木村が“転機”と感じたある作品や、一番手を張る人気プロジェクト『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』、そしてその歌唱力を活かした最新映画『スモールフット』への思いをぜひ確かめてもらいたい。
インタビュー前編はこちら>“ジャイアンデビュー”から13年…木村昴、声優キャリアを振り返る「最初は記念受験のつもりだった」
■ジャイアンから脱しなければいけなかった
――ジャイアン役でデビューし、いろんな役を演じてきた木村さんですが、転機になった作品はありますか?
木村
2005年にジャイアン役になって、ずっとジャイアンの一役だけを務めていたんですけど、2011年にはじめてジャイアン以外をアニメで演じたのが『輪るピングドラム』の高倉冠葉なんです。それは大きな転機になりましたね。
――なぜこのタイミングでジャイアン以外の役を?
木村
当時は児童劇団に所属していたんですけど、年齢的に所属するべきでない年齢になっていて、辞めなきゃなと思っていたタイミングでオーディションのお知らせをいただいたんですよ。
――そこでやってみようと。
木村
はい。でも、それまでずっとジャイアンだったので、口もノドも体もジャイアンになっちゃってたんですよね。
いざオーディションに行って、幾原邦彦監督が見ているところで受けることになったんですよ。で、ひと通り終わって、監督たちがいる調整室に行って「ありがとうございました」って挨拶をしたら、幾原監督から「ちょっと話がある」と。
――個別に呼び出されたわけですね。
木村
で、言われたのが「君は面白いね、君ほどヘタクソな人に僕はあったことがない」とハッキリ言われたんですよね。「エーーーー?」ですよ、こっちからしたら(笑)。ストレートだなあって落ち込みました。
ただ、続けて「でもね、めちゃくちゃ良い声してる」って言ってくれたんですよ。その前の言葉に落ち込みすぎて、全然入ってこなかったんですけど(笑)。
――思いっきり言われましたからね。直後に褒められたところで何が何だか。
木村
逆にディスられたのかなって思いましたからね(笑)。
でも、そのあとで「君、日本でいちばん有名なお兄ちゃんやってるんだよね? このキャラクターもお兄ちゃんなんだよ。お兄ちゃんできる?」と幾原監督に聞かれて。「お兄ちゃんできます!」って答えたら「よし、合格!」と。
――えっ!
木村
「(他のキャラクターの)オーディションもやり直す!」って言って、イチからになったんですよ。
幾原監督だからこそできたことだと思いますけど、すごいっすよね!? ハリウッドかよ!って思いました(笑)。
で、僕はそこから収録がはじまるまでの3~4カ月間、毎週スタジオに通って練習していました。台本ができているぶん全部もらって、同じセリフを何度も何度も。
――反復練習ですね。
木村
何をしゃべっても全部ジャイアンになっちゃうので、この作品に関してはジャイアンから脱することを頑張らないといけなかったんです。
「脱することだけを考えるんだ」って言って、ひたすら練習練習。収録がはじまってからも、居残り練習をしていました。
そうして『輪るピングドラム』全24話終わって、ようやくジャイアン以外の役を演じられるようになったという、大きな転機になりましたね。