■デパートメントストア等の核テナントの撤退でショッピングセンターの空洞化が進んでいる。全米77都市のショッピングセンターをモニターしている不動産調査会社レイス社によると、第3四半期(7月~9月期)のモール空室率は9.1%となった。
9.1%の空室率は2011年第4四半期以来、約7年ぶりの高さ。前期の8.6%から0.5ポイント上昇し、増加幅もリーマンショック時の2008年第1四半期の7.9%から同年第2四半期の8.4%に増加した以来だ。また前年同期の8.3%からは0.8ポイントの上昇となっている。
モール空室率はリーマンショック後、2011年第3四半期(7月~9月期)にピークとなる9.4%を記録し、それ以降は緩慢な回復基調にあった。これが店舗閉鎖が相次いでいることで2016年から反転し、空室が増えているのだ。
今回の急増はモールの核テナントとなっていた老舗デパートメントストアのボントン・ストアズが4月、チャプター7(連邦倒産法第7章)で清算し256店舗をスクラップしたことや、シアーズが不振を理由に相次いで店舗閉鎖に踏み切っていることがある。シアーズは今年だけでも傘下のKマートを含め200店近くを閉鎖した。
70年前に創業したトイザラスと傘下のベビーザラスが今年6月、全735店の清算手続きを完了したことも影響している。さらにJクルーやアバークロンビー&フィッチ、ロード&テイラー等も一部閉鎖が伝えられている。
モールからデパートメントストアなどの大型店が撤退することで集客が妨げられ、小スペースのテナントも埋まりにくくなっている。さらにモール集客の低迷でアパレルチェーンも閉店や倒産が余儀なくされている悪循環に陥っているのだ。
アマゾンなどのオンラインストアで買い物する消費者が増え、またそれを助長するようにモールから大型店が撤退することで、「小売の地殻変動」がショッピングセンターの空室率を悪化させている。
一方、ネイバーフッドSCとコミュニティSCなどを含めたストリップセンターの空室率は10.2%だった。前期から横ばいとなっており、10.0%だった前年同期から0.2ポイントの増加だった。
アメリカの失業率は9月、3.7%と8月の3.9%を下回り、1969年12月以来の低水準となった。ダウ工業株30種平均は3日、過去最高値を更新した。アメリカの景気は好調さを保っているが、ショッピングセンターは「アマゾンエフェクト」で引き続き低迷している。
スイス金融大手のクレディ・スイスのレポートによると、2022年には現在の1,100ヶ所あるショッピングセンターのうち、およそ25%が閉鎖するとの見込みだ。
「小売の地殻変動」は当分、終わりそうもない。
トップ画像:ショッピングセンター空室率の推移グラフ(2007年~)。第3四半期(7月~9月期)のモール空室率は9.1%となった。9.1%の空室率は2011年第4四半期以来、約7年ぶりの高さ。前期の8.6%から0.5ポイント上昇し、増加幅もリーマンショック時の2008年第1四半期の7.9%から同年第2四半期の8.4%に増加以来だ。また前年同期の8.3%からは0.8ポイントの上昇となっている。アマゾンエフェクトによりボントン、シアーズ、トイザらスなど大型店が相次ぐ閉鎖した。「小売の地殻変動」でモールの空洞化が進んでいることを浮き彫りにしている。