Oct.8.2018
ケン・ウィルバーは,1949年
一般・専門を問わず,世界中で
これほどまでに多く著作が読まれている
アメリカ人思想家は,
未だかつていなかった
と言われています
1970~80年代には,
理論心理学者として
アメリカで当時台頭し始めていました
理論的支柱とされ,
「心理学界のアインシュタイン」
とさえ称されました
ですが,
1990年代に「訣別」し,
独自に「インテグラル思想」の
確立を目指しました
2005年には総合大学
「インテグラル・ユニバーシティー」
を発足し,
学長として就任されました
1968年 ,
デューク大学医学部在学中に
「老子」に出会い,自らの
思想的基盤を根本的に揺るがされ,
その後東西の哲学・心理学書を
貪り読み,24歳の時にはデヴュー作
『意識のスペクトル』を上梓して,
当時の心理学界を驚かせました
この著作を読めば一目瞭然ですが,
「西洋思想と東洋思想の統合」という,
壮大なビジョンの下,
ウィルバーはその後も旺盛に執筆を重ね,
著作は20以上に至り,
世界各国で翻訳されています
自ら前の瞑想の実践者でもあり,
体験を通して東洋的な「悟り」を
人類の知恵の究極と位置づけ,
西洋思想との「統合」を
目指しておられます
本日はこの,ケン・ウィルバーの
名言のいくつかをご紹介したいと思います
(和文拙訳)
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ケン・ウィルバー参照
まずは,
ウィルバーの「インテグラル思想」の
「インテグラル」=「統合」に関する,
端的明瞭なコメントからです
The point is to unify the opposites,
both positive and negative,
by discovering a ground
which transcends and
encompasses both.
大事なことは,
ポジティブなものであれ
ネガティブなものであれ,
対極のものを共に超越させ
拡張する場を発見することで,
統合することだ
対極にあるものを,
昇華し統合していくこと
ウィルバーの方法論は,
愚直なまでにシンプルです
ではなぜ彼は,
そこまで「統合」に
こだわるのでしょうか?
I have one major rule:
Everybody is right.
More specifically,
everybody —including me —
has some important pieces of truth,
and all of those pieces need
to be honored, cherished,
and included in a more gracious,
spacious, and
compassionate embrace.
私にはある大原則がある
あらゆる人が正しいということだ
もっと言うと,私も含め,
あらゆる人が,真理の
あるかけがえのない断片であり,
それらの断片全てが,
敬意を表され,大切にされ,
より優雅で,広大で,
慈悲深い抱擁のうちに
包み込まれなくてはならない
あらゆる人が,真理の
あるかけがえのない断片である…
この発想自体,
仏教思想と言わざるをえません
たとえば,仏教僧は人に会うと,
出会い頭に合掌をします
それは相手の中にある「仏性」,
すなわち仏になれる可能性に対し,
敬意を表し,最大限の愛情を
表現するものです
続きまして,
ウィルバーの心理学的なコメントです
Unhappiness and dissatisfaction
with life are not signs
of mental illness,
but of growing intelligence.
人生における不幸と不満足は
精神の病の兆候なのではなく,
ますます知性的になっている
兆候である
人生における諸問題は,
私たちの知性を磨いてくれる
まさに「精進」のあり方です
ウィルバーにとって,
知恵を磨く最高の方法は,
「今・ここ」に
全身全霊を傾けることです
You obviously seek
in order to avoid the present,
and yet the present alone
holds the answer:
to seek forever is to miss
the point forever.
You always already are
enlightened Spirit,
and therefore to seek Spirit
is simply to deny Spirit.
明らかに,
現在を避けたいがために
現在を求めてしまうのだが,
現在のみが答えを持っている
つまり,永遠に求めることは,
永遠に要点を外してしまう
ということだ
あなたはすでに常に
悟れる精神なのだから,
精神を求めること自体が,
端的に精神を否定することになる
すでにあるものをない,
と考えてしまっていては,
あるものには永遠に出会えません
こうした価値観を,
ウィルバーは「正統派の精神性」
から学んできました
Authentic spirituality is
revolutionary.
It does not legitimate the world,
it breaks the world;
it does not console the world,
it shatters it.
And it does not render
the self content,
it renders it undone.
正統派の精神性は
革命的なものだ
それは世の中を
法整備するものではなく,
破壊するものだ
それは世の中を慰めるものではなく,
粉々にするものだ
そしてそれは自己を
満足させるものではなく,
不満足にさせるものだ
ここに「庭」についての
ユニークなコメントがあります
Bad Gardens copy,
good gardens create,
great gardens transcend.
よくない庭はまね,
よい庭は創造し,
偉大な庭は超越する
その心は?
What all great gardens have
in common are their ability
to pull the sensitive viewer
out of him or herself
and into the garden,
so completely
that the separate self-sense disappears
entirely, and at least for a brief moment
one is ushered into a nondual
and timeless awareness.
あらゆる偉大な庭が
共通に持っているものは,
敏感な鑑賞者を
彼らの殻から脱しさせ,
庭にあまりにも没入させるために,
分離した自己感覚は完全に消え,
少なくとも束の間,非二元論的で
無時間的覚醒の境地に誘う能力だ
確かに…
龍安寺の石庭等に伺いました時,
気がつけば,何時間も
ただただ座っていられた自分がいた
経験があります
A great garden, in other words,
is mystical no matter what
its actual content.
言い換えると,偉大な庭は,
その現実的な内容が
どのようなものであれ,
神秘的である
ウィルバーは,
1983年に結婚しましたトレヤを,
乳がんでなくしています
出会ってすぐに発覚した
彼女の乳がんの治療に,
ウィルバーは執筆活動停止して
専念しましたが,
6年間に及ぶ闘病生活の後に
トレヤは他界しました
Real love hurts;
real love makes you totally
vulnerable and open;
real love will take you
far beyond yourself;
and therefore real love will
devastate you.
I kept thinking,
if love does not shatter you,
you do not know love.
真の愛は傷つける
真の愛はあなたを
全体的に傷つきやすく,
開かせる
真の愛はあなたを
あなた自身を
はるかに超えた境地にまで
連れて行く
だからこそ,真の愛は
あなたを壊滅させる
私はつくづく思うのだが,
愛があなたを粉々にしないのなら,
あなたは愛など分かっていない
小生の個人的な座右の書の1つに,
ウィルバーの『無境界』があります
古今東西の様々な哲学・心理学の理論を,
禅思想ベースとして「統合」しようと
試みた,
若かりし頃のウィルバーの著作です
Boundary lines, of any type,
are never found
in the real world itself,
but only in the imagination
of the mapmakers.
どんなタイプのものであれ,
境界線は決して
現実世界それ自体にではなく,
地図製作者の想像の中でのみ
見つけられるものである
「場」と「地図」は,
元来全く別のものです
「場」,つまり
さまざまな土地は,
ただあるがままに
存在していただけで,
そこに「住所」を始めとする
「地図」をあてがい解釈するのは,
その制作した人の個人的な思いで
しかありません
ですが,そうした思いが
社会的コミニケーションに乗りますと,
「常識」を形成し,いつの間にか
その方が「リアル」であると
思ってしまいます
けれども,そのすべては
根本的に「幻想」に過ぎません
「赤」ということばは,
ただ「赤」なだけではありません
「赤」と言う単語が生まれた瞬間に,
「赤」と「赤い以外」の色を
生み出してしまいます
つまり,
「赤」は「黄」,「青」なども
生み出すのです
Boundaries are illusions,
products not of reality
but of the way we map and edit reality.
And while it is fine
to map out the territory,
it is fatal to confuse the two.
あらゆる境界は幻想である
現実のではなく,
われわれが現実に地図を描き
編集する仕方から
生み出されたものである
だから,なわばりの地図を
描きあげるのも素敵なことだが,
両者を混同するのは致命的なことだ
ウィルバーの途方もない
知見全てに通底している「視座」は,
どこまでも西洋人離れした
禅思想の深い理解あってこそ
なのだと思われます
それでは,このへんで