(cache)聖徳太子の笑顔を見るとモノノフたちもデレデレ　～『男色比翼鳥』巻１の２　その９～

『男色比翼鳥』巻１の２の続きだよ♪

取り上げて欲しい作品やテーマは引き続き募集中だよ！

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【翻刻】

所を所望（しよもう）しいまだいとけなき身を大の男の楽しミ
となす事さりとハあさましき所作（しよさ）是出家の煩悩（ほんのう）
やすめそれを大俗（たひそく）の身にてハいらざるあそび悪し
きいけんハ申さじひらさら衆道やめ給へ幸手軒（かうじゆけん）お
しかへしいらざる両人のいけんに耳（ミゝ）の穴（あな）がけがるゝ也
そのうへ衆道を當分のなぐさミなどゝあざけりたもふ
ぞおかしけれ出（いて）や申さん若道のふかき事和漢（ハかん）にその類
多し衛霊公（ゑいのれいかう）ハやしかゞしどけなきかたちに浮身をや
つし高祖ハせきしゆのかわゆらしきゑくぼにはまつて
命を定め武帝（てい）ハ季延年がにくげなきふうにほだされ
枕をかわし給ふ我朝にも聖徳（しやうとく）太子の笑ひ皃ハほうじやく
ぶじんの勇（ものゝふ）もおもひつく守屋（もりや）が髭（ひげ）づらにハ公家武家も

※赤字が前回のくずし字クイズの答えです。

【現代語表記】

所を所望（しょもう）し、いまだ稚（いとけな）き身を、大の男の楽しみと為す事、さりとは浅ましき所作（しょさ）。
是、出家の煩悩（ぼんのう）休め。
それを大俗（だいぞく）の身にては要（い）らざる遊び。
悪しき意見は申さじ。
平更（ひらさら）衆道止め給え。」
幸手軒（こうじゅけん）押し返し、
「要らざる両人の意見に、耳（みみ）の穴（あな）が汚（けが）るるなり。
その上、衆道を当分の慰（なぐさ）みなどと嘲（あざけ）り給（たも）うぞ可笑しけれ。
出（いで）や申さん。
若道の深き事、和漢（わかん）にその類多し。
衛（えい）の霊公（れいこう）は、弥子瑕（やしか）がしどけなき形に浮き身を窶（やつ）し、高祖（こうそ）は籍儒（せきじゅ）の可愛（かわ）ゆらしき笑窪（えくぼ）に嵌（はま）って命を定め、武帝（ぶてい）は李延年（りえんねん）が憎げなき風（ふう）に絆（ほだ）され枕を交わし給ふ。
我が朝にも聖徳（しょうとく）太子の笑い顔は、傍若無人（ぼうじゃくぶじん）の勇（もののふ）も思い付く。
守屋（もりや）が髭（ひげ）面には公家武家も

【さっくり現代語訳】

かつて我々もそうであったが、そういう目的で使用すべきでない穴を無理に使って、まだ幼い少年をチョメるのを、大人の男の楽しみとするのは、愚かな行為です。

男色というものは、元々、女性と交わることが出来ない僧侶が、性欲を満たすためのものです。

それを一般人の遊びとする必要はないのです。

悪いことは言いません、きっぱり男色は止めなされ。」

と［山田半平は］言いました。

奥村幸手軒は言い返します。

「二人からの無駄な忠告に耳の穴が汚れましたわ！

男色がただの大人の遊びに過ぎないなどとバカにするのは、片腹痛いですわ！

それなら言いましょう、男色というものがどれだけ深いものか！

日本にも中国にも、その例はたくさんありますぞ！

中国においては、衛（えい）の霊公（れいこう）は、弥子瑕（びしか）のナチュラルな姿にゾッコンになり、漢の高祖（こうそ）［劉邦（りゅうほう）］は籍儒（せきじゅ）のカワイらしいエクボにハマって命がけで愛し、漢の武帝（ぶてい）は李延年（りえんねん）の愛らしさに心を奪われチョメりなさった。［このあたりから『男色大鑑』巻１の１を利用］

日本でも、聖徳太子の笑顔を見ると、傍若無人（ぼうじゃくぶじん）の武士達も心がひかれ従ったが、物部守屋（もののべのもりや）のヒゲ面には公家も武士も