安倍首相、ブレグジット後の英国をTPPに歓迎と 英紙に
日本の安倍晋三首相は、欧州連合(EU)離脱後の英国を「両手を広げて」環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に歓迎すると英紙フィナンシャル・タイムズに述べた。首相はさらに、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長との首脳会談や、改憲議論に決着をつけることに意欲を示した。
安倍首相は、ブレグジット(英国のEU離脱)によって英国は欧州への玄関口ではなくなるものの、「世界的な力」をもつ国であり続けると話した。さらに、英国とEUに、「合意なし」ブレグジットを避けるよう「見識」を活用してほしいと呼びかけた。
TPPは、日本、カナダ、オーストラリア、マレーシアなど11カ国が参加する通商協定。
ドナルド・トランプ米大統領は就任直後の2017年1月、TPP離脱を命令した。今年4月には復帰検討を指示したものの、その直後に「米国にとって良くない」と復帰の見通しを否定した。
英国のEU離脱派は、EUを出た方が英国に有利な貿易協定をより簡単に締結できると主張しているだけに、英国をTPPに歓迎するという安倍氏の発言は離脱派に好感される可能性が高い。
英国は来年3月29日にEUを離脱する予定。
英国がTPPに参加するには、EUの関税同盟を離脱し、独自に関税を決める必要がある。
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フィナンシャル・タイムズ(FT)の取材に対して安倍首相は、ブレグジット後のEUと英国の関係を事前に決めないまま離脱を実施する「合意なし」ブレグジットの可能性に懸念を示した。
「双方が見識を提供して、せめていわゆる乱暴なブレグジットは避けられるよう期待する」と、FTは安倍首相の発言を伝えた。
同紙によると首相はさらに、日本企業にとって移行期間を確保する重要性を強調し、「ブレグジットが日本企業を含めた世界経済に与えるマイナスの影響を最小化できるよう、心から願う」と述べた。
英国にとって、日本は主要な投資国。800社以上の日本企業が英国内で10万人以上を雇用している。
しかし、ブレグジットを半年後に控え、一部の日本企業は欧州拠点をロンドンからEU域内に移動させる方針を示している。たとえばパナソニックは今年8月、10月に欧州本社を英国からオランダのアムステルダムへ移す方針を明らかにした。
FTによると安倍氏はさらに、米国との関係については、新しい物品貿易協定の交渉開始でトランプ氏と9月末に合意したことは有意義だったと述べ、米国側は交渉中は自動車関税を引き上げないと約束したことを説明した。安倍氏はまた、日米間の貿易ではそれほどたくさんの分野で過剰な関税はないと思うと述べ、日本から米国に完全引き下げを求めるつもりはないと認めた。
トランプ政権と北朝鮮の関係については、トランプ氏も米政府も在韓米軍の撤退は「まったく考えていないと自分は理解している」と述べた。
その上で安倍氏は、北朝鮮の金正恩委員長と自分自身が面と向かって会談する必要があると述べ、「お互いに相互不信の殻を割るつもりでいなくてはならないと思う」と話したという。
内政については、少子高齢化を含め日本経済の構造上の問題に取り組み、教育の無償化に投資し、高齢者雇用の促進に務めると述べた。
FTによると、憲法改正については「世界各地の様々な国の様々な憲法を見渡せば、日本国憲法は70年の長きにわたり国民投票すらないまま変わらずにきた」、「この議論を終わらせることが、私自身の責任、そして私の世代の人間の責任だと考えている」と首相は話したという。