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これからのAIの話をしよう(覆面AIベンダー編):「開発の丸投げやめて」 疲弊するAIベンダーの静かな怒りと、依頼主に“最低限”望むこと (2/5)

» 2018年10月09日 08時00分 公開
[松本健太郎ITmedia]

 「企業でAIを活用するには、時間もお金もかかるんです。単にツールを入れれば済む話でもない。SIerに何度も問い合わせるうちに、その辺の感覚が分かってきたのでしょう」

 AIを作るための現実をまざまざと見せつけられて撤退する企業が多い中、「17年ぐらいになると、AI開発を内製化する会社と外注する会社の二極化が始まった」とマスクドさんは指摘します。

 「デジタル広告やアプリゲームを作っている企業は、15年~16年にはお問い合わせが減っていきました。内製化に舵を切ったのでしょう。一方で16年以降、製造業などこれまでデータ分析からは縁が遠かった企業の問い合わせが増えています」

 マスクドさんは「製造業との取引」もあり、その体験談をnote上でも発表されています(参考:「発掘!モノMONO大辞典!」)。

 製造業は日本の古き良きお家芸ですが、AIやデータとは縁遠いイメージも付きまといます。実際、マスクドさんは「製造業は保守的な所がある。前例主義でやっているので、導入事例や実績が大事にされ、社内のチームでうまくいったツールなら使う、といった具合です」と説明します。

SIerが急場で人を集めて「弊社はAIできます」と言ってるだけ説

 AI開発を内製化する企業と、外注する企業の二極化が進んでいるという話がありましたが、この「内製化」も怪しい所があります。

 「Kaggle(※)を推奨しています!」「Google I/O(※)にエンジニアを行かせています!」という意識も技術力も高い意欲的な企業がある一方で、Pythonを使える人材を無理やり集めて「弊社はAIができます!」と手を上げているSIer企業もいます。この二極化が進んでいるというのがマスクドさんの意見です。

※Kaggle…データ分析や機械学習のさまざまなコンペに参加できる米国発のプラットフォーム(関連記事

※Google I/O…Googleが米国で毎年開催する開発者向け会議

 AI開発に携わりたいと考えている人は「意識も技術力も高い企業」に入社したいはずですが、どうすれば技術力の高さを見極められるのでしょうか。実際、内製化をうたっていても肝心のアルゴリズムは外注していて、エンジニアもよく分からないまま作業しているという例を聞いたことがあります。

 マスクドさんも「正直、そういう会社もあると思う」と主張します。

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