安倍晋三首相は8日付の英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙のインタビューで「日本は英国の環太平洋経済連携協定(TPP)参加を心から歓迎する」と語った。「欧州連合(EU)離脱で欧州市場への玄関口としての役割を失っても、グローバルな強みがある。無秩序な離脱は避けるべきだ」とも述べた。英国のハント外相はTPP加入を目指す考えを表明している。
安倍首相は北朝鮮問題をめぐり「北朝鮮の非核化の一環としての在韓米軍のいかなる撤退や縮小にも反対だ」と主張。「米国側にもトランプ大統領にもそんな考えはないと理解している」と指摘した。「金正恩委員長と個人的に顔を合わせ、相互不信の殻を破る必要がある」と述べ、日朝首脳会談の実現をめざす考えを強調した。
トランプ米大統領との日米貿易協議にも言及し「実り多い会談だった」と語った。日米は農産品や工業品の関税引き下げを約束する「物品貿易協定(TAG)」の交渉入りで合意し、自動車への追加関税の発動は当面回避した。「日米間にはそう多くの分野で過剰な関税があるとは捉えていない」とも述べた。
憲法9条に自衛隊の存在を明記する憲法改正について「私個人、そして私たち世代の責任として議論に終止符を打つ」と意欲を示した。当時の首相が辞任した2016年の英国のEU離脱の国民投票、イタリアでの憲法改正の国民投票を例に挙げ「英国、イタリアの例も知っている。政治にはリスクが伴う」と改正への覚悟を語った。
出生率の低下や高齢化など「日本経済の構造問題に正面から向き合う時期だ」とも主張。高齢者の就労促進に向けた社会保障改革や雇用制度改革に取り組む考えを示した。