一番最初に読んだ森見作品は『夜は短し歩けよ乙女』。
これで一気に森見ワールドの虜になりました。
『四畳半神話大系』も既読ですが、
ようやくデビュー作を手に取る運びとなりました。
(上記2作もそのうちレビューに書くつもりです)
森見作品の魅力は、なんといっても独特の語り口調。
古めかしくもあり、言い訳がましくもあり、遠回しでもあり、
それでいて、軽快で、共感できるフレーズの数々。
舞台となっている京都の、歴史を感じる地名もまた、
森見ワールドに欠かせないエッセンスでしょう。
【百万遍交差点】とか、最初フィクションだと思いました。
(京都の皆様ごめんなさい。)
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この物語は、主人公「私」の独白です。
京都大学農学部5回生の「私」。
わけあって、イギリスに留学したり、休学したりの身分。
(完全に余談ですが、この関西特有?の
【~回生】という表現、綾辻氏の作品で初めて知り
文化の違いに驚きました。)
3回生の時に付き合った「水尾さん」の研究をする、
要はさえないストーカーなわけです。
彼と【モテない男同盟】を組んだ、
あらゆる面で師匠的存在・飾磨(すごい名前!)、
ひげもじゃの気のいいオタク・高藪、
超ネガティブ人間・井戸。
「私」と同じく「水尾さん」に付きまとう遠藤。
このあたりが物語の中心人物。
あとはひたすら、「私」が「水尾さん」を追っかけたり、
男4人で馬鹿なことをしたり、いろんな考察をしたりする
どうってこのない大学生の日常。
それなのにこんなにも痛快で、ちょっぴり切ないのは、
森見氏独特の文章によるものでしょう。
プライドは高いけど、やる気もないし、何もできない男たちの
言い訳がましい文章の数々には思わず噴出します。
よくもまぁ、こんなことが言えるなぁ!と。
― 何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。
なぜなら、私が間違っているはずがないからだ。
という文章から始まる物語。
そんな、男子学生たちのちょっぴり甘酸っぱい成長日記。
特に後半、【クリスマスファシズム】と言いながら、
迫り来るクリスマスムードに、自分たちの幸せを不安になる姿は
共感せずにはいられません。笑
正しいことを言っているのに、少数派ゆえ受け入れられない彼ら。
でも、大多数に流されてもいいんじゃないか、
やっぱり自分たちが間違っているのか、いやそんなはずはない、
とひたすらに反芻する彼ら。
超愛すべきキャラクターですよね!
思わず立ち止まって、周りを見て、こんなふうに思うんです。
― しかし、時には型にはまった幸せも良い、と
我々は呟いたこともあったのではないか。
そうだよなー、私も学生の時そう思ってた。
自分はやろうと思えば何でもできるけど、
今はまだ時期じゃないんだ、って言い訳してた。
他人より優れていたいけど、実際には優秀でもないし、
言い訳がましく生きていた気がする。
「何かやってみせる!」とか思いながらさ。
【高邁な理想】だけは絶えず持ってたんだよなー。
だから、すっごく共感してしまう。
そんな彼らが最後に起こす【騒動】は、
なんというか、スゴイ。笑
群集心理というか、集団意識ってオソロシイ。
ま、いろいろ生きにくい世の中だけど、ええじゃないか。
それにしても、男子学生って本当に妄想のかたまりだ。
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それにしても、森見作品には同じキーワードが何度も出てきます。
『夜は短し歩けよ乙女』の「私」も、
『四畳半神話大系』の「私」も、
下鴨泉川町の「下鴨幽水荘」ですが、
今回は高藪がこのアパートに住んでいます。
きちんと読めば、何か関連性がわかるのかな?
森見作品を読むと、
私はまだまだ日本語が上手に使えていないなぁ、と思う。
いつか、こんなステキな日本語使いになれるのが夢。
太陽の塔に、すごく行きたくなる作品。