書に任せている。

「今年も誕生日プレゼントがたくさん届いています」

「携帯電話は全部捨ててしまえ!」

この遣り取りで直接連絡を取りたがっている仕事関係者が何人もいること、しかも毎年恒例の贈り物として扱われていること、ということは今では送る方もジョークで送りつけていて、ヴァージルも巡り巡って一層うるさく感じているだろうことが読み取れる。

そんな流儀を変えさせるほどクレアの存在が彼の中で大きくなり、メカに強い修理屋ロバートが携帯の使い方を教えるという鉄壁の“サポート”を見せる。

 

「姿を見せろ!」「ヤダッ!!」のすったもんだの末、依頼人が広場恐怖症で屋敷の外に出ることができず、また、恋人の非業の死によって他人と顔をあわせることもできない精神状態であることを知る。

広大な屋敷の中の狭い隠し部屋。そこで閉じこもるように生きてきた依頼人クレア。

悲惨な自らの生い立ちと、クレアを襲った悲劇が重なり、

人嫌いなヴァージルの心に変化が生じ始める。

ある日、好奇心を抑えきれなくなったヴァージルは屋敷に潜み、美しいクレアの姿を目にする。

その姿は彼女の母親の若い頃を描いたというバレリーナの肖像画にそっくりだった。

 

屋敷のそこここで拾い集めた古い機械の部品。

町の修理屋ロバートに復元を依頼しながら、ヴァージルはクレアへの想いを相談する。

 

 

この主人公、好きなモノがファインアートの美人の肖像画ってだけで、

基本、漫画やアニメの美少女を愛するヲタク君と根っこは変わらない。

いや、歳がイってるだけ余計に始末が悪い。成功して、お金、持ってるし。

その年寄りヲタ君がリア充イケメンの若者に教えを請い、励まされる痛さ。

 

やがて想いがクレアに伝わり、ヴァージルは彼女と一夜を共にする。

で、

 

「生まれて初めて女性とベッドを共にしたよ」

 

っとロバートに報告する激痛シチュエーション!

 

その後、

ロバートの彼女が「クレアって女の話をして、最近冷たい」と相談に来て、

イケメンのロバートがクレアに横恋慕しているのではと疑ったり、

クレアが消えたと思い、動揺のあまりオークションで競売品を間違えたり。

ある夜、ヴァージルはクレアの屋敷の前で暴漢に襲われ、怪我を負い気を失う。

クレアは広場恐怖症を乗り越え、屋敷を出て助けを呼ぶ・・・

 

え?  なに?   なにコレ???

 

心に痛手を負った者同士が結ばれるラブストーリーだったの?

 

ヲタ老人のリア充回帰?

 

これまでのあの思わせぶりなタメやらナゾやらはコケおどし?

 

 

 

 

 

いよいよ二人は婚約して、ロバートも彼の恋人とよりを戻し、4人でディナー。

家族を作る喜びを知って、両親のコレクションを競売に出すのを止めたいというクレア。

ヴァージルは苦労しながらもようやく完成した競売目録を笑顔で引き裂いた。

ロバートは愛のために仕事を断念したヴァ―ジルを賞賛する。

クレアを屋敷から自宅マンションに住まわせ、彼の秘密のコレクション部屋に案内する。

 

「結婚したら私は引退するよ。次のオークションが最後の仕事だ」

 

イギリスでの引退オークション。ビリーも駆けつける。

 

 

 

「君がケチをつけなかったら、私は偉大な画家になっていたかもしれない。記念に私の絵を1枚送っておいたよ」

 

 

 

クレアが外出中らしいマンションに帰ると、彼女の母親を描いたあのバレリーナの肖像。

その肖像画を眺め、これも加えてやるかとコレクションの隠し部屋へ。

 

 

が、そこでヴァージルは信じがたい光景を目の当たりにする

 

 

額縁の跡に埃がスジを描くだけの何もない白い壁。

 

 

あの膨大な数の秘密コレクションは、根こそぎ持ち去られていた。

バレリーナの肖像が手から滑り落ちる。

絵の裏には“ビリー”のサイン。

隠し部屋の隅で復元された不恰好なオートマタ(機械人形)が、

かつてヴァージルがロバートに語った台詞をしゃべりだす。

「贋作の中にも、稀に本物の美しさを持つものがある」

 

 

中盤、目指す逸品の競り落としに失敗するエピソードがあった。

ヴァージルに激しく責められたビリーが身銭を切って買い戻す。

「長年の友情を壊したくなかったんだ。この絵はそんなにイイものなのかい?」

「本当は違う画家の真作で、あの落札価格の10倍はする」

もちろんこの時のビリーの謝罪は見せ掛けで、後に控える大きな獲物を見据えてのお芝居。

ヴァージルの秘密コレクションが全て不正落札によるものであれば、その全容をビリーも知っていたということ。尊大で驕り高ぶり、他人を睥睨してきたヴァージル。その彼に自分の人生を狂わされた(と思い込んだ?)ビリーの一大復讐劇! この映画が幕を開け、物語が始まった時には、既に計画の仕込みは終わっていたということ!!

 

“自分は才能があると信じて絵を描いてきたのに”

 

“友達ヅラしていながら、褒めるどころかケチを付けやがった”

 

“おまけにアイツの欲求のために不正落札という犯罪の片棒まで担がされて”

 

“オレの人生を滅茶苦茶にしやがった!!

 

“まぁ、見てナ。コレクションの真の価値を知っているのは、オレも同じさ”

 

そんなビリーの考えが読めるよう。

そう、ビリーこそがこの手の込んだ復讐・詐欺・詐取の張本人。

この映画、ヴァージル役ジェフリー・ラッシュの演技に刮目したのはもちろんだけど、

2度目に観た際、ビリー役ドナルド・サザーランドの演技に注目。

裏に秘めた陰謀が透けて見えるような演技。

あの引退オークションでの“いただいたぜッ”ともとれる会心の笑み!!

登場シーンが少ないだけに余韻が半端ナイ。

 

 

 

 

続くエピローグ。

廃人となったヴァージルの回想が、細かく編集されたカットで描かれる。

固く鎖で閉ざされたクレアの屋敷。向かいのカフェで訊ねると、ここ数日で屋敷から荷物を搬出していたらしい。常連客(オーナー?)の“数”に執着する車椅子の女性こそ“クレア”で、屋敷の本当の所有者。一人で住むには広すぎるので、今はカフェの2階に住み、屋敷は“映画関係者”によく貸し出していたという。ヴァージルが屋敷を訪れた回数を言い当てるばかりか、彼が知る“クレア”らしき若い女性は頻繁に出入りしていた(広場恐怖症はウソ!)ことを知る。

「そうそう、屋敷を貸す時、スタッフの中に機械に強い男の子がいてね、カフェの一階から二階まで車椅子用のエスカレータを作ってくれたのよ」

ロバートの店ももぬけの殻。ヴァージルの車に積んだ“クレア”の競売目録の束からは発信機が見つかる。事実は明らかになったが、不正な手段で入手した美術品なので被害届も出せない。

呆然と、なす術も無いヴァージル。

 

 

クレアはもちろん、屋敷の使用人、修理屋ロバートとその彼女、夜陰の暴漢、みんなグル。もちろん夢オチのような卓袱台返し的乱暴さではなく、それぞれの言動がこのどんでん返しにリンクしてくる。

 

ロバートが復元するオートマタ。

結末から考えると、小出しにされた部品はヴァージルを釣るための撒き餌の一つ。美術品が収納されているはずの場所に落ちていた古い機械部品の不自然さ。冒頭の木片を見出したのと同じ理由からヴァージルは興味を示す。畑違いの機械部品の真贋をロバートに相談するよう仕向け、ロバートがその後のヴァージルの動向をトレースしやすくするためのワナ。しかも、もしホンモノのオートマタであれば、それこそ莫大な価値を持つものであることを考えると、最初からこの一連の部品=オートマタは贋物だったことになる。細かないくつもの歯車が組み合わさってできあがる不恰好なオートマタは、今回の犯罪を表すヴァージルへの皮肉や意地悪な当て擦りであり、監督にしてみるとこの映画自体のメタファーかもしれない。

 

広大な屋敷に、住んでいたように家具を用意し、且つ競売に出せるような美術品などを揃える手間・ヒマ・金! 現実的には、盗品の美術品売買は相当難しいらしく、取引価格も俎上に上る相場をはるかに下回るらしい。が、そんな現実世界を思い知るのが“映画”ではない。(そのための映画もあるけれど)

 

依頼人クレアのあまりに突飛な悲劇的設定と葛藤に、観ていてまんまとやられちゃいました。正直、広場恐怖症を克服した後、ビリーやオートマタや隠し部屋コレクションはどう始末つけるのだろうと、脚本の流れの方ばかりいらん心配したりして。

観終って愕然とするのは、これだけ周到に計画された復讐をするビリーの恨みの深さ“に気付いた時。細部にわたってヴァージルの性格・性質を手玉に取った計画で、思い返すと残酷なまでに彼の心を弄んでいる。例えば『贋物』『見せ掛け』を嫌う“クレア”を設定し、ヴァージルに共感させた上で、“見せ掛け”のためのヴァージルの白髪染めを詰り、止めさせるシークエンス。明らかに白髪ロンゲのビリーが書いた筋書きで、陰で馬鹿にして笑っていたに違いない。

おまけにこの映画に登場するほぼ全員がビリーの計画に加担していて、罪が無いのはヴァージルの初老の秘書、カフェのマスターと本物の“クレア”くらいだもの。幕が下りてはじめて常に画面を支配していた不穏な空気感に得心した次第。

 

 

 

 

リハビリ(?)や秘書のお見舞いを受ける以外、

ヴァージルは養護施設でぼんやりと庭のベンチで一人佇む。

彼は妄想の中で、“クレア”が語った思い出の場所、プラハのカフェを訪れる。

カフェの名は『Night & Day』。

巨大な時計がいくつも時を刻み、満席の客たちは皆、幸せそうに語り合っている。

ヴァージルは一人、店の奥に座り、そこで永遠に彼女を待ち続けるのだ。

 

 

 

 

美術品の贋作を見抜くことはできても、偽りの愛、贋物の友情を見抜けなかった。

生涯かけて集めた美術品という物質的な損失と、

友の裏切り・痛烈な失恋という精神的なダメージでヴァージルは崩壊する。

一見、可哀そうな被害者に見えるヴァージルだが、

実は諸悪の発端は彼なワケで、同情の余地は全く無い。

しかし、一たび人を愛することを知った彼は、これからは信じて待つことができる。

永遠に時を刻み続け、多くの人々が慈しみ語らうカフェに、愛する人が来ることを。

 

 

罪びとの叶わぬ夢だとしても、信じることができるなら幸せではないか?

たとえそれが妄想であっても、愛を知らなければその希望の光すら無かったのだから。

 



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コメント: 22
  • #1

    ひとみ (日曜日, 03 1月 2016 08:50)

    すごく面白く読ませてもらいました。ラストがハッピーエンドってそういうことだったんですね。

  • #2

    TOY (日曜日, 03 1月 2016 12:34)

    >ひとみさま

    ようこそ いらっしゃいませ
    楽しんでいただけて光栄です

    このブログはあくまで個人的な感想を書き連ねたものです
    映画評論家の町山智浩さんのように
    監督や脚本家に直接確認し検証した内容ではありません
    ですので 作品に対する私の誤解・誤認があるかも です

    お気付きの点などありましたら
    どうぞご指摘・ご教授くださいね

    今後とも どうぞご贔屓に


  • #3

    さつき (金曜日, 13 5月 2016 12:52)

    映画を観たあとこちらのページへたどり着いて拝読させて頂きました。
    重いモヤモヤがスッキリ晴れて、最後のシーンがより鮮明に幸せな風景に感じられました。
    ありがとうございました!

  • #4

    TOY (土曜日, 14 5月 2016 21:11)

    >さつきさま

    ようこそ いらっしゃいまし
    一つの見解として何か感じていただけたのでしたら幸いです

    ただラストにおける このささやかな"幸せ"は
    あくまでヴァージル個人にとってのものであり
    第三者にしてみれば
    お世辞にも幸福な状況と言えるものではありません
    監督が言う"ハッピーエンド"は
    かなり穿った表現と捉えるべきかも

    因果応報とはいえ 基本的には残酷な復讐劇
    今頃 ビリーたちにも因果が巡って・・・?

    ・・・・・・

    それにしても SEO対策の"エ"の字もしてないのに
    皆様 どうやってこんなひっそりサイトに辿り着くの?


  • #5

    さいとう (土曜日, 16 7月 2016 02:24)

    わーー
    このレビュー、とても参考になります!
    もう1度みてみようと思います

  • #6

    TOY (日曜日, 17 7月 2016 02:22)

    >さいとう さま

    ようこそ いらっしゃいまし
    もう一度見直してみて 新たに気付いたことなどありましたら
    ぜひ教えてくださいね

    また 別の作品でも どうぞよろしく

  • #7

    らんちあ (土曜日, 06 8月 2016 11:32)

    すごいレビューです(^ ^)
    映画より感動?(笑)

    私はこの映画が好きで何度も見ていたのですが、あまり行間を読むのがヘタクソで…

    単なる高級絵画をまんまと騙し取られた老人の話にしか思ってませんでした。
    それだけでも、私的には非常に面白かったのですが、貴殿のこの映画に対する伏線や行間の読み、すべてにおいて隅々語彙も豊富に解説されているのを見て、改めてもっと面白い映画だと感じました。

    なにを言っているのかわかりませんが(笑)とにかく映画をもっと面白いモノにしてくださってありがとうございますm(__)m

  • #8

    TOY (月曜日, 08 8月 2016 03:23)

    >らんちあ さま

    ようこそ いらっしゃいまし
    過分なお言葉に恐縮しております

    何気ないシークエンスの中に 本筋とは関係ないドラマを感じたり
    それが映画自体に不思議な厚みを加えてあるようで
    そういう意味でもお気に入りの作品です

    例えば冒頭の煤だらけの"焦げた絵画片"のエピソード
    映画本筋としては 主人公の着眼点・観察力の鋭さ
    審美眼において感情的ではない冷静な判断力の持ち主であること
    科学的検証の更に上をいく職業的博識ぶり
    などの裏付けとして機能しています

    しかし映画の本筋とは関係ないところで
    最終的に贋作と判るその絵画片が
    "なぜ燃え残りのような焦げた欠片になっていたのか?"
    という別のドラマを内包しています
    当時の所有者も贋作であることに気付いて
    怒って絵を燃やしたのかもしれません
    ここにも何か不穏な事件の匂いがします

    また そのような裏エピソードを観客に感じさせることで
    後に仕掛けられるオートマタという監督の罠が
    我々観客に上手く機能するようになっているのかも

    こういう小道具の様子・使い方に裏のストーリーを汲み取れるほど
    作り手の丁寧な遊び心が感じられた作品なのです

    この作品にはまだまだ気付いてない"含み"があるのではと
    思ったりもしています
    (数回ある食事・レストランのシーンとか?)
    お気付きのことなどございましたら
    ぜひ 教えてくださいまし

  • #9

    でんでんむし (水曜日, 10 8月 2016 01:53)

    正直な感想を言うといくらなんでもひでぇよコンチキショー!って感じです。
    人間としてはダメダメなおじいちゃんが若い女の子と仲良くなってどんどん改善される映画かなと思ってたのですが…。
    でも思えば不穏な雰囲気になりそうな要素は多々ありました。
    私のように単純なヤツはすぐ夢中になって主人公になりきってしまうので、こういうどんでん返しに全くついていけなくなるのかもしれません…。
    でもいい映画でした。だからコンチクショー!って感想もそれだけ映画が魅力的で引きこまれたから出た言葉です。また見返したいですね。

  • #10

    TOY (水曜日, 10 8月 2016 20:29)

    >でんでんむし さま

    ようこそ いらっしゃいまし

    私の場合 映画を観ていて 特に嬉しいケースは
    "エェェーーーッ?! そういうコトだったのぉーーー!!"
    って驚くオハナシに出会えた時です
    緻密に計算された脚本と演出の前に
    心の中では 何処かで
    "まんまと作り手にしてやられた!"
    という悔しさと同時に
    上手く嵌められた喜びも生まれます

    作品の中でテーマや教訓をいちいち言葉に表現するコトの無い
    観客の読解力に委ねる映画があります
    物語のスジにそれを汲み取れたり
    展開の中に気付けた時の感慨

    気付いて学ぶ喜び は
    映画に限らず 広く 小説などの文学
    絵画や音楽にも当て嵌まることだと思うのです
    "芸術"という言葉は何か仰々しくて
    個人的にはあまり好きではないですが
    この"喜び"を豊かにするものだと信じています
    もちろん これにゴールなど無く
    私のようなオヂタンも まだまだ学びの途中なのです

    いろんな作品を観て 感じて
    笑って 泣いて 怒って 考えて
    どんどん"喜び"の幅を拡げて参りましょう
    何か気付いたりしたことがあれば
    ぜひ私にも教えてくださいまし

  • #11

    キングスメン (金曜日, 30 9月 2016 17:07)

    感想読んで嬉しく?なりました。身勝手な共感かもですが、バーで待ち続ける姿は老いゆくヴァージルの妄想の中のものと、私も思っていました。もしくは施設に入る前に、必死にクレアと会える手がかりをもがき探した実際の経験が、彼の頭の中で今もループしている、、リハビリの間にすらも。
    ちょっと辛い映画に感じました。再度観るには時間がまだ必要だなあと苦く辛く思います。人を愛する気持ちを持ったことが幸せと言われればそうなのか。
    以前からジェフリーラッシュ好きです。でもすごい映画でした。
    ありがとうございます。
    思わず書いてしまいました。

  • #12

    TOY (土曜日, 01 10月 2016 00:17)

    >キングスメンさま
    (↑同タイトルの近作映画も実は大好き)

    ようこそ いらっしゃいまし
    楽しんでいただけましたら幸いです

    視覚的にも 物語の構造的にも 密度の濃い作品だと思いますので
    再度 鑑賞するのに時間をおきたい というお気持ち すごく分かります
    と言いますか イイ意味で疲れません?

    箸にも棒にもかからない映画を観て疲れるのとは対極の
    適度な運動をした後の心地よい疲労感のような
    心地よいけど 疲れてるからすぐには動きたくない感じ
    体を休めて再びトライすると きっとスキルも上がっているのでは?
    (私は残念ながら運痴なのでスキルアップの自覚無しです)

    何かお気付きの事があれば ぜひ教えてください

  • #13

    なお (日曜日, 15 1月 2017 17:33)

    映画を観て所々わからない点があったので、こちらのページの解説を呼んでなるほど。と納得させていただきました。特に最後のnight&dayのシーンはよくわからなくて。個人的には、最後のシーンでヴァージルが連れを待っていると言ったのは、「贋作の中にも本物がある」というような台詞から偽物のクレアの中に本物の愛があったのではないかと儚い希望を持ってしまったのかなと思いました。自業自得なんですけど、なんとも言えない終わり方で切なくなりました。

  • #14

    TOY (日曜日, 15 1月 2017 20:46)

    >なお さま

    ようこそいらっしゃいまし
    人を愛することを知らずに
    絵画の女性しか愛せなかったまま
    あの強烈な集団裏切りに遭っていたら・・・
    あのカフェで待つということもなく
    もっと荒涼と 殺伐とした心の闇に
    ヴァージルは永遠に囚われていたかもしれません

    裏切られ 自分に見せた愛情が偽りのものだと分かっていても
    心の底から彼女を愛してしまったからこそ
    ヴァージルは存在自体がウソかもしれないカフェで
    待ち続けることができるのだと思うのです

    自業自得 因果応報 とは言え やっぱり残酷なお話ですよねぇ

  • #15

    ゆーこ (土曜日, 27 5月 2017 10:24)

    普段こんな書き込みもしないのですが、自分史上近年最高にはまった映画だったため、他の方の感想を知りたくていろいろ探しておりました。
    こちらの感想が最も共感できたため、つい書き込む次第です。
    ほぼ、こちらと同じ目線で見終わったのですが、ひとつ解せないのが、ロバートの彼女。
    あの人がぐるかどうか、また彼女の台詞がさらに主人公を陥れることになるのかどうか、私にはちょっと理解できなかったのです。
    今huluで配信されているので、また見てみるつもりですが、どうお考えになるのかお聞きしたく、今さらですがコメント宜しくお願い致します!

  • #16

    TOY (日曜日, 28 5月 2017 02:10)

    >ゆーこ さま

    ようこそ いらっしゃいまし
    共感していただいて ありがとうございます
    ロバートの彼女 ですかぁ・・・ う~~~ん・・・
    まず このビリーが立てた『ヴァージル破壊&お宝強奪計画』
    これにおけるロバートの役割を考えてみましょう おそらく
    ●機械に強い修理屋として 機械に弱いヴァージルの信頼を得る
     →オートマタの部品の分析 →幻の逸品と信じさせ 
     →クレアのコレクションへの疑念を持たせない
     →同時に近い“友だち”として ヴァージルの動向を監視する
    ●女たらしの二枚目として ヴァージルを誤導する
     →女性客への接客態度などで 恋愛方面でもヴァージルの信頼を得る
     →人情話と美貌のクレアにしっかり陥落するよう それとなくサポートする
    ヴァージルが食いついたら 携帯電話の指南や 発信機での行動トレースなども行う
    などなど 主にこんなものかと

    ビリーの計画は あくまで人でなしな“ヴァージルへの復讐”であり
    その他の人への危害は たとえそれが精神的なものでも
    極力避けようとしたのではないでしょうか?
    屋敷の本物の所有者であるクレアが車椅子使用者であることを知ると
    ロバートはカフェに簡易エスカレーターを設置しています
    これは 人としてとても優しい心 思い遣りを持っているとも取れます
    計画のために女の子をたぶらかし利用した とは考えにくいのです

    ロバートの彼女がヴァージルに相談するのは
    色男のロバートにクレアを横取りされると ヴァージルに信じ込ませ
    彼の嫉妬心を利用して クレアへの恋慕を確実なものとする
    ヴァージルをクレアへ追い込むための方策だったのではないでしょうか
    恋人もちゃんといるからこそ 恋愛指南ができる存在となるロバート
    かつその恋人が ロバートが話す他の女(クレア)を心配することで
    クレアを横取りされるという疑念に 信憑性を持たせたわけです
    つまりロバートの彼女も やはりビリー一味の一人で
    ロバートへの信頼を裏づけ 同時に疑念へ誤導するという
    けっこう重要な役割だったのでは?

    ・・・そう考えた方が私としては 安眠できそうなのですが・・・
    いかがでしょ?

  • #17

    ゆーこ (月曜日, 29 5月 2017 07:09)

    ご丁寧にありがとうございます(^^)もう一度見返してみます!

  • #18

    ケイコ (火曜日, 04 7月 2017 17:22)

    初めまして。
    ずっと読みたいと思いつつ、先ほどようやく読ませて頂きました。
    いや〜、すっきり。
    何故かといいますと、実は私、お酒飲みながら見ていたもので…
    ラストの解釈がメチャクチャだったと。笑。
    秘密の部屋で、壁から1枚残らず作品が消えていたシーン。
    クレアが女性達のポートレートに嫉妬して、狂って捨てたと思いました。笑。
    Night&dayのシーンは、他の方がたと同じく養護施設に入る前に実際に訪れクレアを待っていたのかと。

    飲み過ぎていなければ、ビリーが自分の絵を1枚送っておいたよ。を見落とさなかったと思うのですが…手から滑り落ちたバレリーナの絵のサインに、彼こそが黒幕だったと全く気付かずでした。笑。

    読ませて頂いて、次回は素面で臨もう!と心に誓いました。
    伏線ワンサカでしたもんね。
    近々また見たいと思います!
    有難うございました(^^)

  • #19

    TOY (水曜日, 05 7月 2017 00:44)

    >ケイコさま

    ようこそいらっしゃいまし

    んまっ!
    なんて羨ましい環境でご覧になったのでしょう!
    ゴキゲンな時間を過ごせたのなら
    多少 映画のスジが飛ぼうがカンケーございません!
    その時その時のシアワセを 大切に味わうべきなのです!

    ・・・あり?  "多少"  では  な   い   ?

    そうです いいのです また観直せば!
    次回は特にビリーの一挙手一投足に注意してご覧になると
    彼の"タヌキぶり"が読み取れて面白いかと存じます
    また それを演じきるパパ・サザーランドの演技にも驚くかと

    お酒を召し上がりながらであれば ぜひ
    『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』'13をお試しください
    大笑いしながら ハッピーにジョッキを傾けつつ
    クライマックスで  飲み過ぎたかも  と心配になり
    ラストで  酔っててヨカッた  と安心できる?不思議な作品です
    あ もうお試し済み? これは失礼いたしました

    それにしても・・・この『紗堂の樋』は
    思いつくまま書きなぐっている内容ですので
    実はロクに推敲もしていない酷い文章です
    ごくたまに追記する作品もありますが
    改めて読むと 我ながら赤面モノです
    それなのに 皆様からこうして暖かいお言葉をいただいて
    毎度の事ながら 恐縮しつつ感謝感謝でございます
    ありがとうございます

  • #20

    ケイコ (日曜日, 09 7月 2017 17:36)

    お返事有難うございます。
    ご推薦の酔っ払い映画も見てみますね!
    有難うございます〜^_^

  • #21

    yoshiko (木曜日, 09 11月 2017 08:42)

    こんにちは。昨晩寝しなに見たばかりですが、本当にいつになく面白かった作品です。
    こんなに奥深い伏線のある映画は、わたくし的には「プレステージ」に次ぐものでした。
    また、皆さんの感想も管理人様の解説も読めて、本当にうれしくなりました。これは二度目の視聴も、また楽しそうですね。しばらくはまりそうな映画でした。

  • #22

    TOY (木曜日, 09 11月 2017 21:57)

    >yoshiko さま

    ようこそ いらっしゃいまし

    クリストファー・ノーラン監督は 私も大のお気に入りです
    娯楽としての映画の役割を 十二分に思い知らされる作品群
    ダークで しかも 外連味たっぷりに

    トルナトーレ監督は イタリア出身というお国柄もあるのでしょうか
    より “人”そのものにフォーカスした作風にも思えます
    この『鑑定士と~』も アッと驚くどんでん返しの大仕掛けに気を惹かれますが
    実は鼻持ちならないイヤな奴が 愛することを知ることで
    人としての成長を果たす姿を描いているとも思うのです
    (と同時に崩壊させるという 残酷さもこの作品にはありますが)

    それにしましても ボットやセールス目的の書き込み阻止のため
    コメント欄に一手間頂戴する仕様にしておりますが
    その手間を惜しまず こうしてわざわざコメントをいただいて
    ただただもう みなさまに感謝でございます

  • #23



     
     
     
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