鎌倉で働いてわかった「リモートワークに向く人・向かない人」と生産性幻想

鎌倉リモート

鎌倉では、7時から7時半までじっくり座禅する時間をとってみました。

働き方改革の中で、政府も推進するテレワーク(リモートワーク)。その一方で、米IBMや米Yahoo!、メルカリなど「リモートワークを“非推奨”」している有名企業も多くあります。

関連記事:メルカリ、ウォンテッドリーがあえてテレワークを推奨しない理由

私(27歳)は朝起きるのが大の苦手で満員電車も死ぬほど嫌いなのですが(国民の大半がそうだと信じています)、取材でもない限り、朝10時の定時には出社しなくてはなりません。フリーランスでもない会社員だし仕方がないとは知りつつ、オフィスに行きたくはない。

そのオーラを出しまくっていると、編集長から「働く場所を変えれば、生活リズムも変わるし、働き方や仕事に対する気持ちも変わるかも」という神提案が。

鎌倉

カヤックLivingさんにお借りした、鎌倉駅から徒歩1分のところにあるパートナーオフィスの様子。

選んだ場所は鎌倉。鎌倉は今やコワーキングオフィスが点在する、リモートワークの“聖地”になりつつあるそうです。

ということで、鎌倉に本社を置くカヤックLivingさんが提供している「パートナーオフィス」をお借りして、オフィス2拠点&リモートを実践してみました。


実践1:リモートは生産性を上げるのか → 1週間終わってヘトヘトに

鎌倉スクショ

「仕事してますアピール」には余念のない私。

リモートワークをすると、通勤時間という無駄をなくせる、自宅などオフィス以外で集中できる、と生産性が上がることが期待されています。

結論からいうと、この1週間でアップした記事は2本(この記事を入れると3本)。普段も2本から3本くらいは記事を出しているので、意外とフツウでした(笑)。

早速言い訳するようですが、リモートオフィスで、一人で働くのって実はものすごく忙しい。「オフィスの喧騒から離れて、原稿に集中!」とは正反対でした。

編集部からの連絡を漏らさないようになんだかんだでSlack(ビジネス向けSNS)はずっとチェックしているし、テキストで反応するとコミュニケーションに時間もかかる。あと通勤時間はない(短い)けど、ゲストハウスで暮らしているとなにかと生活にも手間がかかる。

(鎌倉リモートワーク週間の間は海沿いにある安いゲストハウスに滞在していました)

鎌倉

成就院から見た鎌倉の海。沖に出ているサーファーたちが点々と動いています。

あと大変なのは、トラブル対応。何かあったときに、関係者が一堂に会していると、パパッと打ち合わせして対応できるのに、社内外に散らばっていると、意外とコミュニケーションに時間がかかります。

Slackがあるとはいえ、テキストベースのコミュニケーションでは微妙なニュアンスなどを伝えるのにもどかしいし、特に緊急性を要するときには、非同期コミュニケーションで待つのは時間のロスにも。

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Business Insider Japanが以前取材した「メルカリがあえてリモートを推奨しない理由」では、「(新入社員などに)社内の空気感や言語にならないカルチャーを肌身で感じ取って、早く溶け込んで欲しい」というものがありましたが、たしかにそれも理にかなっているなぁと。

漫画「スラムダンク」に、基礎ができていないままアメリカにバスケ留学をする谷沢という選手がいます。

そのキャラが発する名言に「バスケットの国・アメリカの その空気を吸うだけで 僕は 高く跳べると思っていたのかなぁ……」があるのですが、1週間終わってヘトヘトになった私の心情はまさに彼と同じ。

リモートワークの街・鎌倉の その空気を吸うだけで 私は 高く跳べると思っていたのかなぁ……

実践2:ワーク・ライフ・バランスは? → 生活の質は爆上がり

鎌倉

朝5時半の日の出。これが毎日見られる環境、暮らしの質が上がらないわけがない。

それでも鎌倉でリモートワークしてよかったのは、生きることに対する満足度が上がったこと(やや大げさですが)。

2週間しかいないからという期間もあるかもしれませんが、朝5時に起きて日の出を見にいったり、座禅を組んだり、少し肌寒い由比ヶ浜に座ってぼーっとしながら鎌倉のクラフトビールを飲んだりするのは東京ではまず、できないことです。

毎日16時半になると、オフィスにも夕方のチャイムが聞こえてくるので、外部から「暮らし」の区切りをつけてもらえる、というメリットも。

都心で生活していると、だいたい渋谷か六本木か大手町あたりで発信されている情報に浸かってしまうので、「生活圏フィルターバブル」が起こりがち。なのでクリエイティブに関わる仕事をしている人は、強制的にでも新しい情報に触れる環境に身を置くことが必要だなと思いました。

あと、期間限定でリモートしたい人にオススメなのは、Facebookなどで「プチ移住します!」と宣言すること

「鎌倉」という遠すぎず近すぎずな距離の良さもあって、意外な人から「鎌倉で会いましょう!」と突然連絡が来たりしました。

実践3:リモートワークとは?→努力が必要な「遠距離恋愛」

鎌倉

カヤックが提供している、鎌倉で働く人が使える食堂「まちの社員食堂」で食べたランチ。

せっかくなので、リモートワークを導入しているというカヤックLiving社長の松原佳代さんにも「ぶっちゃけリモートワークってどうですか?」を聞いてみました。

やっぱり経営者目線で見ると、オフィスに来て働いてくれた方が効率はいいですよね」と松原さん。

カヤックLivingは2017年9月設立で、住まいや移住に関する事業を手がけています。スタートアップということもあり、当初はリモートワークを導入しない方針だったそうですが、長野に住むあるエンジニアを採用したことからその方針を転換したそうです。

スノボをするために長野に移住したという、そのエンジニアの「人としての興味深さ」もさることながら、採用した決め手は「採用する企業側にも、自分が求めるものを要請してきた」こと。

例えば「なんでも話せるメンターを一人つけてほしい」など、「リモートかそうでないか」を超えて、能動的にチームに関わる姿勢を見せてくれたことが評価にもつながったそうです。

鎌倉リモート

(写真は朝に散歩している時に見つけた、民家のすき間に広がる湘南の海)

リモートワークって“遠距離恋愛”みたいなもので、お互いにコミュニケーションの努力がすごく必要なんです。逆に言えば、距離という不安を乗り越えてでも、『この人と続けたい』と思える人でないとうまくいかないと思います」(松原さん)

「リモートワーク」といえば孤独に作業するのが好きな人が向いている、と思われがちですが、意外とコミュニケーションを人一倍丁寧にとるタイプの人、いま自分の置かれている状況を(トラブルの時でも!)能動的に知らせることができる人でないと、リモートワークには向かないと実感しました。

まだあと1週間ありますが、すでに奥深い「リモートワーク」の実態。生活の質は上がりますが、孤独に作業するのはとてもさびしいので、チームでサテライトオフィスをつくることをおすすめします!


【イベント開催】働く場を変えたら何が生まれた? ——カヤックとBusiness Insiderで試した「移住と定住の間」

(文・写真、西山里緒)

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