あなたの就活は、いつから始まったか覚えているだろうか?
かつては「就職協定」というものがあり、大企業と大学が一定の時期まで就活を始めないよう協定を交わしていた。そして今は経団連が主に就活解禁を指示する……という構造になっている。
そしてやっかいなことに、この「就活解禁日」は時世によってコロコロ変わっていく。先輩が大学4年の3月から就活を開始したから……と悠長にしていたら、突然「今年の就活解禁は3ヵ月前倒しで」などと言われ、慌てふためく学生も少なくない。
こうした経団連主導の就活解禁日に振り回されるのは学生だけではない。人事部を始めとする採用チームも、例年変動する就活スケジュールにてんてこまいだ。
特に翌年度の解禁日が前倒しにでもなれば、「4年生の採用活動が終わっていないのに、早くも3年生向けの採用を開始せねばならない」といった過重労働も懸念される。
セミナー会場1つ押さえるのにも莫大な予算がかかるため、こうなっては年度内で採用に必要な予算すら予測できないのだ。
大企業は経団連の一部として早々に「今年は前倒しとなりそうだ」と情報を得られるからまだいい。日本企業の99.7%を占める中小企業はいざ就活解禁日が発表となってから、学生を取りこぼすまいと慌てるしかない。
だが……実際にはこれほどのパニックは起きていない。というのも、経団連の就活解禁日はとっくの昔にハリボテと化しているからだ。
今年5月、就職情報大手ディスコの調査で4割以上の企業が解禁日を無視した内定を出していたと明らかになった。中には経団連の企業も含まれており、就活解禁日が形骸化していたことが広く知れ渡った。
ただ、筆者は驚かなかった。そんなものはとうに「常識」とされてきたからだ。筆者は2012年ごろから就活メディアの一員として就活指導や執筆を行っている。その経験から経団連がいつを解禁日に指定しようとも、トップ企業から内定を得る学生が以下のスケジュールで動くことが分かっている。
実際、コンサルティングファームと総合商社の内定を複数獲得した学生はこう語る。
「就活対策は、(学部)3年の夏休みに始めました。就活解禁が翌年3月だったのでまだいいか、と思っていたんです。それが、夏休みに友達がもう内定を持ってて。
なんだそれ!? と思って、あわてて秋インターンを受けました。おかげで秋インターンで2社から内定をいただいて、それらをホールドしたまま解禁後に商社は受けましたね。
間の期間でじっくりOB訪問と筆記試験対策ができたので、とてもスムーズに選考が進みました」
総合商社の多くは、経団連との約束を守り解禁日まで選考を控える。したがって商社が本命だったこの学生は、大学3年次に他業界で練習を積んでから、本命の選考を解禁後に受けるかたちとなった。
こういった学生にとって就活解禁後の選考は「たっぷり練習を積んだ後」にやってくる。解禁日まで何もしてこなかった学生よりも有利になるのは言うまでもない。